和歌山市の感應寺

2015年05月
移築後107年の寺院の本堂の耐震補強
構造設計木構造建築研究所 田原(担当: 中尾)
施工者 株式会社 駒場工務店

改修前とほとんど変わらない本堂正面の様子

建設場所:和歌山県和歌山市鷹匠町
規模:木造伝統構法平屋建
延床面積:164m2(改修対象部分)

本寺は元和7年(1621)、紀州徳川家家祖 徳川頼宣 の紀州入りの際に、日蓮宗の熱心な信者だった母養珠院が駿府にあった寺を移転したものです。

山号は、常住山。日蓮の分骨を祀ることから南海身延と呼ばれています。静岡市葵区の感應寺、鳥取県米子市の感應寺とならび日本法華三感應寺の一つとされています。

今回耐震補強を行った本堂は明治40年(1907)ごろに移築再建されてたものです。


本耐震補強計画・工事は、住職、檀家総代及び関係者の方々から「耐震改修」の依頼を駒場工務店に相談され、その耐震診断・構造改修設計を「木構造建築研究所 田原」に相談され受託した事例です。


和歌山市では「中央構造線断層帯」の地震や南海トラフで起きる大地震では「震度6強」から場合によっては「震度7」が想定されています。その地震対策として本堂の耐震化を計画され「耐震判定委員会」で審査を受け実現したものです。

今回の耐震化工事は檀家の皆様の多くの寄進、寄付等の浄財で出来たもので「計画」から4年の歳月を掛けて実現いたしました。


お寺の耐震化では多額の費用が掛かると思われていますが、構造的に工夫をする事により「かなり安く耐震化」が出来き、お寺の関係者の皆様が見積もりや想定されていたコストを大幅に下回る金額で完成した良い事例だと言えます。

なお、今回の工事では屋根瓦には手をつけておらず、既存の土葺き瓦屋根のままとなっています。更に金属板葺き屋根に改修すればより高い耐震性能が確保出来ますので「将来の檀家の皆様の避難所」にもなる様な性能になります。

また、耐震要素を取り換え可能なシステムにしており、将来の改修工事が簡単に出来る様にしていますので100年又はそれ以上先をも見据えたお寺の本堂の耐震化工事で有ると言えます。



 ©Tahara Architect & Associates, 2016