平和憲法について〜京都自由大学講義(10月15日) :2005.10.16
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【日時】 2005年10月15日(土)19:00〜21:00
【場所】 京都三条ラジオカフェ
【講師】 立命館大学 倉田玲氏
【テーマ】 平和憲法について
日本国憲法の生い立ち、立憲主義の考え方、憲法9条をめぐる解釈、最近
発表された自民党の新憲法案について説明し、憲法9条遵守の考え方を
示された。
(内容)
日本国憲法は、性別に制限されない初めての普通選挙で選出された議員に
より生み出されており、連合国に押し付けられたまま作られたものではない。
憲法は、個人より圧倒的に強い国家権力が暴走するのを防ぐために縛っておく
ためのものである。したがって、国民一人ひとりが「憲法を守る」という発想は
間違っている。
憲法が国家権力を縛るという性質上、国家権力に都合が悪いのは当然であり
国家権力の都合により変えさせてはいけない。
憲法9条第1項には2つの考え方があり、政府や多くの学者は(2)の考え方を
取っている。
(1)あらゆる戦争を放棄する
(2)侵略戦争は放棄。自衛のための戦争はできる。
憲法9条第2項にも上記1項に対応する2つの考え方があり、政府や多くの学者
は、ここでは(1)の考えに立っている。
(1)あらゆる戦力を持たない。
(2)侵略のための戦力は持たない。自衛のための戦力は可能。
1950年 朝鮮戦争。警察予備隊ができる。
吉田茂首相・・軍隊ではない。
1952年 米からの要請で、保安隊になる。海上警備隊新設。
吉田茂首相・・今の戦争を戦う戦力未満
1954年 自衛隊発足(保安隊、海上警備隊統合、航空部隊新設)
鳩山一郎首相・・自衛のための戦争は可能。自衛隊は自衛の必要最小限の
実力(戦力より弱い実力)
1978年 金丸信・・大陸間弾道弾以外なら持てる。
これらのように、軍隊でないという立場でいながら、ここまで踏み込んでいる
〔追記:核兵器に関する政府答弁〕
・仮に自衛のための必要最低限度内にとどまる核兵器があれば、その保有を
必ずしも憲法9条は禁止していない(1973年内閣法制局長官の答弁)
・非常に小型で性能が非常に弱い核兵器が開発されるなら、防衛的と呼べる
(2002年政府答弁)
自民党の新憲法案(2005年8月1日第1次案、10月12日第2次案)では、第9条
第2項の戦力不保持の箇所が削除されている。
個別的自衛権と集団的自衛権は全くの別物である。個別的自衛権は正当防衛を
意味するが、集団的自衛権は軍事同盟の枠組みを持つことを意味する。
国連憲章が集団的自衛権を認めているという指摘があるが、国連の成り立ちから
考えて当然だ。日本語訳では国際連合だが、United Nationsは連合国と同語だ。
国連決議があっても軍事行動を認めない考えだ。アメリカを中心とする勝ち組に属
していれば良いというのは危険な考えである。
もっと話し合いルート、テーブルを用意する努力をすべき。相手を殺したら話し合いも
できない。そのような仇になってはいけない。