自民党新憲法草案 :2005.11.25
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10月末に自民党の新憲法草案が発表された。
新聞、テレビ等で中曽根元首相らの保守色を薄めた案となっていることに
重点を置いて報道されているが、変更している箇所について本当にこういう
内容で良いのかという一番大事な点についてあまり議論されていない。

第9条については、第1項が全く変更なしで第2項が削られた。そして自衛
軍の項目が新しい第2項として追加されている。
憲法は国家権力に規制を与えるべきものだ。したがって、新憲法案で、何が
できないようにしているのかという点が一番重要だ。

現在の憲法は、アジア・太平洋戦争の反省に基づき、同じ戦争をできないよ
うに戦力を持たないようにしている。今回の自民党案で、同じことを繰り返さ
ないような制限が加えられているだろうか。
隊から軍に名前を変えた自衛軍の任務は、次のように書かれている。
@我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保、
A国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動
B緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守る
 ための活動

@は自衛のための戦争を意味すると一般的には解説されている。しかし、自衛
のための戦争とは何だろうか。東條英樹元首相は先の戦争は自衛のための戦
争だと東京裁判で主張している。つまり、海外に軍隊を出し、その地域の人々に
とって侵略であっても、軍隊を出す国は自衛のためと主張することは可能なわけだ。
Aはアメリカに追従してアフガニスタンやイラクの戦争時に空爆をしたり地上戦に
参加できるようになることを意味する。大量破壊兵器はイラクになかったわけだが
その場合でも正義の戦争だと主張しつつ参戦してしまう可能性が非常に高い。
Bは後半は災害時の派遣を意味するようだが、全体的に不明確だ。

つまり、この案を認めた場合、憲法の上からは一切の制限なく軍隊を派遣できる
ようになるわけである。
自衛隊の存在を認めた場合、制限が完全に無くなるような条文しかありえないの
だろうか。私はもっと知恵を出して適切な制限を加える条文にならない限り、憲法
改正には反対だ。ここは譲ってはいけない。

[追記]
来年には、平和や憲法に関する勉強会を始めたいと考えている。それを通じて
考えていきたいのだが、今は大雑把に次の4つの段階に分けて考えるべきでは
ないかと思っている。

(1)アジア・太平洋戦争のような戦争遂行
(2)アフガニスタン戦争、イラク戦争の空爆への参加
(3)国連決議があった場合の多国籍軍への参加
(4)国連平和維持活動(PKO)としての海外活動

私は先のアジア・太平洋戦争を忘れるべきではないと考えているので、まず、
アジア・太平洋戦争をできない条文にする必要があると思う。ただし、アジアの戦
争と米英蘭との戦争は別に考えるべきかもしれない。
さらに、先のアフガン戦争やイラク戦争に加わることがないように制限する
必要もあると考える。
BCはもっと考える必要があるが、今の私の考えはBはできないようにし、
現状で行っているCは認めるというところである。