読書のコーナー(ノンフィクション):2002年
  最近読んだ本を紹介します


◆昨年(2002年)読んだ本
 (◎お奨め  ○まあまあ  △とりたてて言うほども無い  ×つまらない)




 ○ジェンダーの法律学 (金城清子;有斐閣) :2002.12.18
   内容には賛成できない箇所が多々ある。男女共同参画社会が社会全体の理解を得ることが難しい理由に、
   基本的にが、男女の差を認めないことがあるように感じる。(例えば、男女の分担を認めないこと)

 ◎中国 第三の革命 (朱建栄;中公新書) :2002.11.24
   この本は読んで良かった。日本在住の中国人である著者の見方は、日本人の見方と異なり、中国の将来に
   ついて結論的には楽観視している。著者は東アジアの民主化プロセスをヨーロッパとは区別し、経済発展が
   先になり、その後市民社会と政治の民主化が訪れるモデルを考える。これは、基本的には日本、韓国と
   同様と見ている。

 △現代中国 グローバル化のなかで (興梠一郎;岩波新書) :2002.9.23
   中国社会の中の問題点をいろいろ挙げている。官僚の不正、暴力団の勢力拡大、収入格差、社会主義でありながら
   遅れている社会保障、既に進んでいる高齢化など。

 △からくり民主主義 (高橋秀実;草思社) :2002.8.24
   朝日新聞の書評欄に紹介されていて、村上春樹があとがきを書いているということもあって、しばらく探した後
   手に入れて読んだ。内容は大したことが書いていなくて期待はずれだった。ただ、参考文献がたくさん書いてあって
   これくらい書くだけでも予備知識収集にたいへんな労力がいることを知った。
   あとがきから引用 「なんという困った社会に僕らは生きているのか。でも好むと好まざるとにかかわらず、それが
   僕らの住んでいる世界なのだ。僕らはその中で生きていくしかないのだ。」

 △ナショナリズム (姜尚中 カンサンジュン;岩波) :2002.8.20
   6月にサッカーのW杯が日本と韓国で開かれた。かなり盛り上がり、にわかサッカーファンが増えたようだ。
   日本チームを応援する人がほとんどだったと思うが、僕は日本チームを応援していなかった。なぜかオリンピック
   でも応援する気になれない日本チームがいる。でも日本チームはどれも嫌いかというとそうではなく、冬季の
   ジャンプなどは、日本を応援していた。自分でもよくわからず、それを解明する言葉の一つがナショナリズムかな
   と思って、ナショナリズムに関する本を探していて、今回この本を選んだ。残念ながら、この本はわからない言葉が
   多く、理解できない箇所が多かった。自分の理解力の無さを感じると同時に、もう少しわかりやすく説明してよ、
   という気もした。

 ×ナチ・ドイツと言語 (宮田光雄;岩波新書) :2002.8.12
   全く期待はずれ。

 ○チャイナ・インパクト (大前研一;講談社) :2002.7.26
   期待していなかった分、結構おもしろかった。

 △おじさん的思考 (内田樹;晶水社) :2002.7.26
   朝日新聞の書評欄に紹介されていて、日本を支えてきた”正しいおじさん”が最近否定されることが多いが
   これからも大事だというように評価していたように記憶している。しかし、Webサイト向けに書いたという文章は
   レベルも低く、内容も単なるぼやきか意固地なだけであって、ここを拠点にできるものではなかった。期待して
   いただけに、読んだ後の落胆の度合いも大きかった。

 △父親力 (正高信男;中公新書) :2002.5.28
   父親が子育てを手伝うことは、男女平等の観点からは正しいが、母親が2人になるような状態は、子どもに
   とって望ましいことなのかという疑問を以前から抱いていた。その意味から期待を持ってこの本を読んだ。
   いくつかのおもしろい指摘(一番古い記憶は、嫌悪体験。 子育て熱心な父親は、仕事不熱心。)はあったが、
   単に昔風の家事はしない怖い父親像では意味がなく、現代における新しい形への提案はなかったのは
   残念だった。

 ○弱者とはだれか (小浜逸郎;PHP新書) :2002.5.17
   マイノリティの当事者以外にはマイノリティの問題を語る資格がないかのような雰囲気を問題とし、
   障害者、部落を取り上げている。内容は興味深いし、適切な指摘もある。でも著者は本を書きすぎるためか
   練り方が不充分に感じる。もっと踏み込んで書いてくれればさらによくなるはずなのに。。

 ○ダウン症の子をもって (正村公宏;新潮文庫) :2002.5.3
   経済学者としての著者は、NHKの市民講座で知っていたが、子どもがダウン症であることは知らなかった。
   ダウン症は卵子の異常が原因ということになっていて、母親を苦しめる要因にもなる。ダウン症の子どもは
   穏やかで、先天性異常の障害者の中では、施設でも扱いやすい方のようだ。現在、妊娠中に染色体異常を
   調べることが可能であるが、障害者を認めないのかという立場から批判もあるが、少し誤った批判であると
   思っている。

 △知事が日本を変える (文春新書) :2002.5.2
   浅野、北川、橋本という3人の知事の対談である。対談集は全体としてはあまりおもしろくない場合が多く
   この本も例外ではないと思うが、参考になる箇所、知らない情報はいろいろあった。
   職員の名刺は全国どこの自治体でも私費で作っている。パブリックコメントは実際には非常に少ない。
   県民レベル以上の県政はできない。(昔国政で同じ言葉はあった) 一つの町で全部用意するのではなく
   この町には公民館、隣町に工業団地、あちらには住宅といった機能分担の概念を検討するのも良い。

 ○壁 (小宮山博仁;岩波 教育の挑戦シリーズ) :2002.3.31
   塾について書いた本。中学受験と高校受験を分けて考えていて、現状を捉えるうえで参考になる。
   私立中学受験は、教科書レベルを超えた問題が出題されるため、進学塾が必要になっている。一方、
   高校受験の場合、ほとんどは公立受験となっているため、学校の勉強で対応できる。このため、中学受験は
   約3年の年月をかけるのに対し、高校受験は中三の夏以降に本格化する場合が多くなっている。この考えに
   よれば、中学生の場合、進学塾が成立しないはずなのに、奈良県では塾が成長してきているように感じる。
   これは、私立高校の進学実績の向上のせいか、または、親の勘違いのせいか、どちらだろう。

 △成果主義と人事評価 (内田研二;講談社現代新書) :2002.3.3
   成果主義を否定しているようで、最後は受け入れていて、対抗軸を築けずに終わっている。

 ×算数のできる子どもを育てる (木幡寛;講談社現代新書) :2002.3.2
   著者のやっているフリースクールの宣伝が中心で、全く役に立たない期待はずれの本。

 ×eメールの達人になる (村上龍;集英社新書) :2002.2.16
   こんな本を書いてお金儲けができるなんて、うらやましい限り。


    

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