税制の基本 :2011.2.19
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1.税制の機能と役割
@公共サービスを提供するために必要な資金の調達
・誰が負担するか
利益説(応益原理)・・・国民各自が受ける利益に応じて税負担する
能力説(応能原理)・・・租税を義務とみなし、各人の能力に応じて負担する
地方税は応益原理、国税は応能原理の側面が強い。
A所得の再配分
B経済の安定化、景気調整機能
2.現実とのギャップ
・真に必要なサービスが何かが明確でない。
「受益は多く、負担は少なく」という選択をしがち。
・財政政策の非対称性
景気の悪い時は減税されるが、景気回復時に増税されることはまずない。
「減税しても景気回復すれば税収は増える」という非科学的な論議が繰り返されてきた。
→先進国最大の財政赤字
3.課税原則
@公平性
・垂直的公平:より大きな経済力を持つ人はより多く負担すべき
水平的公平:経済力が等しい人は等しく負担すべき
・水平的公平で問題になるのは、クロヨン問題。・・執行の困難性
・最近は「世代間の公平」が問題として取り上げられている。
A中立と効率
・過去のさまざまな優遇税制が継続していることの是非
2010年租税特別措置透明化法案成立。統合整理が期待される。
課税ベースを広げ税率を下げていくのが近年の世界的な税制改革
B簡素
・徴税コストを抑え、国民の理解を容易にする目的
・公平性を考慮した細かい制度設計と相反し、今までおろそかにされてきた。
・VAT(付加価値税)は脱税が起きにくい執行可能性に優れた税制
C国際的整合性
・税制は国の歴史・文化等を反映している。
EUでさえ、税制の統一には消極的。
・米国では付加価値税を導入していない。
・しかし、グローバル化した世界では国際的な整合性が必要。
法人所得、金融所得といった「足の速い所得」では容易に資金シフト、税源シフトが起こる。
4.誰が負担するのか
(1)転嫁
・転嫁:納税義務者が税負担を価格引上げ等を通じて取引の相手方等にシフトさせること
・租税の前転:経済取引の前者より後者に順に転嫁すること(生産者から卸、小売を経て消費者が負担)
・租税の後転:経済取引の後者に転嫁されず、前者の負担に帰す場合
(2)法人税率引上げの例
・法人税率引上げ →税引き後利益減少 →株価下落 →株主税負担
・法人税率引上げ →(収益維持のため)製品価格引上げ →税負担を消費者に転嫁
・法人税率引上げ →(収益維持のため)給与引下げ、リストラ →従業員に転嫁
・デフレ経済や競争が激しい経済環境下では、消費者への価格転嫁は難しい。
労働は移動が難しいので賃金への転嫁は比較的容易。
結局、法人税の負担は株主だけでなく、雇用者、消費者、究極的には一般国民が負う。
・「消費税を引き上げて法人税を引き下げる」という考え方は、法人税の最終負担者が労働者、
消費者であるならばおかしい選択肢ではない。
5.租税理論
(1)包括的所得税
・あらゆる所得を区別なく合算した上で総合課税を行う。
(2)支出税論
・一生の所得を担税力の指標とする。
・一生の間の所得は各年の消費を一生積み上げたものにほぼ一致することから、
各期間の消費を課税ベースにする。
(3)最適課税論
・課税による資源配分の効率性や所得分配の公平性の観点を考慮し、望ましい課税を模索
(4)二元的所得税論
・勤労所得と資本所得を分けて課税
支出税論に関する興味深い考え方。
・個人が社会に貢献したときに得られる対価としての所得に課税するよりも、社会から取り出し
消費する時に課税するほうが公平。
所得に課税するのは勤労を罰すること。