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木造住宅の曖昧な基礎



木造住宅における基礎について、どうも世の中、おかしな方向に向かっている気がするので、ここで役に立つかどうか判らないが、私見を少しばかり・・・・

最近、とある人より「布基礎よりベタ基礎のほうが耐震的になりますよね?」と聞かれ、「耐震という点から見た場合、全く効果がないということはないが、さほど大きな影響を与える要素ではなく、上部構造が倒壊しないような構造の方が大事なんですよ。」と、説明すると、次のように帰ってきた。

「だって、私の知り合いの建築家より、そのような説明があり、私の家の基礎はベタ基礎にしていますよ。」と、説明されさらに、地盤改良までされており、その深さは、約1m程度で、スウェーデン式サウンディング試験より、報告書で地盤改良をしたほうが良いとの文言が書いてあり、その通りしたのだという。

もしこれが、一般的な基礎に対する建築士の考えであれば、構造設計がきちんとできないので、より安全すぎるようにして、何か地盤や基礎に木造の構造体である「木材の金額」を上回るコストをつぎ込み、耐震的であると信じている人が少なからずいると思われる。

ここで、声を大にして言いたい。

「いくら地盤を改良しても、また、布基礎からベタ基礎に設計を変更して地盤や基礎の強化をしたところで、上部構造の耐震性能が不備であれば、倒壊は避けられない。」

上記の文を説明するならば、やわらかい豆腐の上に鉄板を載せ、その上に木造住宅を置いたような状態で振動を与えても、鉄板の周期での振動ではなく、やわらかい豆腐と同じ周期の振動となる。

このとき、鉄板の上の木造住宅がやわらかい豆腐と同じ周期であれば、木造住宅には、豆腐の上に直接載せているのと同じような条件になるといえる。

しかし、巷の木造住宅の基礎は、ベタ基礎と言っても、本当のベタ基礎性能を有している基礎は少なく、構造計算による安全の検討が行なわれないため、ベタ基礎スラブの配筋と、支配面積の関係から、基礎底盤の接地圧が、平屋でも持たないようなベタ基礎性能となることが、よく見られるのが現状である。

つまり、上部構造が倒壊しない性能であれば、基礎は長期的に沈下しない性能があればよいだけで、地震時等の短期的には、耐力壁等の抵抗要素が水平力を受け、せん断変形に伴い、剛体回転をしようとする時に、回転を止める「おもり」としての性能があればよいだけで、このことが判らない建築関係者が多いのが「木造住宅の関係者」であると思われる。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2004