Mクリニック新築工事

2009年 6月
意匠設計D.I.G Architects
構造設計木構造建築研究所 田原 (担当:村田)
施工者 株式会社 大村技建

この建築は本来ならば鉄骨でほとんどの人は考えるであろうが、日本の若手建築家の中でもトップクラスのD.I.G Architectsの吉村さん夫妻がコンセプトからいろいろと考えられ、木造として出来上がったものである。

外壁3面開口となるこのような空間デザインの木造は今まであまり考えられなかったデザインである。こういった大胆な構造は施工者の技術力がなければ出来ないもので、今回施工を担当した大村技建の高い技術力があり出来上がったものである。


外壁の3方向が全て斜めの壁と斜めのガラスカーテンウォールで構成されており、建物の外周3面には仕様規定としての耐力壁は配置していない。


入り口近くのホールにある水平面格子は、2階床レベルで設置されており、前面の外壁部分の斜め垂壁の水平力を内部耐力壁に伝達する、水平力の伝達ブリッヂである。

また、吹き抜け高さが6mの高さになるので、台風等の風圧時に対して外壁に作用する風圧を処理する役目も兼ねている。


写真の通り、非常に開放的な空間となっており、木造とは思われない雰囲気である。


建物の南東側にある1番大きく張り出している庇は実質3.5m以上の持ち出しを、むく材で持ち出しており、その先端は5cm程度である。

また、元端においても6寸程度であり、非常に薄くするため、また、片持ち材を天秤にしないて壁から直接持ち出すように構造的に工夫しており、この庇部分に職人が2,3人乗った状態でも、たわみはほとんど無かった。


特に東側部分では、幾何学的な形で取り合っており、構造の納まりと同様に仕上げの納まりも難易度があり、普通の人だったら見逃すところだが、建築の関係者が見ればそのディテールのすごさがわかると思われる。

このような質の高い計画に対して参加できたことは光栄であり、建築家とのコラボレーションが構造設計の質も高めてくれるよい事例だと思われる。


 ©Tahara Architect & Associates, 2010