自衛隊イラク派遣に反対 :2003.12.10
                                                 戻る
     昨日、自衛隊イラク派遣の基本計画が閣議決定されました。それに基づき、来年1月
   中旬頃、実際に派遣される見込みと新聞には書かれています。
    今、イラク派遣に関しては、イラク復興支援特別措置法との関連から、派遣地域が非
   戦闘地域かどうか、自衛隊が安全かどうかが議論の中心になっています。派遣する自
   衛隊の安全はもちろん大切なことですが、その前に、よく考えるべきことがあると思いま
   す。 それは、自衛隊がどういう立場でイラクの地に立つことになるかという問題です。

    イラク戦争は、もともと、大量破壊兵器を開発・保有していることを理由として、査察の
   途中であるにも関わらず、アメリカ・イギリスが先制攻撃することにより始まった戦争です。
   戦争を始めた責任がアメリカ・イギリスにあるにも関わらず、日本は、アメリカの攻撃を支
   持してしまいました。この戦争で、イラクの軍人がどのくらい死んでいるのか情報を持って
   いませんが、民間人が7千人〜1万人くらい亡くなっているという調査結果があるようです。
     大量破壊兵器が未だ見つかっていないことから、大義なき戦争との批判がありますが、
   そうであるならイラクの亡くなった人々や家族はどうなるのでしょう。誰が責任を取って、謝
   罪や補償をするのでしょう。大量破壊兵器がもし今後見つかったとしても、この戦争は避け
   ることができたし、これらの人々は死なずに済んだのです。責任がアメリカ・イギリスにある
   のは当然ですが、それを支持した日本にも、同様の責任が付いてくると考えるべきです。
   イラクがフセイン独裁政権だったから、別に大量破壊兵器はどうでも良いような考えがある
   ようですが、独裁政権下にある国民は、解放という名のもとで、殺されても良いのでしょうか。
   そんなはずはありません。

    日本がアメリカ・イギリスのイラク攻撃を支持したということは、1万人近くの民間人の死
   者(そして軍人の死者も)を出した責任を負うということです。そして、戦争を始めた当事者に
   加わってしまったということです。イラク復興支援という言葉には、「イラクのために行ってあ
   げる」という響きがありますが、自分たちが破壊に責任があるという意識が少しでもあれば、
   このような言葉を気安く使うことはできないはずです。それだけのことを、日本はしてしまっ
   たという認識が、今、一番欠けていることだと思います。

    破壊した当事者である日本が、当事者意識の無いままに、自衛隊を派遣して復興という
   名の支援を行なうことは不当であると同時に無理があると考えます。
   破壊した側のものが、復興という名目であれ、装備した部隊を派遣することは、少なくとも
   被害を受けたイラク人に反感を呼び起こすでしょうし、ゲリラの対象になることも充分予想さ
   れます。もし、攻撃を仕掛けるイラク人ゲリラが、不当な戦争を仕掛けた国々に対して戦お
   うとする意識を少しでも反映しているとしたら、それをテロと呼んで、ゲリラに反撃することが
   正当な行為と呼べるでしょうか。このような状況下で、派遣される自衛隊員は、正義感を持
   って任務に付くことができないはずです。これらの点から、自衛隊のイラク派遣に反対です。
   
    現在、イラクには国内を治める政府がありません。アメリカ・イラクの間には停戦という状態
   すらありません。まず、アメリカ・イギリス等の当事者によるものでない統治を行なえるように
   しなければなりません。戦争を仕掛けた国を除き、国連中心に暫定的に統治することが、イ
   ラクによる攻撃の正当性を奪うことになり徐々に治まるのではないかと思います。その後、
   イラク人による政権を立てていかなくてはいけませんが、その段階で、中立な立場とイラク側
   から見られ得る国に平和維持活動をお願いすることが必要で、日本にその資格はないと考え
   ます。

    上に書いたように、この戦争の正当性をどう考えるかが、イラク派遣問題にとって非常に重
   要です。しかし、今、戦争の正当性と、派遣問題は全く別に取り扱われてしまっています。
   そして、派遣問題も安全面の点だけに議論が集中してしまい、他の面が見失われています。
   日本がどういう立場に立ってしまったかを、もう一度、考え直すことが必要だと思います。