自衛隊イラク派遣に反対(まとめ直し) :2003.12.13
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 12月10日に書いたものを少しまとめ直した。前半は新たに加え、後半は少し削った。

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12月12日の朝日新聞にイラク派遣に関する世論調査結果が掲載された。見出し
は「内閣支持下落41%」「イラク派遣反対55%」であり、イラク派遣反対が増え
ているかに見えるが、内容は見出しと異なっている。派遣反対55%というのは10
月調査から変わっていないうえに、派遣反対は、現時点での派遣を想定しており、
「情勢が安定してからの派遣なら良い」と考える人を除くと、「時期にかかわらず反
対」は26%にとどまっている。決して、自衛隊のイラク派遣自体に反対と答えてい
る人が多くなっているわけではない。
 最近のマスコミは、イラク復興支援特別措置法との関連から、派遣地域が非戦闘地
域かどうか、自衛隊が安全かどうかを議論の中心にしている場合が多い。派遣に反対
する主張をする場合も、イラクの現状が危険であり、自衛隊を派遣した場合、戦闘に
巻き込まれる可能性が高いという点を強調している。この見方は間違っているわけで
はないが、派遣地域が安全かどうかに議論を集中することによって、「時間が経過し
安全性が増せばイラクに自衛隊を派遣しても良い」という方向に世論を誘導している

ように感じる。

イラク派遣に関して、自衛隊の安全はもちろん大切なことだが、その前に、日本が自
衛隊を派遣し復興支援を行なう場合、どういう立場でイラクの地に立つことになるか
をよく考える必要がある。
 イラク戦争は、イラクに大量破壊兵器の査察を受け入れさせたにもかかわらず、米
国が査察を途中で打ち切らせ先制攻撃することにより始まった戦争だ。そして、日本
は、攻撃を始めたアメリカを支持した。大量破壊兵器が未だ見つかっていないことか
ら、大義なき戦争との批判がある。また、例え今後見つかったとしても、避けること
ができた戦争であった。この戦争で、イラクの民間人が7千人〜1万人くらい亡く
なったという調査結果がある。避けることのできた戦争により、亡くなったイラク人
やその家族のことはどう考えるべきであろうか。責任がアメリカ・イギリスにあるの
は当然だが、それを支持した日本も戦争を始めた当事者に加わったということであ
り、亡くなったイラク人に責任を負うということになる。イラクがフセイン独裁政権
だったから、別に大量破壊兵器は重要ではなかったかのような考えがあるが、独裁政
権下にある国民が、独裁からの解放という名のもとで、外国の部隊に殺されても良い
はずはない。
 イラク復興支援という言葉は、「イラク国民のために行く」という響きがあるが、
自分たちに破壊した責任の一端があるという意識が少しでもあれば、このような言葉
を簡単に使うことはできない。アメリカ支持を打ち出したことは、それだけ重い責任
を背負ったことだという認識が、最近の議論に欠けている。
 日本人は、自衛隊のイラク派遣を、中立な立場での復興支援と捉えてがちだが、ア
メリカ支持を打ち出してしまった以上、中立な立場で参加することはできない。
破壊
した側のものが、復興という名目であれ、装備した部隊を派遣することは、少なくと
も被害を受けたイラク人に反感を呼び起こしゲリラ攻撃の対象になることも充分に予
想される。そして、理念のうえでも、破壊した側に立つ部隊への攻撃を不当と言いが
たい面が生じてしまう。このような状況で、自衛隊を派遣することはさらなる悲劇を
呼ぶことになる。
 上記のように、戦争の正当性をどう考えるかがイラク派遣問題にとって非常に重要
である。しかし、今、戦争の正当性と派遣問題は全く別に取り扱われてしまってい
る。この点を踏まえて、日本がどういう立場に立っているかを、もう一度、考え直す
ことが必要だ。