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No.3 耐力壁と接合金物について

2002年8月


5-2 面材耐力壁を構成する接合金物について

先の阪神淡路大地震を契機に構造用合板と呼ばれるボード(面材)が多く使われるようになった。

未だにその名称をコンパネと呼ぶ人がいるがこれは大変な間違いである。

コンパネはコンクリートの型枠を作るための合板であり、建築の構造材ではないし、建築に使った場合の性能保証もない。

構造用合板はJASにその等級と性能が定められていて、JASによって認定された工場でのみ生産されている。

見かけは同じでもコンパネと構造用合板では性能が異なっている。

この構造用合板のような面材は筋かいのような抵抗機構の方向性がないため、引張りや圧縮といった左右からの力を均一な力で受け止めてくれるので安定した性能が得られるのである。

面材耐力壁で耐震・耐風性能を左右するもっとも重要なポイントは釘である。

面材は適切な釘が適切な端距離と間隔で打たれていて初めて安定した抵抗力を発揮するのであり、いいかげんな釘や打ち込む材の端ぎりぎりに打ったり、所定の間隔以上で荒い間隔で打ったりするようでは所定の耐力は発揮されない。

近年ネイラーと呼ばれる釘打ち機が広く使用されているが、釘打ち機で使われている釘の中には標準の釘の太さと比べて非常に細いものがある。



 

  左が細い釘(ロール状)で右がN50     2×4用のCN50釘(グリーンコーティング)


恐らく造作用の釘だと思われるが、このような釘は正しい釘に比べて1/2〜1/3しか耐力が出ないことがあり、注意をする必要がある。

また、機械の打ち込み圧力が高いために釘が面材にめり込んでしまうと耐力は半減してしまう。




釘が構造用合板にめり込んでいる


構造用合板耐力壁の場合、国内で一般的に認められている仕様には大きくわけて、大壁仕様と真壁受材仕様、真壁貫仕様の3つがある。

構造用合板耐力壁が所定の耐力を発揮するには最低限これらの仕様で定められている金物を用いることが必要である。






例として、構造用合板二級厚さ9mmの大壁仕様では、釘N50をピッチ150mmで四周と受け材に打ち込むことが必要である。

端距離は母材と面材それぞれ20mm以上ずつで、面材のかかりしろとして計40mm以上をとることが望ましい。

柱脚部には適切な金物を設置し、浮き上がり力に耐えられるようにする必要がある。



5-3 その他の耐力壁要素と接合金物について

土塗り壁の場合、壁体の四周を囲む軸材が外れないで平行四辺形に変形して内部の土壁を押しつぶそうとすることで耐力が発揮される。



土壁のせん断変形


浮き上がりで、柱と土台がはずれてしまわないように土壁でも柱脚部を補強したほうがよいと思われる。

木ずり壁でも外壁などでモルタル仕上げをする場合にはモルタル仕上げが面材的な効果を発揮して水平力が作用した場合に浮き上がり力が生じる可能性があるので、注意をしたほうがいいかもしれない。



5-4 2つの耐力壁要素を組み合わせて壁倍率を足し合わせる場合の接合金物

基準法では5倍までの範囲で壁倍率の足しあわせが認められている。

しかし、単純に合板2枚を壁の両側に打ち付ければ耐力が2倍になるかというとそうではない。

耐力壁が2倍の水平力に耐えるには、柱に力のつりあいによって生じる2倍の柱引き抜き力に耐えなければならない。

したがって柱脚の接合金物も2倍の力に耐えるものが必要になる。

この条件を満たした場合にのみ耐力は2倍になるのである。

土台に打ち付けるタイプの金物では、壁倍率5倍や4倍、場合によっては3.5倍程度でも、土台の割裂きに対する耐力、釘の耐力あるいは金物の引張り耐力を超える引き抜き力が生じて土台が割れるか釘が抜けるか金物が切断するかしてしまう。

こうなると、耐力壁の耐力は急激に低下して非常に危険な状態になる。


金物による土台の割裂


したがって、壁倍率が高い(=高耐力)の耐力壁には、柱脚部に大きい引き抜き力に耐えることのできる補強金物を使わなければならない。

高倍率耐力壁の補強金物にホールダウン金物が指定されていたのはこのためである。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003