民主党マニフェスト :2012.12.4
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 衆院選が今日、公示となりました。主要政党数が12党にもおよび、政策の違いが
 わかりにくい選挙になっています。

 2009年の選挙後、これからはマニフェストがさらに重要になると考え、「今後の
 選挙は確実に変わります」と書きました。しかし、私の予想は完全に外れ、
 マニフェストという言葉自体が敬遠されるようになりました。

 今回民主党はマニフェストという言葉を使っていますが、中身はかなり後退しました。
 野党時代に作ったマニフェストは見通しが甘く、特に無駄の削減を安易に考えすぎて
 いたため、マニフェストで謳った政策を実現する財源がなく、諦めざるを得ないものが
 いくつもありました。
 今回は3年以上の政権党の経験に基づいたしっかりしたマニフェストを出すチャンス
 でした。
 しかし、工程表がなくなり、はっきりした数値も減り、数値があるところは期日があり
 ません。これでは後の検証ができず、マニフェストと呼ぶことはできません。
 非常に残念です。

 他党も、同様に後退しました。維新の会が公約と思われるものを発表しながら、その
 一部は公約ではないと言うなど、日本の政治全体が後退した感を否めません。

 今回の民主党のマニフェストは上に書いたように工程表がなくなり残念なものですが
 内容について目を通しました。私の考えを以下に記します。
 ただ、前回のように個々に賛成・反対を言えるようなものはほとんどなく、実現方法を
 知りたいものが多いです。

 <全体>
 マニフェストの最初に重点政策として次の5つが示されています。
  
1 社会保障
    共に生きる社会
    支え合いの社会、すべての人に居場所と出番がある社会をめざします。
  2 経済
    新しい競争力は、人と地域
    経済政策の目的は働く場を創ること。2020年までに400万人以上の働く場を創ります。
  3 エネルギー
    原発ゼロで生まれ変わる日本
    地域産業の創造、地域の雇用の創出につながるグリーンエネルギー革命を断行します。
  4 外交・安全保障
    平和国家としての、現実的な外交防衛
    「
冷静な外交」と「責任ある防衛」を組み合わせ、日米同盟の深化、アジアとの共生を
    すすめます。
  5 政治改革
    政治への信頼回復は、身を切る改革から
    世襲政治からの脱却、議員定数の削減を実現し、新しい政治文化を創ります


  ⇒「冷静な外交」という言葉に強く賛同しますが、その他には訴えるものを感じません。

 <1.社会保障>
 
 1.子育て支援  
    待機児童解消に向け、3歳未満児の保育所などの利用者を86万人(2012年度)から
    122万人(2017年度)に増やす  
    放課後児童クラブの定員を85万人(2012年度)から129万人(2017年度)に増やす
  2.医療・介護
    
国民健康保険料の5割軽減、2割軽減の対象者を拡大(対象者:約400万人)
    
低所得の高齢者の介護保険料を約3割軽減(対象者:65歳以上の高齢者の約3割が対象)
   3.年金  
    年金を受け取るために保険料の支払いが必要な最低限の期間(受給資格期間)を
    25年間から10年間に短縮
     
低年金者、障がい者に対して年金に加えて給付金を支給
    (給付金の基本額=5,000円、対象者=約790万人)
    ※逆転防止の補足的給付金の受給者約100万人を含む


  ⇒負担軽減ばかりです。低所得といっても資産はある人も多いはず。疑問のある政策です。

 <2.経済>
  ・デフレ脱却、経済活性化の観点から切れ目のない経済対策を講じるため、2013年冒頭に
   大規模な補正予算を編成します。
  ・2020年度までの平均で、名目成長率で3%程度、実質成長率で2%程度の経済成長
   めざします。チャレンジする企業を支援し、中小企業や地域で働く場をつくります。
  ・エネルギー分野で働く人を増やします。太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などの
   飛躍的な普及を実現し、地域に産業と雇用を生み出します。グリーンエネルギー革命に
   伴い、140万人以上に働く場を提供します。
  ・医療・福祉の分野で働く人を増やします。民主党政権の3年間で、医療・福祉の分野で
   働く人が約85万人増え、地域で働く場が生まれました。再生医療や介護ロボットの活用
   など、医療・介護分野の新たな取り組みをすすめ、さらに280万人以上に働く場をつくります。
  ・農林水産業で働く人を増やします。地域を支える農林水産業を、守り、育てます。作物を作る
   だけでなく、加工や小売などと組み合わせて付加価値を高める「6次産業化」を支援します。
  ・観光資源を活用した地域おこしをすすめます。海外からの旅行客を2016年までに1800万人に
   増やします。
  ・試作開発、設備投資、海外展開などに取り組む中小企業や地場産業を応援します。民主党
   政権は、中小企業予算を倍増させました。2013年3月に金融円滑化法が切れた後も、万全
   の体制で中小企業の資金繰りを支援します。
  ・再生エネルギー関連や医療機器の審査体制など、これまで民主党政権下で実現してきた
   規制・制度改革をさらにすすめ、経済構造を変革して新しい需要を創造します。
  ・政府・日銀一体でデフレ対策を強力に推進し、過度の円高、為替相場の急激な変動に対しては
   断固たる措置を講じます。
  ・税制、立地支援、規制の見直しなどを組み合わせ、空洞化対策や企業が活動しやすい環境の
   整備を行います。
  ・国益の確保を大前提として、守るべきものは守りながら、多角的・包括的な経済連携をすすめます。
  ・東海・東南海・南海地震や首都直下地震を具体的に想定した対策をすすめます。耐震住宅の
   割合を9割に引き上げるなど、地域の防災力を強化します。

  
⇒羅列しただけのような感じがします。
    具体的な進め方がわかりません。例えば、耐震住宅の割合9割は、どうやって実現するの
    でしょうか。

 <3.エネルギー>
  ・原発については、「40年運転制限制を厳格に適用」「原子力規制委員会の安全確認を得たもの
   のみ再稼働」「原発の新設・増設は行わない」という3原則を守ります。

  ・核燃料サイクル事業のあり方の見直し、人材・技術の維持・強化、国際社会との連携、立地地域
   対策の強化、原子力事業体制と原子力損害賠償制度の見直しなど、新たな原子力政策を確立
   します。
  ・分散型発電所は消費者である家庭も担い手となり、地域が産業を興して地域が雇用を生む、
   地産地消型の「エネルギー革命」を断行します。
  ・民主党政権が創設した固定価格買取制度を生かし、風力、太陽光など再生可能エネルギーを
   飛躍的に普及させ、燃料電池、蓄電池等の導入をすすめます。
  ・住宅、家庭、交通網などにおける節電を促進します。スマートメーターの普及に取り組み、スマート
   コミュニティを実現します。
  ・発送電分離について検討をすすめ、発電分野、小売分野などの自由化を断行します。

  ⇒国民に電気代上昇の負担をお願いして、脱原発を進める姿勢を示して欲しかったです。 
    (脱原発を主張する政党がどこも国民に負担をお願いしていないことに不満を感じます)

 <4.外交・安全保障>
  ・専守防衛の原則に立ち、動的防衛力、南西重視など、防衛大綱にもとづいて着実に防衛力を
   整備します。
  ・海上保安庁などの警戒監視、警備体制を拡充し、尖閣諸島をはじめとする領土・領海の守り
   固めます。
  ・外交安全保障の基軸である日米同盟を深化させます。
  ・嘉手納以南の土地返還の促進など、日米合意を着実に実施し、沖縄の負担軽減をすすめます。
  ・アジア近隣諸国との関係を大局的見地から強化します。
  ・北朝鮮による拉致事件の解決に全力を尽くし、核・ミサイル問題に引き続き全力で対応します。
  ・南スーダン等における国連の平和維持活動(PKO)やソマリア沖での海賊対処行動、ODAの
   戦略的な活用など、国際的な平和貢献を続けます。
  ・
「核兵器のない世界」の実現に向けて努力します。

  ⇒岡田外相の時は核廃絶を世界の国々と議論していたのに、最近は全く聞きません。
   核廃絶や世界平和への大きな視点から、個々の問題を見ていくという立場を示すべきだと
   思います。

 <5.政治改革>
  ・先の臨時国会で実現した5議席削減に加え、次の通常国会で衆議院の議員定数を75議席削減
   します。
参議院の議員定数は40議席程度削減します。
  ・現職国会議員が引退する場合、その親族(三親等以内)が引き続くかたちで同一選挙区から
   立候補する、いわゆる世襲について、民主党は今後も内規で禁止します。
  ・大震災復興期間における歳費減額(現在、2年間の臨時特例で12.8%削減)を継続します。
   ただし、衆議院の定数削減が実現するまでの間は削減幅を20%に拡大します。
  ・
企業・団体献金は、禁止します

  ⇒議員定数削減は本当は重要な問題ではないのに、こう書かなければならないのが残念です。
    衆議院の定数削減は比例を減らすのでなく、小選挙区と比例を同じ比率で削減しなければ
    制度の理念を壊すことになります。
    企業・団体献金禁止は政党助成金をもらう限り、早く実現させなくてはいけません。


  残念ながら、このマニフェストだけで勝負はできません。
  これからの選挙戦で、具体的な話をどれだけできるか、候補者個人の能力で勝負することに
  なりそうです。マニフェスト選挙は終焉です。
  今後はもっと早い段階でマニフェストを作り、党員・サポーターにも意見を言える機会を作るべきと
  考えます。(もっと早い段階で意見を言うべきでした)

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 2009年9月1日にHPに、当時のマニフェストに対して下記のように書いています。
 考えは今もあまり変わっていませんが、財源が不足している中では、子ども手当の
 月2万6千円は多額すぎると思います。

[2009年マニフェストに対する当時の私の賛否]
 ○子ども手当
    継続的に子どもの生活・教育を支えるという姿勢は良いと思います。
 ○公立高校の実質無料化
    これも上と同じ理由で賛成です。国立大学の授業料も高すぎるので
    半額以下に抑えるべきだと思います。
 △年金制度改革
    2年間かけて年金記録問題に集中対応するということですから
    やむを得ないことと思います。ただ、不明な点が多々残るはずなので
    どこかで終わりにできるのかが心配です。
 △医療・介護の再生
    医師の数を増やすのは急務ですので、その点は良いです。
    「後期高齢者医療制度」は名称を含めて不評でしたが、お金のある
    高齢者には多く負担してもらおうという考え方は正しいと思います。
    代わりの制度が必要でしょう。
 ○農業の戸別所得補償
    これが一番わからない。本来すべきこととは思いませんが、自給率が
    あまりにも低い状況ではやむをえないということで賛成にしました。
 ×暫定税率の廃止
    暫定税率という形は早急にやめるべきですが、自動車関係の税金を
    下げることには反対です。暫定税率分を別の用途を決めて利用すべき
    だと思います。
 ×高速道路の無料化
    高速道路は通行料を取って、借金返済に回すべきです。
    (車に関する追記)
    今、エコカー減税と言う名の車メーカー救済をやっていますが、それも
    辞めるべきです。
    新しい道路建設をどれだけ抑えられるかも民主党に望まれていると
    思います。