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(9) □ 現代戦争論 (小泉悠:ちくま新書) 2026.4.24
2026年2月刊行 (2026.4.4 北大路イオンモール大垣書店)
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(8) △ 外の世界の話を聞かせて (江國香織:集英社) 2026.4.11
2026年2月刊行 (2026.3.22 近鉄百貨店橿原店ジュンク堂)
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(7) △ 京大マガジン0号 (京都大学総合研究推進本部:ミシマ社) 2026.4.5
2026年3月刊行 (2026.3.28 ミシマ社オンライン)
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(6) △ 原発回帰を考える (日本ペンクラブ編:集英社新書) 2026.3.26
2026年2月刊行 (2026.2.22 京都駅ふたば書房)
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(5) □ 改憲的護憲論 (松竹伸幸:集英社新書) 2026.3.13
2017年刊行 (2026.2.28 アマゾン)
3月9日の立憲民主党のWEB会議での意見交換会の前に、6項目くらいの短い意見を送った。その中の憲法に関する箇所は次のように書いた。
「現在急いで憲法を変える必要は感じていないが、自衛隊明記の可能性が高まってきたなら憲法改正自体に反対するだけでは取り返しのつかない事態になりかねない。その場合は、活動地域を領土内に限定し、例外として国連軍、PKOのみを認める、というような条文を作成して対抗してほしい。専守防衛はまだ国民の支持が得られるはずだ。
憲法は国家権力を縛るもの。それを国民に認識してもらえるように、自衛隊活動範囲を明確にした条文を示すことは意味があることだ。」
上記のような趣旨で書かれた本を探しているときに本書を見つけたのだが、「はじめに」を読むと全く違う主張らしいことがわかった。本書の「改憲的護憲」というのは、9条の条文を変えずに今の文面のままで行くことを選択する立場とのことだった。
あまりすっきりしないし、読み終えても主張の根拠がわからないままだった。
一方で、共産党が1990年代初頭まで改憲を理念としていたことや、2つの違憲判決の論点など、過去の経緯は参考になるところが多かった。ただ、書かれたのが2017年なので、そこからの国民意識の変化は気になる。
(メモ)
・自衛隊は違憲だから廃止せよというのが従来の護憲派だったはずだが、そういう護憲派は今はほとんどいない。
・専守防衛の自衛隊を認める圧倒的多数の国民が、同時に憲法9条を守りたいと考えてきた。
・護憲派から改憲派に対して「改憲したら海外で戦争する国になるぞ」という批判が寄せられ、改憲派は護憲派を「武力を否定するのはお花畑だ」と揶揄するが、そのような改憲派も護憲派もほとんどいなくて、国民の9割は専守防衛派。
・自衛隊発足の頃は、専守防衛派とは改憲派の代名詞だった。
・自衛権否定から肯定へと転換した論理:憲法9条に「戦争放棄」「戦力不保持」「交戦権の否認」は規定されているが、自衛権を否定する明文はない→独立国なら自衛権を保有しているのは当然→憲法は自衛権を否定していない。
・専守防衛と非武装中立の対立。
・「専守防衛は一億玉砕」という石橋正嗣の批判:戦争は日本国土のなかで行われる
・1966年政党支持者別の調査:(社会党支持者)自衛隊を憲法違反だと思う28%、違反していない14%。自衛隊必要58.4%、不要26.5%(共産党支持者)憲法違反78%、違反していない5%。自衛隊必要21.4%、不要68.7%。両者の差は大きい。
・国民は理念と現実の使い分けをしていた。
・石橋氏の「非武装中立論」での自衛隊漸減のための最低4条件:政権の安定度、隊員の掌握度、平和中立外交の進展度、国民世論の支持。→社会党政権ができても、かなりの期間、違憲の自衛隊を保持することになる。→社会党の混迷:→石橋氏の「自衛隊=違憲合法論」→村山総理時に自衛隊合憲論へ転換することになった。
・憲法問題の対立構造とは。
以前は自衛隊違憲論に基づく非武装中立と、自衛隊合憲論に基づく専守防衛との対立と思われていた。しかし、これは見せかけ。国民の中の現実の対立軸ではなかった。国民は早い時期から自衛隊と専守防衛を支持していた。
・21世紀に入ってからの対立構造の変化。
集団的自衛権容認の動きを受けて、それまでの専守防衛派が護憲派を名乗って登場する。専守防衛はそれまでの護憲派からは解釈改憲の論理だったが、専守防衛は護憲という立場でそれまでの護憲派と手を組むようになった。
・著者の考え
国連憲章で武力の行使が包括的に禁止されるようになった現代において、軍隊がどうあるべきかはどの国にとっても新しい探究が必要な課題。大手を振って闊歩する軍隊ではなく、戦争は忌むべきものという前提でつくられた自衛隊のイメージは世界の手本になる可能性も秘めている。国民の支持が自衛隊の誇りを支える最大の要素であることを考えるとき、憲法に明記しないことも選択肢。
・憲法9条の第1項、第2項をそのままにして、自衛隊を明記する改憲を行うと、自衛隊は国民の多くが支持する専守防衛の自衛隊ではなくなる。集団的自衛権の行使を決め、武力攻撃を受ける対象を日本から他国に拡大した自衛隊になる。これは専守防衛とはいえない。
・慣習国際法上の自衛権の発動の3要件:@武力攻撃の発生(急迫不正の侵害) A外交努力で解決しない B被った攻撃に相当する程度の反撃に限定
【共産党の憲法・防衛論の変遷】
・憲法選定議会:自衛権放棄に反対(自衛権擁護の見地から現行憲法に反対した唯一の政党)
「中立自衛」 1990年代初頭まで:「中立自衛」(立憲主義+国民の命を守る)
・安全保障上の危険は2つ。安保条約があるから生まれる危険、もう一つは世界に何らかの不心得な国が現れて日本の主権をおかす危険、この両方に対して明確な対処が必要(1980年 不破哲三氏)
・憲法に合致した手段で戦う。→憲法9条では恒久平和を貫けない・・・9条改定を展望
・解釈改憲を批判。「最低限、文字どおり自衛で、節度ある防衛に限定して軍隊を持ちうるという規定を適当な方法で考慮する」(1969)
・一方で、9条改正は将来のことと位置付け、当面は変えないとした。(連立相手として社会党を想定+9条改正による集団的自衛権行使に繋がる懸念)。「護憲」という言葉は使わず、「憲法改悪阻止」という言葉を使用
・社会党との連合政府の場合、自衛隊は縮小→最終的に廃止。共産党主導政権ができれば憲法改正し、新しい自衛戦力を作る。・・・現実にはありえない想定
・共産党は憲法99条の憲法尊重義務を律儀に解釈し社会党との連合政府で憲法改正議論をしないとしてきた。一方で自衛戦力が存在しない状態を国民が黙認することはないと考えていた。1980年「独立国として自衛措置のあり方について国民的な検討と討論を開始する」として、自衛戦力保持の方向を示した。
「憲法9条堅持」に転換(1994年)
・冷戦構造終結。侵略に対しては「警察力」で対処が基本(社会党と同じ立場に)→共産党員の反発無し。現場では「憲法改悪阻止」で9条を守る意識が強かった。
・自衛隊災害支援でホンジュラス派遣・・・共産党は賛否表明せず。
「自衛隊活用」(2000年)・・・警察力で対応では国民に通用しない
・自衛隊解消が現実になるまでの過渡期には自衛隊を活用する。運動家や党員には評判が悪かったが、安全政策の担当者としては合理的になったと考え、堂々と説明していた。
・「中立自衛」との違いは、憲法改正を目指さず、9条堅持という点。
・2004年スマトラ沖大地震時の自衛隊派遣には、「反対しない」ことを表明
・2001年9・11同時多発テロ:タリバンがビンラディンの身柄引き渡しを拒否した場合の対応として、国連憲章に基づく経済制裁などの非軍事的措置を取るべき、としつつ、不十分な場合は「軍事的措置」もありうる、とし、軍事的対応をいっさい拒否するという態度は取らなかった。
・2001年海上保安庁改正案賛成(不審船への危害射撃と認める)・・・実力行使強化に賛成
「ゆらぐ自衛隊活用」
・2005年党機関紙に論文投稿「9条第2項に自衛隊明記に反対。理由は自衛隊の存在と活用を否定する立場からでなく、海外での戦争に繋がるから。9条を守る運動が、自衛隊の保有と活用を当然と考えるのを否定的に見たり、軍事優先論と同一視するのではなく、海外での戦争しない国にするために協力関係を築くべき」
→共産党常任幹部会から厳しい批判。自衛隊活用は将来の段階(日米安保条約をなくす民主連合政府以降)であって現在の活用は党大会決定と相容れない。→2007年退職。
・2011年東日本大震災。共産党県組織が自衛隊駐屯地の慰労訪問を中央委員会に申し出たが却下。
「当面も自衛隊活用」への転換
・新安保法制可決後、野党共闘による「国民連合政府」構想発表。日米安保条約の問題は「凍結」。必要に迫られたら自衛隊活用するとした。
・自衛隊は違憲だが、国民多数の合意が得られるまでは政府としては合憲。
【護憲派による専守防衛政策】
・「専守防衛の自衛隊」を認める見地から、日本防衛のあり方を真剣に考える必要がある。
・憲法改正を否定する護憲派にも防衛政策が必要。専守防衛の政策が求められている。
・専守防衛で戦う際のROE(交戦規則)の整備。人道法違反は犯罪になる。
・常備軍を持たないコスタリカにも国際人道法違反を裁く国内法がある。(常備軍を持たなくても有事には軍隊を持てるようになっているから)
【自衛隊の違憲・合憲論を乗り越える】
[自衛隊イラク派兵差止訴訟高裁第二審判決(2008)]
・航空自衛隊による空輸活動の一部が違憲とされた。多国籍軍の武装兵員をバグダッドへ空輸することは、他国の武力行使と一体化した行動であり、自らも武力行使を行ったことになる。このため憲法9条第1項に違反すると認定。
・裁判自体は原告に当事者性がないので控訴棄却で原告敗訴。国は勝訴のため控訴せず、原告も違憲判断を了として控訴せずに確定。
[長沼訴訟第一審判決(1973)]・・・自衛隊が日本の防衛に専念していないことも違憲判決の判断に繋がっている。
・北海道夕張郡長沼町に地対空ミサイル発射基地建設計画があったが、該当地域が永源涵養保安林に指定されておりそのままでは建設できなかった。農林大臣が1969年に公益を理由に指定を解除。反対農民が憲法違反の自衛隊基地建設は公益に当たらないとして訴訟を起こした。
・札幌地方裁判所は自衛隊が違憲であるとする判決を下した。
・判決文には、自衛隊の中心的な役割が米軍を守るというものではないかと疑念が提示されている。ベトナム戦争を踏まえ、米軍と共同作戦を行う役割を持つ自衛隊は米軍の不法かつ残虐な対外侵略行動の共犯者たる性格を持ち、そのような自衛隊の保持の違憲性は明白とした。
・2014年集団的自衛権の一部が容認されるまで、専守防衛は下記のように定義されていた。
「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最低限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最低限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう」
・護憲派に求められるのは、イラク戦争がつくり出した専守防衛派と非武装中立派の協力を発展させること。
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(4) 〇 インフレ・円安・バラマキ・国富流出 (佐々木融:日経プレミアシリーズ) 2026.2.28
2026年1月刊行 (2026.2.22 京都駅ふたば書房)
物価が上がり始めた頃2022年に物価を専門にしている渡辺努氏が「世界インフレの謎」(講談社現代新書)を書いた。日本のモノ価格・賃金が安いのは2013年からの金融緩和による円安政策に依るところが大きいことをデータも示していた。
その本のコラムに『「安いニッポン」で何が困るのか』という箇所がある。「安いニッポン」が買われることは日本経済に良い効果も及ぼす。「安いニッポン」が買われ、それによって価格と賃金が上がることも価格・賃金の硬直状態を脱却する一歩と捉えるべきと書かれていた。前半は本書と一致しているが、後半に関しては本書は「安いニッポン」が買われていないことを悲観している。
円が全ての主要通貨に対して弱くなり、日本の賃金も割安になっているのに、日本に投資して日本に工場を作るという動きは拡がらない。海外企業がそうだというだけでなく、日本企業ですら国内に投資しない。本書でそれを裏付ける基本データはくり返し示される。しかし、なぜそうなのか。人手不足、雇用制度などの話がされているが、もう一つ腑に落ちない。
(メモ)
[第1章 お金、投資、マーケットのそもそも]
・株価は「利益」×「倍率」で決まる。簡単に言うと、ある企業がどのくらい利益を上げて、それが何年続くか(倍率)と市場参加者が予想するかで決まる。1980年代後半のバブルの頃は「倍率」が大きく上昇した。
・最近の株価上昇は「利益」の増加が主な要因。最近の企業の利益が増加しているのは、主にインフレと円安が背景。
・実質的な成長がなくてもインフレ下ではGDPは増加。2024年GDP642兆円、インフレ3%ずつ増えると15年で実質成長なしで1000兆円になる。
・以前は中東危機などの場合に円が「安全通貨」と解説されて円高に動いたが、現在は「安全通貨」という動きをしなくなった。マーケットが安定して変動が少ない時、市場参加者は金利差を得るために円という低金利通貨を売って高金利通貨を買うポジションを取る。中東情勢が悪化したり、株価が大きく下落した場合、投資家は予想できない損失を防ぐためにポジションを解消し、高金利通貨を売って円を買い戻した。貿易黒字国だったので円高が進行すると日本の輸出企業も外貨を売って円を買い戻す動きをし、円高加速で投資家も外貨を売って円高が加速した。このため「安全通貨」のように見える動きをした。現在も低金利通貨を売って高金利通貨を買うポジションを取る市場参加者は多く、中東情勢悪化で少し円高方向に動くが、貿易赤字国なので、円高が進んだところで輸入業者が円を得るので円高が止まり、「安全通貨のような動き」はしなくなった。
⇒要するに以前「安全通貨」とされていたのは円高だったから。
[第2章 なぜ円はこれほどまでに弱くなったのか]
・一つは、海外では物価上昇率が大きく、日本ではほとんど物価が上昇していない。1990年から2024年までの間に、米国、英国、オーストラリアの物価(消費者物価)は約2.4倍、ドイツは約2倍になっている。日本は20%。2021年時点では10%
・米国の物価が上昇して日本の物価が変わらなければ円高にならなければ釣り合わないのに、実際は円安となっている。円が国際的に評価されなくなっている。
・海外から見ると非常に割安になっている円を買って日本で使えば、日本国内で様々なモノやサービスが割安で買えるのに、誰も見向きしない状況。日本の賃金は他国に比べてかなり割安になっているのに、日本で工場を建ててモノを作ろうという動きはあまり拡がらない。
・為替相場の評価には、物価の変動率も一緒に考える必要がある。1970年の1ドル=360円より、現在の1ドル=150円の方が円高という評価は正しくない。1970年当時と比べると米国の物価の方が日本より大きく上昇しており、本来は大きく円高に振れている必要がある。
・購買力平価という指標:物価の変動率の違いを考慮して、両国で同じものが同じ価格で買えるドル/円相場はどのくらいかを示す指標
・1980年代後半からアベノミクスが始まる2013年頃までのドル/円相場は企業物価 購買力平価と輸入物価 購買力平価の間で推移。アベノミクス開始以降のドル/円相場は上方シフト(円安方向)にシフトし、消費者物価
購買力平価と企業物価 購買力平価の間で推移。そして2022年以降は消費者物価購買力平価を大きく抜けて上昇
・アベノミクス以降、2025年末までの主要通貨の対円騰落率は、すべての主要通貨は円に対して上昇。
・2013年以降の10年の物価は、日本15%上昇に対し、米国37%、ドイツ30%、オーストラリア37%、ノルウェー42%上昇。本来円相場は各通貨に対して大幅な円高になっていなければならないのに、全ての通貨に対して下落している。
・円の実効通貨レート(貿易加重平均レート:貿易相手国の為替レートを使い、各国との貿易額をウェートにして円の強弱を計算)は、90年代をピークにして下落し、1970年を下回っている。
【要因】:実質金利と資金流出
@実質金利が大きく落ち込んだ。実質金利は、金利からインフレ率を引いたもの。普通預金金利0.2%、インフレ率3%とすると実質金利はマイナス2.8%。銀行に預けておくと1年間で2.8%価値が下がる。実質金利が大きなマイナスになっているのは主要国では日本だけ。銀行の預金金利は日本銀行が決める政策金利に連動する。日本の実質金利は2022年に大幅に低下し、大きなマイナス圏に突入。インフレ率が上がっても金利を上げなかったから。持っていると実質的に目減りする通貨だから、誰も持ちたいと思わない。円が極端に弱くなっている理由の一つがこの実質金利。
A日本から海外への資金流出(日本人が円を売って外貨を購入し、海外の資産、製品、サービスを購入する流れが強まっている)
・最も大きな資金流出は、日本企業の海外工場建設や海外企業買収による対外直接投資。アベノミクスが始まった2012年以前は年間10兆円を超えることがほとんどなかった対外直接投資が2024年は30兆円規模にまで膨らんだ。
・最も日本に見向きをしなくなっているのは日本企業。日本が最も多く直接投資しているのは米国。しかし、米国の平均賃金は日本の倍以上。それなのになぜ多額の対米投資をするのか。人手不足、国内需要が弱いなど。
・1990年代から2000年代にかけての行き過ぎた円高が日本企業の海外進出を促したと言われることがあるが、円安が歴史的水準にまで進んでも、海外進出は加速している。海外投資や海外進出は円高が主な理由ではないことを示している。
⇒本書はこの部分の理由を十分には説明できていない。
[第3章 日本政府の借金はなにが問題なのか]
・マイナスの実質金利から抜け出せない重要な理由のひとつが債務。債務が大きくなりすぎているので金利が上昇すると利払い費が急増してしまう。
・2023年度の日本国の財務諸表:負債合計1474兆円。資産合計778兆円。→債務超過696兆円
・日本の問題は政府が債務超過になっていることでなく、日銀が国債発行増加を支え過ぎたこと。日銀が大量に国債を購入し保有してきたことは、日本の政府債務残高がここまで膨張してきた重要な要因
・日本の国債発行は長年、日銀の超低金利政策と積極的な国債購入に支えられてきた。
・政府の利払い費は1990年代は概ね10兆円台。2000年代に入り急速に減少。ここ数年は若干増加しているが2024年度は8兆円台。国債残高が5倍程度に急増しているのに利払いは減少してきた。
・10年国債金利が2025年12月に2%を超えて上昇。高市政権による積極財政懸念との見方もあるが、国債市場が正常化の道を進み始めただけではないか。(インフレ率の考え方がデフレ前の感覚に戻ってきている)
・2026年政府予算案では利払い費は13兆円超え。今後金利が1%上昇すると、2034年に利払い費は34兆円。10年で25兆円程度増加する。これは2025年度予算の消費税収と同額で、現在の消費税収分が吸収されてしまうことになる。
・日銀がお札を刷って国債を買い取れば政府はデフォルト(破綻)しないが、インフレ率が上がりハイパーインフレのようになると、政府が破綻したのと同じ。
【国債発行残高増加の3つの問題】
@国債を発行した資金の使い方:以前は少なくとも政府の資産として残る道路や建物に投資。しかし、現在は補助金や給付金が多い。
A金利上昇を想定せず:利払い費上昇
B国債発行増加を日銀に頼ってきた
政府や世論が日銀にイールドカーブ・コントロール(YCC)政策再導入のプレッシャーをかけることを懸念する。再導入すると円が下落し、名目金利が抑えられ、円安、インフレ、実質金利低下、円安、インフレ・・・の悪循環に陥る。
[第4章 マイナスの実質金利から抜け出せない円]
@名目金利をインフレ率並みに引き上げられない。・・・大幅な利上げに政府や世論からプレッシャーがかかる。
Aインフレ率の大幅な低下が期待できない。・・・賃金上昇(人手不足のため)、人手不足は労働時間短縮が原因。海外から人に来てもらうためにも賃金水準を引き上げ続ける必要がある。結果的に物価も高止まりする。日本は既に主要国と比べても高インフレ国。
・日本の平均年収は、2000年世界2番目、2024年24番目に後退。現在、米国の4割、オーストラリアの半分。韓国より1割低い。25年前韓国は日本の3分の1、オーストラリアも日本の6割。
・アベノミクス以降とその前の10年間で比較すると、圧倒的に高額預金の口座数が伸びている。
・2024年末時点で普通国債残高は1080兆円。2024年の名目GDPは642兆円なので、国債発行残高の対名目GDP比は168%。今後名目GDPが過去3年間の平均と同じペースで伸びると12年後の2037年に1030兆円になる。もし国債残高が変わらなければGDP比は105%に激減する。こうしてみるとインフレは良いことのように見えるが、犠牲者は預金者。インフレにより、預金者は目減り分を税金として政府に納めたのと同じような形になって政府の債務負担が減少するということになる。
・高市首相は純債務残高の対GDP比を徐々に引き下げることを目標にしている。純債務残高は負債から資産を差し引いた金額。日本の場合、資産の3割程度が年金基金や外貨準備で保有する外貨建て資産なので、円安が進むと外貨建て資産の円換算金額は増える。一方、負債は円建てなので、円安が進むと純債務残高の対GDPは低下する。つまり政府には円安を進行させるインセンティブがある。
[第5章 止められない日本からの資金流出]
・2024年1年間の日本の経常黒字は28.7兆円で過去最大。内訳は、第一次所得収支(過去に海外に対して行った投資から得られる利益)39.7兆円、第二次所得収支▲4.6兆円、サービス収支▲2.8兆円、貿易収支▲3.7兆円。
・2024年末の対外純資産額は533兆円。過去に行った海外工場建設やビジネス投資、海外企業買収、日本の投資家が行った海外債券や海外株式への投資など。この過去の投資から得られた利益、配当金などの合計が第一次所得収支。問題は海外で稼いだ収益が海外で再投資され、円買いを伴っていない可能性が高いこと。
・日本企業は新たな海外投資もハイペースで続けている。日本企業による海外への直接投資は30.7兆円、海外企業による日本への直接投資は2.5兆円。日本の対外直接投資の行き先で圧倒的に多いのが米国。米国の平均年収は日本の倍以上。オランダ、英国、オーストラリアの平均年収も日本よりずっと高い。にもかかわらず、日本企業は労働コストの割安な日本ではなく、割高な海外に投資している。
・海外から自国内への直接投資の対GDP比は日本5%。世界199か国の下から3番目。なぜここまで海外から日本への直接投資が少ないのか。要因:人手不足、硬直的な労働市場(終身雇用、年功序列)
・貿易黒字国から貿易赤字国への変貌:1980年から2000年半ばまで多額の貿易黒字。2010年代から大きく変化。
・電気機器の黒字が無くなった。生産の海外移管により輸入が増えた。
・食料品の赤字拡大。2007年輸入6.0兆円、輸出0.4兆円→2024年輸入9.9兆円、輸出1.2兆円。輸入額増加は円安要因が大きい。
・医薬品の輸入が急増。2007年輸入1.1兆円、輸出0.37兆円→2024年輸入4.9兆円、輸出1.3兆円。安価な原料を海外に依存。
・エネルギー赤字拡大。2007年輸入20.2兆円→2024年25.5兆円。エネルギーの輸入量は減少。2010年と比べると2024年の原油輸入量は3割以上減少。液化天然ガスや石炭の輸入量も減少。輸入額の増加は円安が原因。
・エネルギー、医薬品、食料品といった生活必需品の貿易赤字が拡大。円安で円建ての値段が上がっても買わなければならない。そうなると輸入額はさらに増え、貿易赤字が膨らみ、円はさらに弱くなる。すでに負の連鎖に入っている。
・サービス収支:旅行収支は大きく黒字。デジタル関連収支は大きく赤字。デジタル関連収支は米国、英国は大幅な黒字。EUも小幅の黒字。日本の赤字の大きさは突出。
・日本の税収は2024年までの5年間で17兆円増加しているが、米ドル建てでみると10%程度減少。弱くなった自国通貨で数字が大きくなることに意味はない。
[第6章 「失われた30年」は、なぜ失われたか]
・失われた30年:成長もなく、年収も増えず、物価も横ばい。
・1990年から2023年までのGDPの伸び:日本28%、オーストラリア6.4倍、米国4.7倍、カナダ4.2倍、ドイツ2.9倍、スイス2.2倍
・一人当たりのGDP:日本だけが減少気味。2023年には韓国にも抜かれた。
・1990年から2024年までの消費者物価指数上昇:日本21%、オーストラリア2.4倍、米国2.4倍、カナダ2.0倍、ドイツ2.0倍
・1991年から2024年までの平均年収増加:日本4.5%、オーストラリア・米国・英国3.0倍、カナダ・ドイツ2.4倍。日本は圧倒的に少ない。
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(3) △ 処刑台広場の女 (マーチン・エドワーズ:ハヤカワ文庫) 2026.2.16
原作2018年 2023年翻訳文庫本 (2023.9.3 近鉄百貨店橿原店ジュンク堂)
以前に新聞の書評欄の片隅に紹介されていて面白そうだったので読んでみたのだけれど、期待していたものと著者が目指していることに大きな差があるように感じた。著者はストーリーの意外さ、予想されにくさを目指しているが、僕は事件の背景にどれだけ納得できるかを重視して読んでいるようだ。なので、納得しようとすると意外さに裏切られたように感じてしまうのだろう。
(登場人物)
・レイチェル・サヴァナク
・マーサ(メイド)
・トルーマン(運転手)
・トルーマン夫人(家政婦)
・ジェイコブ・フリント(クラリオン紙記者)
・サラ・デラメア(奇術師)
・
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(2) ×大きな鳥にさらわれないよう (川上弘美:講談社文庫) 2026.1.27
2016年単行本 2019年文庫本 (2025.11.15 丸善京都本店 BAL)
小説は「著者が何を言いたいか」ということとは関係なく、自由に解釈して読むものだと思う。しかし、本書はどういう話なのか全く掴めず、著者が何を言いたいのかを意識せずには読めなかった。その意味で読むのが苦痛で、しかも全然何のことかわからないままだった。
「神様」を書いた川上弘美さんがどこに行くのかは注目しているのだけれど、どこかわからないところに行ってしまったような気がする。
*本作品は、2025年国際ブッカー賞最終候補として注目されていた。
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(1) 〇 京都の山と川 (鈴木康久、肉戸裕行:中公新書) 2026.1.15
2022年刊行 (2025.9.14 丸善京都本店 BAL))
昨年9月13日に日本学術会議近畿地区会議学術講演会を聴講した。テーマは「社会の持続可能性と水問題」。5つの講演があり、2番目の講演「水が育んだ『千年の都・京都』」の講演者が本書の著者でもある鈴木康久さんだった。その時は3つの観点で話をされた。@精神性 A計画性 B文化性。精神性として、水の神
貴船神社を紹介。計画性としては、計画的に水路を設けたこと(左京8本、右京4本)を紹介。文化性として豊富な良い水に育まれた文化を紹介。話についていけないところがたくさんあってもう少し知っていたらもっと楽しいだろうと思い、本書を読むことにした。
本書もかなり詳しくいろいろなことが書かれている。なかなかに楽しいのだけれど、平安時代からの歴史、京都の地理が頭に入っていないので、時々は途中で検索して調べるものの、ほとんどは斜めに読み進むしかないのが残念。
(メモ)
・雲母坂そばの音羽川が1972年の豪雨で土石流発生。270世帯の住宅が流された。
⇒大学の時、近くをよく散歩した。このことは全く知らなかった。
・京都の地形は三山(東山、北山、西山)から京都盆地の中央に向けて傾斜しており、東側を流れる鴨川の水は東から西へと溢れる。つまり、鴨川の東側は西側よりも安全となり、鴨川の西側は水害に見舞われることが多くなる。
・平安京の中国の都との違いは、南側だけに城壁を設け、他の三面には防御施設を設けなかったこと。鴨川と桂川が堀となり防御の役割を果たすと考えたのだろう。
・平安京は京都盆地の中央北側に造られたことから、鴨川、桂川から溢れ出た水は盆地中央に集まり、都は水害を免れることができない。平安遷都からの600年で363回洪水が起こった。
・鴨川周辺は桃山期から江戸前期に劇的に変化。御土居堀、高瀬川、寛文新堤。
・御土居堀は豊臣秀吉が1591年に整備した惣構。整備された範囲は、西は紙屋川、北は鷹峯、東は鴨川、南は東寺。東西3.5キロ、南北8.5キロ、全長22.5キロ。形状は土塁の基底部が幅18m、犬走(平坦部分)3m、高さ5m、堀は幅14m、深さ4m。御土居は河原町通の西側に造られた。この御土居堀の位置が平安期から続く堤防の位置ではないか。
・御土居堀によって鴨川周辺と都が分断され、鴨川は都の生活空間から遠い場所になった。自由な空間が生まれることで歌舞伎を始めとする遊芸を発展させた。
・高瀬川は1614年に角倉了以・素庵が作った京都と伏見をつなぐ10.5キロの運河。洪水の影響を受けない。御土居堀の鴨川側に物流拠点ができたため、消費地である都と分断される不都合が生じたと思われ、鴨川沿いの御土居堀が取り除かれることになった。取り除かれたのは今出川通りから下流の鴨川沿いだけで、その他の御土居堀は明治期まで存続。
・1668年から1671年に鴨川の護岸整備が行われた。「寛文新堤」。新堤によって400〜500mあった鴨川の川幅は120mに狭められた。西堤の堤防は高さ3.6mで東堤の2倍。洪水は東堤を越えた。西堤は毎年のように修復しており、洛中を守ることが優先された。今でも三条から四条の間の西側に当時の堤を見ることができる。
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