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国産材(杉)を利用するに当たってのヤング係数とは(その1)



杉を使った木造住宅の家造りが、日本各地で地域の杉を生かした取り組みとして行われている。

その杉も日本各地に生産地域があり、歴史的に古くから行われていた地域と、戦後の植林による新生産地域(ほとんどの都道府県にこのような山が多いのだが)があり、古くから杉の産地としてして知られていた地域では、100年以上の歴史があり、それらの地域は、日本全国見渡しても10の地域程度であり、ほとんどの所が植林後60年前後である。

このような新興生産地域の杉は、広葉樹の山を切り、新たに植林されたのであり、専門ではないので詳しくは判らないが、推測すると、土地の養分や植林後の早期生育環境のため、あまり密植をせず、生育させたため、年輪も荒く、また、枝打ち等の技術も有名産地ほどの技術がなかったため、死節や抜節等の含まれる木材となり、それが結果的に有名産地の杉よりも「低ヤング」となり、建築基準法(実際は農林水産省告示第143号の数値)で定めている「6.86kN/mm2」をも満たしていない杉が少なからず含まれて生産されている。

また、有名産地の杉は、育林技術等に長けており、そのため、新興生産地以上のヤング係数を有し、告示のヤング係数以上あることを示し、新興生産地域との差別化を図るべく、目視等級でなく、機械計測によるヤング係数を刻印することにより、平均ヤング7.0〜8.0kN/mm2程度あると詠い、市場に売り込んでいる所もある。

一方、新興生産地側では、有名産地側の杉に原木の時点で競合することを避け、エンジニアリングウッド(集成材)化し、付加価値を高め、市場に売込みを図っている。

しかし、どちらも外材(輸入材)の価格と比べて高く、デフレの現在の市場では、なかなか建築主や施工者等の購入者から見て、「国産材の良さは判るのだが、少しでも安く購入したい。」というのが本音であり、流通において、杉が林業家の収益となっていることはない。

つまり、まともに国産材をきちんとした形で市場に出そうとした場合は、原木の伐採後の再植林等の管理費等も含め、原木でm3当たり3万円程度でないと、山側は成り立たず、そこから順に製材・乾燥等の流通過程でさらに加算され、最終的に工務店が購入する価格は、外材価格の50%以上UPすることになるのである。

次回、その2については、有名でない生産地域の杉で、そのような見捨てられるような間伐材や、低ヤング係数の木材を利用することについて説明したいと思う。



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 ©Tahara Architect & Associates, 2004