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11月14・15日付けの各新聞記事について



14・15日付けの各新聞記事によると、まず、一番最初に目に入ったのが、住宅の手抜き工事についての監理建築士に賠償責任があると報道されていた。

この手の問題は、20世紀から言われていた事ではあるが、ここにきてやっと最高裁での判決が出たのである。

監理をしないで、監理建築士としての印を押す事は、職能放棄といえることなのだが、おそらく、10年以上の実績を持つ設計・施工等の住宅に関する業務を行なっている建築士のうちで、1/3以上は今までにこのような経験を過去にした事があると思われる。

本当に真面目に設計監理を行なっている(つもりの建築士を含む)建築士にとっては、朗報であるとともに、これからいよいよ監理という業務の重要性が、社会に認識され、施主にとってあまりにも遅すぎた最高裁の判決であったと思う。

これが、日本の住宅業界の最底辺の関係者のやっていた実態であると思われる。

建築基準法が変わり、仕様規定もさることながら、性能をどこまで担保できるか、という設計図書や、工事監理が21世紀になってやっと施主のために改革への一歩を踏み出したと思われる。

第2の新聞記事では、来島大橋の橋桁が、設計図書よりも寸法が短く、溶接で継ぎ足した、との事が発覚した。

これは、電流調査による結果で、溶接部のところで電波が乱れたり、空洞があるとの状況が判明したらしいが、この溶接では、破断しないような強度を持っているので安全性に問題はない、という反論がされていたらしいが、つまり、設計図書の仕様と違うやり方であれば、安い材料や安い工法で安全が確保できるならば、当初の設計図書は一体なんだったのだろうか?

もし、これが問題なしと言うならば、このことが前例となり、意図的な仕様変更や、工法変更が行なわれる可能性があり、安全だからと言って、設計当初の内容から安い工事費となるような変更が当たり前のように行なわれるようになり、当初の設計の意味がなくなり、そのような姑息な能力を持ち合わせているゼネコン等の金儲けの手段となる恐れがある。

契約と言う行為が意味をなさなくなり、建築や土木の信頼性が損なわれる恐れがある。

しかし、一部には、あまりにも設計図書の不備な場合や、設計変更しなければ出来ないような図面等もあり、能力の高い工務店等においては、設計者の能力不足を指摘する声も出ているのが現状である。

出来るならば、21世紀においては、能力のない施工者・設計者等は淘汰され、本当にものづくりの本質に向かって努力する人たちが、十分力を発揮できる世の中になってほしいと心から願っている。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003