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国産材(杉)を利用するに当たってのヤング係数とは(その2)



現在、わが国で生産される国産材(杉)は、各地方によりその特徴・特性等は若干異なり、特に部材断面を決定する要因の一つである「ヤング係数」は、各地方・各流域・各山・山の谷側・中間側・尾根側・東西南北面等、色々な場所により違いがあり、そのばらつきは、ヤング係数で、3 kN/mm2程度から10kN/mm2程度まで最大3倍程度のばらつきがある。

そのばらつきの大きい杉を利用して横架材に利用するための方法として、一つの目安となるものが、工学的な意味を持つ「ヤング係数」と呼ばれるものである。

その「ヤング係数」とは、建築用の構造部材として利用する場合、その部材に応力をかけて、どの程度変形し、破壊までの荷重変形関係を数値化したものであり、一般的に試験体数の平均値より安全率を考慮してかなり低い値で決められているが、基準としている許容応力度等の性能を下回る杉も少なからずある。

そこで、そのような基準値である「6.86 kN/mm2」以下の低ヤング係数の杉を利用する事は、一般の木造関係者は、主要構造材に利用することをほとんど考えておらず、また、木造を専門とする構造技術者が、そのような材料で安全性能を考慮した木造住宅を設計することはない。

さらには、大工職人等も「杉はやわらかいから、横架材にはほとんど利用しない」とか、「昔利用していた地松がほとんどなく、現在は色々と施主からのクレームを考え、杉を利用しないで、集成材にするよ」といった、話を聞くことがある。

これらの事から、杉は弱いものと決め付け、「無理してそのような材料を使わないで、楽に(米松や集成材等を利用し)木造住宅に取り組みたい」というのが多数であると思われる。

しかし、当事務所が一緒に取り組んでいる「ともいきの杉」グループでは、そのような低ヤング係数で、ほとんどの人が利用しないで捨てているような「杉」を構造用材料として利用している。

このような事が出来るのも、本当に日本の森林資源を何とか有効に活用したいと思う気持ちで、取り組んでいることと、鉄やコンクリートの建築のように、環境負荷の大きな影響を与える建築でない木造に対し、構造技術を活かす事に使命を感じて行っているからだといえる。

また、そのための杉利用の構造技術を身に付けるため、かなりの長期にわたり、どれだけ真剣に取り組んだかであり、書物等の勉強だけで見につく技術ではない。

つまり、コンピューター等による解析技術でなく、植林から育林さらには伐採から製材まで、現場で見て、体験・体感し、簡易実験等を自身で工夫し、杉を料理する技術を身に付けなければ、従来のままの利用方法しか出来ないであろう。

当事務所では、これからも杉を活かす新たな技術を発表していきたいと思っている。

ほとんどの木造関係者が、「杉の出番がないので、何とかするべきだ」と叫ぶだけで、本当に山側が林業で生活でき、山が活性化する方法を出さないで、批評家もどきの言動しか出来ない現状を何とかするために・・・・



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 ©Tahara Architect & Associates, 2004