No.41 天極堂

2005年 6月
ならまちの一角にある奈良町屋建築(築約100年)の改修 木造軸組在来工法
意匠設計勝村建築設計事務所
構造設計木構造建築研究所 田原(担当: 中尾)
施工者 双和建設有限会社

この建物は、ならまちの街道に面している半ば倒壊しかかっていた町屋を改修したものである。

一度、ほぼ骨組の状態にして、屋根・壁を作り直している。幸いにして、両側を建物にはさまれていた為か、柱・梁等の損傷が限られていて、かなりの部分を再利用することができている。


間口3間(5.6m)の建物であるが、町屋であるので、間口方向は全面開口、内部も構造的に有効な耐力要素が無い様な建物であった。

そのような建物が真直ぐ建っているわけもなく、改修前は大きく隣の家へ傾ぎ、隣家がなければ倒壊しているような状態であった。

屋根は土葺瓦で、老朽化が進み野地板の損傷も激しかったため、屋根構面の補強も兼ねて構造用合板の野地板に全て取り替えられた。


耐力壁は奥行方向を、根継ぎを行った柱の補強を兼ねて構造用合板(ラスカット)真壁貼としている。

間口方向は、構造用合板に加えて、面格子耐力壁を設けることで耐力を確保した。面格子耐力壁を採用し、小屋裏に達するように配置し、屋根の地震力を基礎まで伝達させている。

面格子壁は間口のほぼ中央に設けられているが、光を通すという性質がうまく生かされ、店内の空間にうまく溶け込んでいる。


なお、耐震性能においては、本建設地における直下型の地震で最も影響を与えると想定されている「奈良盆地東縁断層帯」(奈良市近郊では最大で震度6強〜7程度が想定されている)を考慮し、想定地震に対して倒壊はしない性能を有したものとした。

 ©Tahara Architect & Associates, 2005