No.22 南町自治会館

2002年10月
軸組工法による木造自治会館。主要構造材に「ともいきの杉」を使用している。
意匠設計中澤建築設計事務所
構造設計木構造建築研究所 田原(担当: 中尾)
施工者 株式会社スエ建設
自治会館全景 ©2002,Nakazawa Hiroshi
外観。建物の細長さがわかる。

町の自治会館。プラン的にはシンプルだが、間口が狭く奥行が長い敷地のため、建物が奥行方向に非常に細長くなった。デザイン的にも苦労したようである。

この建物は平面が細長い上に、自治会館という用途から部屋は大きい。間口4.5mに対して耐力壁と耐力壁の間隔は最大で10m。これは、一般的な木造軸組工法で設計可能な範囲の限界に近い。


構造設計上は、屋根・床の地震力を壁まで伝達する床・屋根を合板で固めて建物の一体性を確保するとともに、補強金物等により、各部も十分に補強して、耐力壁への力の伝達が行われるように配慮した。

構造設計としては、許容応力度設計法によって安全を確認している。

基本的に地域住民の災害時のシェルターとなる耐震性能(Co=0.30)を確保した。



材料
材料には「ともいきの杉」を使用。天然乾燥材は発色が美しい。
登梁加工
登梁仮組
登り梁には相欠き・渡りあご架構が用いた。
大工さんが丁寧に加工してくれた。
登り梁の仮組みだが、極力、木組だけの構造として応力処理している。

2階の登り梁
2階集会室の登梁。4寸(120mm)角材を組み合わせて構成した。
屋根見上げ2
完成後の小屋組見上げ。小屋束の下端は長ホゾで下弦材と鼻栓で接合されている。

もう一つの特徴は2階の小屋組あらわし部分である。この部分は化粧となるので当然「ともいきの杉」を利用している。ともいきの杉の良さは天然乾燥の自然さであるといえる。そのおかげで見栄え的にも構造的にも満足できる材料となっていると思っている。

この小屋組のトラスは当事務所が構造デザインを提案し採用された架構で、部材断面は4寸角をメインに使用し、和風トラスとでも言うべきシンプルなトラス架構となった。

但し、単純にトラスとしてしまうと接合部がうまく納まらないので、下弦材の交点を相欠き接合として、耐力的にもある程度曲げも負担出来るように考えている。

このトラスに対して、束材を挟み込むようにして転び止め材を直角方向に流した。この材は照明の配線スペースとしても利用されている。

小屋組の架構は意匠ともうまくかみ合い、繰り返しの構成がきれいな架構となった。



梁継手の補強
屋根面の補強
梁に引張力がかかるので梁継手を補強している。屋根面は化粧野地板となっている。したから見れば普通の野地板だが、実際には板同士はダボで一体にパネル化されていて、下手な合板貼りよりも強い。

屋根面は化粧野地板となっていて部屋から見上げれば普通の野地板だが、実際には板同士はダボで一体にパネル化されている。
野地板せん断ダボ  
 ©Tahara Architect & Associates, 2003