No.38 美山木の家

2004年12月
京都府美山町におけるモデル住宅。主要構造材に「ともいきの杉」を使用している。
意匠設計福岩建築設計事務所
構造設計木構造建築研究所 田原(担当: 村田)
施工者 市川工務店

美山町より「地元の美山町の生産地・製材所・工務店が顔の見える関係で、地震災害に対して安全で、自然素材(杉)を活かし、環境に配慮したモデル住宅を」という目的で、「ともいきの杉」が採用され、水上がコーディネーターを担当し、建てられた木造住宅である。

建設地である美山町は雪深い地域であり、京都府の指定積雪量は1.5mとされており、450kg/uの屋根積雪荷重を加算して、構造設計する必要があった。

この地域では、特に積雪荷重が大きいため、美山町内の家造りには古くから杉ではなく、地松(赤松)が使用されおり、今回の小屋組み架構に、杉を梁として使用する事は、この地域の大工にとって皆無であった。



地松(赤松)に比べて弱いとされる杉を、木質構造における許容応力度設計により構造計算し、建物全体の力の流れを把握して適材適所に使用すれば、安全性にまったく問題はないことを、美山町の大工職人に理解してもらう必要があった。

「ともいきの杉」では、構造材の梁としての性能を公的機関(京都林業試験場等)により実験し、検証した上で十分な性能を有している事を非破壊及び破壊検査で確認している。

なお、この小屋梁に使用した「ともいきの杉」の含水率は、20%台であり、葉枯らし乾燥100日以上、桟積み乾燥200日以上行なっており、ほとんど中心部まで同様の含水率になっていたが、乾燥による大きな割れはなく、人工乾燥のような化石燃料を使用していない、環境にやさしい材料であると言える。

(このように1年以上も乾燥に時間を費やした材料は、生産者や製材所に対し、多大なコスト負担をしうることとなり、それが出来ない生産者や製材所の多くは、人工乾燥により短期間での現金化をしているのが実態であると思う。)

また、「地産地消」というキーワードで環境に配慮する事が叫ばれる中、産地から建設地までの距離が数キロという桁違いの近さにあり、ウッドマイレージ(木材の産地と消費地までの距離を表し、木材の量と輸送距離を乗じたもの)における最高のレベルに値する事例とも言えるものである。



本来ならば、このような大スパン(約5.5m)は、地松で末口直径45cm以上の大径木を利用しなければ不可能であると考えられ、現在ではこの美山町においても、松枯れ等により地松が入手しにくくなっている。

そのため、美山町内の大工職人達の考えでは、このような3間という大スパンでは、集成材の梁(12cm×45cm程度)または鉄骨で飛ばすことが常識とされていた。



今回の小屋組み架構は、「ともいきの杉」で全て構成されており、樹齢60年生の3番玉および4番玉と、それ以上の先端材を利用しており、メインフレームの合掌梁の断面は、12cm×18cmで構成し、上部にスラスト処理のタイバーを持つ3寸角の水平材が金物によって接合されている。

詳細は割愛するが、杉の構造特性を活かすことのできる木質構造設計者と意匠設計者がコレボレートすることにより、今まで不安で出来にくいと思われていた架構が可能となり、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の構造設計者ではない木組み架構による空間が可能となった例と言える。

最後に、今回の工事を問題なく施工していただいた市川工務店の持つ高い大工技術力により出来上がったと言える面があり、その完成度を是非現地に訪れて見ていただきたいと思う。

なお、見学における連絡先は美山木の家のホームページにて掲載されております。→こちら


 ©Tahara Architect & Associates, 2005