京都自由大学講義 (4月30日) :2005.5.4
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【日時】 2005年4月30日(土)19:00〜21:00
【場所】 京都三条ラジオカフェ
【講師】 日本福祉大学社会福祉学部教授 池谷壽夫氏
【テーマ】 大人と子どもの関係をめぐって

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■フォーディズムからポスト・フォーディズムへの社会変容
   (フォーディズム:大量生産,大量消費による高成長の経済体制)
 ・企業社会における終身雇用、年功賃金制度の終焉
 ・人間の生き方が、「誕生→学校→企業(結婚・出産)→退職→死」から
  「誕生→学校→不安定雇用→死」へと変化
 ・企業における教育システムが弱くなり、企業での大人化プロセスがなくなって
  きている。

■高度情報・消費社会に生きる「消費市民」としての子ども
 ・小さいときから消費市民として扱われ、お金があれば何でも買えるという
  文化を身につけている。
 ・従来の「家庭・地域−学校」という2つの世界でなく、「家庭・地域−消費文化
  −学校」というトライアングル型世界を生きている。以前よりも、消費文化が占める
  重要性が増している。
 ・垂直的親子関係から、水平的親子関係へ
 ・消費文化に生きることは楽ではない。・・子ども内部での共同体主義と個人主義

■学校における個人主義化と道徳主義的共同体化
 ・新自由主義的子ども観を促進する文部科学省
 ・自己責任を負った主体であることを求められ、相互に分断される。
 ・自虐的な内面的暴力と社会的弱者への攻撃性

■新たな「子ども−大人」関係に向けて
 ・出会うことと聴き合うこと
 ・子どもを一人前ではないが社会を構成する市民として承認すること。
 ・市民への準備教育

この話の流れと少し異なるけれど、「女性の社会進出」と「子どもへの影響」が気に
なっている。たとえば、子どもが学校から帰ってきたとき、家に親がいないことは、
子どもにとって嫌なはずで、あまり良いことではないと感じている。一方で、女性が
社会に出て行くことは進めていかなくてはいけない。このことは両立させていかなく
てはいけないと思うが、具体的にどういう研究があるのだろうか。
このことを聞こうと思って質問したが、うまく質問できず、得られた回答は、「専業主婦
と仕事をしている女性に育てられた場合に、3歳未満の子どもを比較すると、仕事を
している場合の方が良いという結論が心理学的に出ている。」というものだった。
もう少し大きい子どもの方を気にしていたので、その旨を伝えたが、仕事をしている
方が心理的に安定しているので良い効果があるというような返答だった。
こういう問題について、母親の心理状態だけに頼った分析は、うまくいかない場合に
母親に責任を押し付けることになり、好ましくない。
この点について、問題がないのかどうかはしっかりと見極める必要があると思っている。
その上で、問題が多少なりとあるなら、両立させる知恵を出していくことが重要だ。