土井社民党党首 辞任 :2003.11.13
日曜に行なわれた総選挙で、夜8時の出口調査発表時には自民党敗北、民主党
大躍進という雰囲気だったのに、開票が進むにつれ自民党があまり減っていないこ
とが明らかになり、今回の選挙を総括する人たちのテンションが落ちてきていたよう
に感じた。マスコミは出口調査の精度を見直さなくてはならない。
今回の選挙の結果を見て、誰の目にも明らかなのは、社民党・共産党の大敗北だ。
そして、今日、土井党首が辞任した。18あった議席が3分の1の6に減ったわけだか
ら、普通の状態の政党なら辞任は当然だろう。でも、土井さんが辞任した場合、求心
力を失って党として存在できなくなるとの見方が強く、辞任は解党という意味に限りな
く近いため、辞任しにくい状態にあった。それでも、土井さんは辞めてしまった。
冷めた目で見ると、辞任しようがしまいが社民党が弱っていくのを防ぐことはできない。
辻本清美の秘書給与詐欺事件は、その事件そのものもだが、それ以上に、古いノウハ
ウめいたもので政治を行っているイメージを国民に与え、それが過去の北朝鮮問題への
対応と相まってますます改革できない体質を感じさせてしまった。 また、地方では、常
に与党になることを求め自民党以上に改革できなかったり、弱者の側に立った場合も逆
差別という既得権益を守っているだけといったイメージがあり、賛同者が増える要素はな
い。
そんな党ではあるが、憲法第九条を守るという姿勢は貫いていて、そこにこの党の唯一
の存在価値が残っていた。国民側に第九条の支持が高いけれど、国会議員の側、特に
民主党若手を中心に改憲派が増えている。湾岸戦争後、日本人は第九条を守り続ける
ことに自信を失っているが、まだ、海外派兵には慎重な人が多い。この問題に関する国
会と国民との位置ずれがある現状ではしばらく、社民党に頑張っていて欲しかった。
僕は、小泉首相が「自衛隊は軍隊だ」とためらいもなくしゃべり、そのことが国民の反感
を引き起こさない状況に焦りを感じる。外国からみれば、自衛隊は軍隊かもしれない。しか
し、日本人にとって自衛隊はあくまで自衛のためにしか使わない組織だという意識を持って
自衛隊という語句を用いてきた。それを安易に軍隊と呼ぶべきでない。少なくとも第九条を
支持する日本人は軍隊と呼ぶべきでない。言葉には思想があるので、簡単に思想を除去
してしまう言葉使いは間違っている。(1980年頃には、まだ、自民党が軍隊ではないと
言い、当時の社会党は軍隊じゃないかと批判していたように思う。時代は確かに変わって
きている。)
土井党首の辞任は、社民党主導の平和運動の終わりを意味している。従来の護憲とい
うだけでない新しい考え方が必要だ。それを考える機会が、イラク派遣問題だろう。
イラクに派遣する自衛隊の安全が問題にされていて、もちろん重要な問題だが、日本人が
イラク人を殺す可能性について議論されていないように思う。
その際、日本人がイラク人を殺しても良い理由はどこにあるのか。イラク人が、外国から来
た敵に向かっていくのは自衛権ではないのか。 疑問は数多くある。
決まりきった護憲の言葉を用いてではなく、一人一人が疑問点を一つひとつ考えていくこ
とで、社民党なしでの次の時代の平和運動のあり方が決まっていくような気がする。僕も
このことを考えていこうと思う。 土井党首辞任が、新しい形を生むきっかけとなることを望む。