北朝鮮核実験 :2006.10.15
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10月9日、北朝鮮が地下核実験を実施したと発表した。実験は失敗だったという見方が
有力だが、核実験を実施したということで核保有を実証したことになる。日本に近い国で
あり国交を結べない状態にある北朝鮮が核を保有し、ミサイルへの搭載を目指している
ことは、日本にとって大きな不安要素になることは間違いない。
14日に国連安全保障理事会で北朝鮮への制裁決議が全会一致で採択された。私は今
まで制裁はあまり好ましくないと思っていたが、核実験に踏み切ったことで止むを得ない
状況になったと思う。ただし、どこまで追い込むべきかは慎重でないといけない。すでに
指摘されていることだが、日本が65年前に追い込まれてアメリカとの戦争に進んでいった
ような事態も考えられる。当然、外交交渉も行われているはずなので、そちらに期待したい。
その際に重要なポイントになるのが、核実験前の10月4日に北朝鮮が核実験を予告した
声明の内容である。この中には、いくつかのことが書かれている。
@「米国の極端な核戦争の脅しと制裁圧力は、われわれに相応の防御措置として核抑止
力確保に必要な行程である核実験を行わざるをえなくした」
A「われわれは絶対に核兵器を先に使用しない」
B最終目標は「一方的な武装解除ではなく、米朝敵対関係を清算し、朝鮮半島からすべて
の核脅威を取り除く非核化だ」
AとBを見ると、北朝鮮を一つの国として尊重し、核保有国と認めて対等な交渉をしろ、という
要求をしているようにも見える。この部分を交渉の手がかりとしてあえて表明したような気が
している。
それから、もう1点書いておきたい。包括的核実験禁止条約(CTBT)が1996年国連総会で
採択されたが、未発効の状態にある。未発効なのは、’一定レベル以上の原子力関連施設
を有する44ヶ国の批准’を本条約発効の条件にしているからであり、アメリカ、中国が批准
していない。安全保障理事会常任理事国である両国が核実験禁止条約に批准していない
状態で、他国が核実験したことを理由に制裁するというのはどう考えてもおかしい。北朝鮮
の核実験批判とともに、包括的核実験禁止条約が発効できない停滞状態を動かすことが
日本外交に求められていることだと思う。