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木造住宅の耐震性能において
1981年の新耐震は関係ない(その3)


その1、その2で述べたが、1981年以前の住宅が倒壊の危険性が高く、1981年以後の木造住宅の安全性が高いので、倒壊の可能性が少ないとマスコミ等で地震学者等がコメントしているのがおかしいと言ったが、今度は国や地方自治体の関係者に言いたい。

行政等は、1981年以前の木造住宅の耐震化に補助金等を出す計画をしているが、1981年以後の木造住宅にも大きな問題が残っていることを理解する必要がある。

1988年から建設可能になった木造三階建ての住宅においても、偏心率の規定や水平構面の規定等がなく、あいまいな基準でできており、「阪神・淡路大震災」においても少なからず倒壊事例があった。

こういった木造住宅等における安全性(倒壊するかしないか等の耐震的な評価)等は、木造住宅の耐震構造を専門とする研究者や技術者でなければ、詳しいことは分からないはずなのに、その専門家でもない人たちがいい加減なことを言っているのが現状であると思われる。

今まで木造住宅における耐震構造をきちんと研究していた人は、耐震構造の研究者のうち1%程度であり、残りの99%は鉄骨造や鉄筋コンクリート造の耐震構造の研究者であった。

その木造以外の耐震構造の研究者は大手ゼネコン等からの委託研究による共同研究や、研究費が多くあり、また大規模な建築(超高層やドーム)の構造技術でマスコミ等に取り上げられ、「阪神・淡路大震災」以前までは花形研究であったと言える。

その当時の木造住宅における耐震構造の研究者は、ほんとに悔しかったであったろうと思うが、その地道な研究のおかげで現在があるといえ、その第一人者と言えるべき木質構造研究の大御所であった、杉山英男東京大学名誉教授が2月に亡くなられた。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造の構造研究が主流であった学会や社会に対し苦言を呈し、木質構造の先駆者として頑張ってこられて、日本建築学会の木質構造シンポジウムのときの杉山先生の姿が思い出される。

その当時震災直後の建築学会のシンポジウムの会場で「木造二階建て住宅において、構造的な検討の義務付けがないため、簡便法である壁量計算だけで行っている現状では、また同じ被害が繰り返される恐れがあり、構造計算の義務付けをするべきだ」とコメントしたとき、先生より「君らが生まれる前から研究を重ねているんだ。そのようなことは十分承知している。」と言われたことがある。

現在の木質構造においては「阪神淡路大震災」以後、中堅や若手の研究者数人で飛躍的に木造住宅の耐震研究が進み、その成果が「許容応力度設計法」や「限界耐力設計法」にまとまって出版された。

故杉山先生も「これで安心して逝ける」と思われていたのではなかろうか。

この様な事を知らない地震学者等は、安易に木造住宅の耐震性についてコメントすべきではないと思う。

もしするならば、上記のような木質構造の中心となる学者と一緒にコメントすべきであると思われるのだが・・・


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©Tahara Architect & Associates, 2005