宮沢元総理・中曽根元総理の引退　：2003.10.25

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　戻る

　　　　自由民主党は、比例代表立候補者に７３歳定年制を適用していて、84歳の宮沢元総理、
　　　　85歳中曽根元総理の扱いが注目されていたが、今週、小泉首相が2人に比例代表立候
　　　　補リストに載せないことを伝えた。宮沢氏は引退を決めたが、中曽根氏はまだ納得せず、
　　　　もめている。ただ、今から小選挙区に出ても勝ち目は薄いと思われるのでやはり議員とし
　　　　ては引退になるだろう。
　　　　２人の年齢が８０歳を越えていることから、一般社会の人間からすれば、引退は当然と見る
　　　　向きが強いと思う。また、比例代表という政党主体の選挙において、イメージの良い候補者
　　　　を立てるべきなので、政党の論理が優先されるのは当然であり、自民党を責める要素には
　　　　ならない。僕も普通なら２人は引退すべきだと思うのだが、この２人は、思想を持つ大物で、
　　　　代わりの人がいないだけに惜しいような気がする。

　　　　中曽根氏は、1982.11〜1987.11の5年間首相を務めた。中曽根氏が首相になった頃、彼は
　　　　今ほど思想を持った人物とは報じられておらず、風見鶏と揶揄されていた。でも、当時の雑
　　　　誌「世界」に、ヒトラーも首相になる前、風見鶏と呼ばれていたとの記事が載っていて、一部
　　　　には、彼の考えに強い国家観を見て取る向きもあった。
　　　　中曽根氏は、首相になってから、人気が出て、支持率はかなり高かったように思う。でも、支
　　　　持の理由に、背が高くて他国の首脳と並んでも見劣りしないというものもたしかあって、不沈
　　　　空母発言などを含めた軍事増強志向の面から支持していなかった僕は苦々しく思ったのを記
　　　　憶している。
　　　　今、憲法改正への動きなど、世の中が中曽根氏の考えに近づいているように思えるが、国家
　　　　観として主張する人はあまりいないように感じている。僕は今の流れに反対だが、はっきりと
　　　　主張する人もいないままに流れていくことにさらに不安を感じる。

　　　　宮沢氏は、1993年に自民党が政権から落ちた時の首相だが、僕はこの頃、何回か日本の政
　　　　治が良くなったと思った（その後、また戻ってしまったと失望したが）。その一つが宮沢氏が細
　　　　川内閣発足後、細川氏の別荘で、それまで進めてきた重要案件について説明をした件だ。
　　　　それまで、自民党は自民党以外には政権能力がないと主張してきた訳で、他党の政権に力を
　　　　貸すのはおかしいのかもしれないが、こういう形で健全な交代ができるんだということを僕はうれ
　　　　しく思った。
　　　　また、宮沢氏は、ハト派（最近あまり使わない言葉かも）と呼ばれていて、中曽根氏と対極に
　　　　ある。宮沢氏が首相になった時、かなり期待したが、ほとんど成果は記憶に残っていない。
　　　　宮沢氏に近い政治家として加藤紘一氏がいると思うが、議員辞職に追い込まれ、１１月の
　　　　選挙で復活したとしても、影響力は非常に小さくなってしまった。保守本流と呼ばれた流れを
　　　　汲む人がいなくなってきたことが、今の自民党の選挙公約に、「防衛庁を防衛省に移行させる」
　　　　という項目が入ったこととも関係していると思う。

　　　　さて、年齢の話だが、宮沢氏は２年少し前まで、大臣をやっていた。その時でも８０歳を越えて
　　　　いた。また、最近まで大臣だった塩川正十郎氏も８０歳を越えていた。８０歳を越える人を大臣
　　　　にする一方で、７３歳定年というのは少しおかしな話のように思う。やはり７３歳定年にするので
　　　　あれば、大臣も７３歳以下にすべきだろう。