エピローグ その3
ドアが開いた。
「飛影……!?」
ムクロは目を見張った。
「フン、どうした?貴様のこんなにも驚くツラを拝めるとは思わなかったぜ」
飛影は余裕の表情である。
ここはムクロの移動要塞の中だった。彼は今まで人間界に行っていて、そして今魔界に戻ってきたところだった。
「どうしたも何も…!」
ムクロは飛影に駆け寄り、彼のその手に触ろうとしたが、その前に飛影がそれをはじいた。
「安心しろ、呪印などない」
「一体何があったんだ?」
ムクロはまだ動揺しているようだった。
「さあな」
飛影はムクロの横を通り、部屋の奥のドアに向かって歩いていった。ムクロは不思議そうに飛影を眺めこそしたが、もう手を伸ばしたりはしなかった。
「…人間界の連中も貴様と同じようなことを言っていたぜ…。
他人のことをとやかく言う暇があるなら、もっと自分のことをしっかり考えておけと言ってきた」
「誰でも聞きたがる、そんなこと」
「だろうな」
すると、飛影はくるりと振り返り、ムクロに向かって言った。
「だがオレは何も答えん。オレのやりたいがままにやっただけだ」
「やりたいがままにやったら、腕が戻ったのか?」
「そうだ」
「だったら今まで戻らなかったのは何故だ?」
「戻るべき時じゃなかっただけだ」
「だが……!」
ムクロは、その時はっと何かに気付いたかのように眼の色を変えた。
飛影もそんなムクロの顔を見てか、悟ったかのようにふっと笑った。
「進むべきときに進んだだけだ」
今は答えはそれだけで十分だったが、飛影は更にそれに付け加えた。
「それが、オレのにとっての生きるということだ」、と。
そして、飛影はパタンとドアを閉めた…。
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