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内部告発者保護法について


公益通報者保護法が、6月14日、参議院本会議で可決・成立した。この法は2年後の施行となっているが,その内容は下記の通りである。


1.本法の立法趣旨が通報者の利益の保護を拡充・強化しようとするものであること、及び本法による保護対象に含まれない通報については従来どおり一般法理が適用されるものであることを、労働者、事業者等に周知徹底すること。


2.他人の正当な利益等の尊重の規定が公益通報をする労働者を萎縮させることのないよう、十分留意すること。


3.公益通報者の氏名等個人情報の漏えいが、公益通報者に対する不利益な取扱いにつながるおそれがあることの重大性にかんがみ、公益通報を受けた者が、公益通報者の個人情報の保護に万全を期するよう措置すること。


4.事業者及び行政機関において、通報をしようとする者が事前に相談できる窓口が整備されるよう促進すること。また、公益通報を受けた事業者及び行政機関が、通報対象事実についての調査結果及び是正措置等を公益通報者に通知するよう、公益通報受付体制の整備を図ること。


5.対象法律を定める政令の制定に際しては、当該法令違反が国民の生命、身体、財産等に及ぼす被害の大きさ等を精査するとともに、本委員会における審議及びパブリックコメントの実施により寄せられた国民の意見を踏まえ、これを適切に反映させること。


6.附則第2条の規定に基づく本法の見直しは、通報者の範囲、通報対象事実の範囲、外部通報の要件及び外部通報先の範囲の再検討を含めて行うこと。


これは、各種のメディアで取り上げられた、多くの「企業不祥事」が「内部告発」によって明らかになってきたためで、某原子力発電所の「記録改ざん」、NハムやY印の「偽装」、MB自動車の「リコ−ル隠し」、等があり、その他にも数多くの不正を挙げることができる。

このため、「内部告発」を積極的に支持しそれを促すような「流れ」が高まってきて、内部告発者を保護する法律の制定(公益通報者保護制度の導入)を求める動き等が有り出来上がったものであると思われる。

このような法律が制定されているのは、内部告発者が「悲惨な」状況に置かれることになるからであり、内部告発者に対する評価は、正義のヒ−ロ−か、裏切り者か、の2つに分かれるようだ。

内部告発保護法が機能するためには技術者倫理が確立していることが必要であるが、我が国では大学教育等において技術者倫理を教えているとは言えず、また建築士の資格試験においても技術者倫理は出題されていないのである。

そのため建築士の中には名義貸しの人や、悪徳不動産業と言えるような業者と一緒になって法すれすれのことをする建築士もいてるのである。

しかし、「いい格好しても、食べていけなければ技術者倫理も何もないだろう。」と、平気な顔でまくしたてる建築士も存在するのである。

職業倫理の重要性を認識しているとは言っていても、本当の所は建築士としての技術者倫理よりも「デザイン論」や「エゴ」、「より金を稼ぎたい論」等で大半の建築士は占められていると思われる。

つまり、日本の建築業界はその程度の低いレベルの倫理感で構成されている。

現代社会では分業化が非常に進み、個人個人は生活に必要な様々な手段の多くの部分を「専門家」(ここでは建築士を意味する)に委ねて暮らしている。

一般市民の人は家を建てようとした場合建築に関する技術を身に付けてなく、建築士より提出される設計図書等は完全には理解できないため、専門家(建築士)に委ねざるをえないので、人々は専門家を信用せざるをえないのである。

建築士の職業倫理は普遍倫理とほとんど変わらず、 技術倫理などと改めて書き記すほどのものではないように思われるかもしれないが、不正や技術的欠陥は建築士だからこそ発見できるものである。それを発見したときどう振舞うべきかが、建築士としての技術者倫理にとって一番重要なことであると思われる。

だが、建築業界ではほどんどと言って良いぐらい、内部告発は行える可能性はない。

これは建築士の総数が適正な仕事量をはるかに上回る人数となっており、中小の設計業者や施工業者はその事により淘汰されるかもしれないが、何と言ってもこの業界は会社や建築士が過剰で年間に内部告発が数社程度行われたとしても、数十年以上経たなければ自浄作用の効果は出ないものと思われる。

それ程ひどい現状が建築業界なのだと思われる。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2004