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建築業界は産業界の求人調整弁?



6月になり、ほとんどの大手企業等においては求人が内定し、この時点で内定が出ていない学生は「自分の希望する職種でなくても、もうどこでもいいからとにかく就職したい」というのが本音だろうと思う。

このように現在は特にひどい状況にあり、その中でも建築関係は、景気のよいときには大量の受け皿となっていたが、バブル崩壊後の不況が長引いて求人は極端に少なくなり、この時代に就職をひかえている人たちは「生まれた時代によって就職における損や得があるのかもしれない」と今の時代を恨んでいるだろう。

特に建築関係の学科は、日本全国で高校から大学まで含めて100校、100学科以上あり、そこから毎年数万人以上の人たちが卒業していくのだが、建築専門の科目を習っている人のうち、自分の専門職を生かせる建築業界に就職できる人はおよそ半分以下であろうと思われる。

なぜこんなことになったのかといえば、まず下記の3点に原因があると思われる。

1. 平成の大不況が続き建築業界が特にその影響を受けている

2. 建築系の学科等を専門学校から大学まで乱造しすぎた

3. 1のことから一般の国民が将来を考え新築よりも貯蓄にお金を向けている

他にもいろいろあるが、こんなときこそ学生は本当の意味での実力や専門知識を身につけ、社会に対してアピールすることが必要である。

そして、なるべく早い時期から将来の自分の可能性や方向性について意識を持つということも大切ではないかと思う。

初めのうちは誰でも将来のことはわからないし、就職活動といわれてもピンとはこないものだが、そういった意識を持つことで、おのずと具体的にどうしていくべきかを考えていくようになるだろう。

あとは、限られた時間の中でどう行動していくかである。

また、企業では即戦力を求めるばかりではなく、長期的に見た戦力を育てていくということも実践していってほしいと思う。

就職した時点での技術は足りなくとも、やる気を持った人材であれば将来的に良い人材になる可能性は非常に高い。

実際、学校で学べる範囲には限りがあるので、就職してすぐに役立つ知識はなかなか得られるものではないだろう。

「学校ではある程度の基礎を身につけ、就職してからはより専門的・実践的なことを身につけていく」

当然のことではあると思うが、そういった企業での人材教育に力を入れていくという意味で、求人に関しても、もっと広い視野で見ることはできないのであろうか。

誰もが希望する職種に就けるわけではない。

そしてこの不況ではなおさらである。

学力低下などの学校教育や就職難、リストラなど、様々な問題が叫ばれている現在、この下り坂の状況が上向きに回復する日は、一体いつになるのだろうか・・・。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003