「武器輸出三原則緩和」に反対 :2011.12.27
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 野田内閣は武器輸出三原則の緩和を正式に決め、官房長官談話として発表した。
 (文末に首相官邸ホームページから転記)

 文面を読むと、平和貢献・国際協力、国際共同開発・生産に関する案件は輸出可能に
 し、前提として、日本の事前同意のない目的外使用や第三国移転をしないことを
 相手国と取り決めることとしている。

 では、逆に平和貢献・国際協力に関係しない防衛装備とは何を指すのだろう。自衛隊が
 持つ装備で平和貢献にも国際協力にも関係しない装備があるとは思えない。
 ということは、つまりは全ての防衛装備が対象となっているということだ。
 また、事前同意のない目的外使用を認めないとは、目的に合った使用の場合は
 日本の同意は不要ということだ。相手国が平和のための戦いだと言えば目的内になる。
 第三国移転は当面は厳格に行おうとするだろうが、相手国の政変等で相手国が
 実質的に第三国のような立場に変わることもありうる。何年も先のことはわからない。
 つまり、前提条件も大した障壁にはならない。
 結局、輸出の制限はあまりないと考えるべきだ。

 次に、輸出する狙いは何と書かれているか。
 「国際共同開発・生産に参加することで、装備品の高性能化を実現しつつ、コスト
  の高騰に対応することが先進諸国で主流になっている」
 「防衛装備品等の国際共同開発・生産を進めていくことで、最新の防衛技術の獲得等を
  通じ、我が国防衛産業の生産・技術基盤を維持・高度化するとともに、コストの削減を
  図っていくべきである。」
 言い換えれば、国際共同開発による技術獲得によって防衛産業の技術基盤を強化する
 とともに、輸出によって生産量を確保し、防衛産業の生産基盤も強化する、ということになる。
 
 武器の輸出の制限が事実上なくなると、日本製の武器の輸出は大きく伸びるだろう。
 そして戦争で使用され、メイドインジャパンの武器によって人の命が失われる。
 1945年の敗戦後、日本は戦争をせず、戦争によって命を奪うことがなかった。世界
 最大級の平和貢献をしてきたと言え、誇るべきことだ。
 にもかかわらず、これからは武器輸出で人の命を奪うことになる。日本の平和主義は実態を
 失い、「平和貢献」は「戦争」と同義にしか使えない言葉に堕ちてしまう。
 
 産業のため、お金のためなら他国の人の命など知ったことではないと言わんばかりの
 政策だ。
 もしかしたら、原発と同じように、政府が主体となって武器を海外へ売り歩くつもりなの
 かもしれない。
 
 腹立たしいことに、こんな談話を発表しておきながら、最後にこんな言葉を載せている。
 「もとより、武器輸出三原則等については、国際紛争等を助長することを回避する
  という平和国家としての基本理念に基づくものであり、上記以外の輸出については、
  引き続きこれに基づき慎重に対処する。」
 上記以外の輸出とはいったい何を指しているのか。まだ武器輸出三原則を口にするとは
 ごまかしを続けようという発想だ。

 この決定は早く改めなくてはいけない。防衛産業が輸出を伸ばしだしたら止められなく
 なってしまう。
 消費税に反対する民主党議員は多数いるようだ。けれど、武器輸出三原則緩和に反対する
 議員はどのくらいいるのだろうか。反対すべきことを間違えている。




「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての内閣官房長官談話
                          平成二十三年十二月二十七日

政府は、「平成二十三年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成二十二年十二月十七日閣
議決定。以下「新大綱」という。)を踏まえ、防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に
対する方策について慎重に検討を重ねた結果、次の結論に達し、本日の安全保障会議に
おける審議を経て閣議において報告を行った。今後、防衛装備品等の海外への移転につ
いては、以下の基準によることとする。

一. 政府は、これまで武器等の輸出については武器輸出三原則等によって慎重に対処
してきたところである。

二. 他方、これまでも、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則
等のよって立つ平和国家としての基本理念を堅持しつつ、我が国が行う国際平和協力、
国際緊急援助、人道支援、国際テロ・海賊問題への対処といった平和への貢献や国際
的な協力(以下「平和貢献・国際協力」という。)、弾道ミサイル防衛(BMD)に関
する日米共同開発等の案件については、内閣官房長官談話の発出等により、武器輸出
三原則等によらないこととする措置(以下「例外化措置」という。)を個別に講じてき
た。

三. 新大綱においては、近年の防衛装備品をめぐる国際的な環境変化について、「平
和への貢献や国際的な協力において、自衛隊が携行する重機等の装備品の活用や被災
国等への装備品の供与を通じて、より効果的な協力ができる機会が増加している。ま
た、国際共同開発・生産に参加することで、装備品の高性能化を実現しつつ、コスト
の高騰に対応することが先進諸国で主流になっている。
」としており、政府は、こう
した認識の下、平和国家としての基本理念を堅持しつつこのような大きな変化に対応
するための方策について検討を行ってきた。

四. 今日の国際社会においては、国際平和協力、国際緊急援助、人道支援、国際テロ・
海賊問題への対処等を効果的に行うことが各国に求められており、我が国は、平和国
家として、国際紛争等を助長することを回避するとの基本理念を堅持しつつ、こうし
た平和貢献・国際協力への取組に、より積極的・効果的に取り組んでいく必要がある。
同時に、国際社会の平和と安定を損なうおそれがある防衛装備品等の不正な流通及
び拡散を防止するため、途上国等の輸出管理能力の強化に向けた支援などにも積極的
に取り組んでいくべきである。
また、我が国は、これまで米国との間で安全保障に資する防衛装備品等の共同研
究・開発を行ってきたところであるが、国際社会が大きく変化しつつある中で、我が
国の平和と安全や国際的な安全保障を確保していくためには、米国との連携を一層強
化するとともに、我が国と安全保障面で協力関係にある米国以外の諸国とも連携して
いく必要があり、これらの国との間で防衛装備品等の国際共同開発・生産を進めてい
くことで、最新の防衛技術の獲得等を通じ、我が国防衛産業の生産・技術基盤を維持・
高度化するとともに、コストの削減を図っていくべきである。

五. こうした観点から、政府としては、防衛装備品等の海外への移転については、平
和貢献・国際協力に伴う案件及び我が国の安全保障に資する防衛装備品等の国際共同
開発・生産に関する案件は、従来個別に行ってきた例外化措置における考え方を踏ま
え、包括的に例外化措置を講じることとし、今後は、次の基準により処理するものと
する。
(1)平和貢献・国際協力に伴う案件については、防衛装備品等の海外への移転を可能
とする
こととし、その際、相手国政府への防衛装備品等の供与は、我が国政府と相
手国政府との間で取り決める枠組みにおいて、我が国政府による事前同意なく、@
当該防衛装備品等が当該枠組みで定められた事業の実施以外の目的に使用される
こと(以下「目的外使用」という。
)及びA当該防衛装備品等が第三国に移転され
ること(以下「第三国移転」という。)がないことが担保されるなど厳格な管理が
行われることを前提として行うこととする。
(2)我が国の安全保障に資する防衛装備品等の国際共同開発・生産に関する案件につ
いては
、我が国との間で安全保障面での協力関係がありその国との共同開発・生産
が我が国の安全保障に資する場合に実施することとし、当該案件への参加国による
目的外使用や第三国移転について我が国政府による事前同意を義務付けるなど厳
格な管理が行われることを前提として、防衛装備品等の海外への移転を可能とする
こととする。なお、我が国政府による事前同意は、当該移転が我が国の安全保障に
資する場合や国際の平和及び安定に資する場合又は国際共同開発・生産における我
が国の貢献が相対的に小さい場合であって、かつ、当該第三国が更なる移転を防ぐ
ための十分な制度を有している場合でない限り、付与しないこととする。
(3)もとより、武器輸出三原則等については、国際紛争等を助長することを回避する
という平和国家としての基本理念に基づくものであり、上記以外の輸出については、
引き続きこれに基づき慎重に対処する。