京都自由大学講義 (3月12日) :2005.3.16
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【日時】 2005年3月12日(土)19:00〜21:00
【場所】 京都三条ラジオカフェ
【講師】 神戸女学院大学 教授 石川泰宏氏
【テーマ】 戦後日本における脱植民地化の希薄さ

京都三条ラジオカフェはこじんまりしたカフェで、定員30人で本当に満席だった。
本大学は講演と討論という形になっていて、その通りの進行だったが、討論は
質問と講師の回答に留まっていた。試行錯誤しながら作っていくのが、この大学の
方針のようなので、今後、少しずつ変わっていくだろう。
「国連の植民地独立付与宣言」等、知らないことも多々あったし、考え方の面でも
刺激を受けた。少しでも、後で考える機会を持てば、充実したものになるのだろうが
どこまでできるだろうか。

次回は19日:「経済グローバリゼーションはなぜ戦争をもたらしたのか」
         立命館大学 経済学部教授 藤岡惇氏 

********* 講義内容(抜粋) ***********************************
[最初の40分くらいは講演]
 (1)戦後世界史の大きな変化・・植民地問題の角度から
   ・国連憲章に「植民地解放」が含まれなかった。
   ・1945年 国連加盟国は45ヶ国 (アジア・アフリカ:12ヶ国)
    現在  国連加盟国は191ヶ国 (アジア・アフリカ:112ヶ国)
    つまり、アジアとアフリカで100ヶ国増加
   ・その流れで、1960年 国連総会で「植民地独立付与宣言」(*)
   ⇒大局的には植民地主義の崩壊、アメリカ等の新植民地主義失敗
                             (経済的に従属させる)
 (2)フランス植民地帝国の崩壊
   ・50年前までは、フランスは第2位の植民地保有国
   ・「植民地化は文明の命じるところ」(アルベール・サロー:1936)
   ・1940年パリ陥落時、ドゴールは首都をコンゴに移す。
    「植民地の一体性を完全に保持する」(1943)
   ・1945年6月 ベトナム民主共和国独立宣言(フランス植民地)
     フランスによるベトナム戦争
   ・1954年 「名誉ある終結」を掲げたマンデス・フランス内閣が成立
     国民が脱植民地化を選択し、フランスによるベトナム戦争は終結
   ・同年、アルジェリア一斉蜂起 (130年間フランスの植民地)
   ・1958年 経済援助をテコにした自発的共同体へ
    ⇒以降、協調と連帯の時代へ

 (3)日本による侵略と支配の歴史
   ・1868年以降、植民地保有国へ
   ・アジア・太平洋戦争の犠牲者:アジア2000万人以上、日本310万人

 (4)戦後日本とアジアのかかわり
   ・戦後に戦争推進勢力が温存された。
   ・1951年サンフランシスコ講和会議(55ヶ国)に中国・朝鮮は招待せず。
   
 (5)これからの日本をどうつくっていくか
   ・若い世代の立ち上がりを激励
      神戸女学院の学生が九条の会を立ち上げた。

[残りの時間は、受講生自己紹介と討論(質問)]
  Q:過去の植民地支配の清算(和解)はどうすれば完了するのか
  A:基本的には、相手側からこれでよいと認められること。
    事実を認めることが最重要であり、清算の前提。
  Q:憲法改悪を阻止するには
  A:「憲法を守る」「9条を守る」では誤解を受けやすい。
    つまり、現状の社会のままで良いのか、と問われる。
    これに対して、憲法理念を実現する社会を作るために
    憲法を守ると考えるべきではないか。
 
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(*)植民地独立付与宣言
前文(一部略)
   いかなる形式及び表現を問わず、植民地主義を急速かつ無条件に終結せしめる
   必要があ ることを厳粛に表明し、この目的のために、次のことを宣言する。
一 外国人による人民の征服、支配及び搾取は、基本的人権を容認し、国際連合
   憲章に違反し、世界の平和及び協力の促進の障害になっている。
二 すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、
   その政治的地位を自由に決定し、並びにその経済的、社会的地位及び文化
   的発展を自由に追及する。
三 政治的、経済的、社会的又は教育的基準が不十分なことをもって、独立を遅延
  する口実にしてはならない。
四 従属下の人民が完全なる独立を達成する権利を、平和かつ自由に行使しうるす
   るようにするため、かれらに向けられたすべての武力行為はあ らゆる種類の抑
   圧手段を停止し、かつかれらの国土の保全を尊重する。
五 信託統治地域及び非自治地域はまだ独立を達成していないたのすべての地位
   において、これらの地域の住民が独立及び自由を享受しうるようにするため、な
   んらかの条件又は留保もつけず、その自由に表明する意識及び希望に従い、
   人種、信条又は皮膚の色による差別がなく、すべての権 利を彼らに委譲するた
   め、速やかな措置を講じる。
六 国の国民的統一及び領土の保全の一部又は全部の破壊をめざすいかなる企図
   も、国際連合憲章の目的及び原則と両立しない。
七 すべての国家は、平等、あらゆる国家の国内問題への不干渉、並びにすべての
   人民の主権的権利及び領土保全の尊重を基礎とする。国際連合憲章、世界人
   権宣言、及び本宣言の諸条項を誠実かつ厳格に遵守する。
   (出典 ミネソタ大学人権図書館:  「ベーシック条約集」 第2版  東信堂