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木造ラーメン構造における問題点



現在、わが国の建築基準法が改正され、約4年が経とうとしているが、この法律によって木造建築の可能性が広がった反面、いろんな意味での問題点が隠されているといえる。

まず、木造建築でのラーメン構造の可能性が広がったといえるが、それは「集成材」のみを対象とし、製材でのラーメン構造を認めていないのと同じである。

これにより極少数企業(集成材メーカーは日本国内で10社程度しかないと思われる)が利益を受け、圧倒的多数の国産材生産者や製材業者が利益を受けられないようになってしまっている。

現在のように不況の長引く中で、木造住宅の着工件数は低迷しており、どの企業も苦しい状態である。

しかし今回の法改正は、筆者が見る限り「川上の弱者の切り捨て(零細製材業者等の間伐とでも言うべきか?)であり、川下の強者の救済(集成材メーカーの需要を伸ばす間伐とでもいうべきか?)」でると思えて仕方がない。

なぜ建築基準法が集成材のみをラーメン構造部材として認めているのか、筆者なりに考えてみた場合、次のようなことが言える。

@ 材料強度のバラツキがなく、品質が安定している

A 含水率のバラツキがなく、全体が乾燥している

B 乾燥による割れや狂い等の伸び縮みが少ない

C 断面の寸法や材料の寸法が、設計に応じたものが入手可能である

以上のことから、構造設計者や施主にとっては理想的な木材(?)であると思われるが、本当に木材と呼べる素材であるか疑問でもある。

また、国産のスギやヒノキ等の国産材を使用した集成材が製造されているが、まだまだ欧米のパイン材等による集成材に比べ、コストの面で太刀打ちできないのが現状である。

スギ等を利用した国産の集成材製造における歩留りが悪く、それが国産材のコスト高につながっていることが、国産材が使われにくくしている原因でもあるが…

木造のラーメン構造=集成材と考えないで、国産材の製材を利用する方法を木造建築に携わるすべての人が考え、オープンな技術として公表し、使われるようにならなければならない。

クローズな技術は川下の企業に利益が行くばかりで、ますます川上側が「山に金をかけて木材を生産する気になれない」ということになり、悪循環が続くであろう。

木造のラーメン構造を通していろいろと述べたが、「日本の山のことを思う木構造技術者」として、川上側の立場での木造の可能性に力を注いで、実務にも生かしていきたいと考えている。

心ある方々と一緒に「21世紀の木構造の再構築」に役立ちたいと、心から願うものである。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003