回路方式だけでなく,使用部品も吟味するのは当然のことです。
例えぱ,何々の部品が他より電気的に特性が良いということが研究により発表されると
自分もその報告を参考にして実験をして,その成果を試してみる楽しみは,技術雑誌を
購読する者にとって,大きな楽しみの一つではないかと思います。
例えその結果が思う程でなくてもその間の楽しみはそれを補って余りあるものだと思いま
すし,御自分でできない方は,技術のある方と共同で楽しむという方法もあり,読む楽し
みと作る楽しみの二重の楽しみを与えてくれます。
このような楽しみを味わしてくれる手軽な記事が大きな楽しみであることは確かですが,
私達が注意しなけれぱならないことは,その部品を使いさえすれぱとか,その部品を使
っている音がよいはずだという錯覚に陥らないようにすることが大切なのではないかと,
いつも思いながら実験するようにしています。
音楽は耳で聴くもので,頭で聴いたり,測定器で聴いたりするものではないと自分に言い
きかせています。 最近,コンデンサーや電線による音に与える影響が大きく発表され,大変ありがたいこと
ですが,それ以上に音に影響を与える部品に次のようなものが考えられます。
@ 増幅用の素子
トランジスターや真空管
A トランス
バワー・トランス,アウトプット・トランス,マッチンダ・トランス,ドライプ・トランス等
B 抵抗器
ボリューム,固定抵抗,半固定抵抗等
C ブリント基板
べークライト,ガラスエボキシ等
D ヌイオード
整流用,定電流用,温度補正用等
E スビーカー
各種
F カートリッジ
各種
それに温度,湿度があります.どれをとっても電線やコンデンサーより直線性が良いとは言
い難い部品ぱかりで,ノン・リニヤーだけでなく,歪みの点でも相当良くないものが多いよう
です。
まず@の増幅用素子ですが,みなさんも同じ銘柄の球を差替えてみたことがあると思いま
すが,その都度音が大きく変わった経験をお持ちだと思います。メーカーが変われば当然
のこと,同じメーカーのものでも差がでます。ましてやトランジスターを変えると,(これは球の
ようにすぐ差替えてみるという訳にはいきませんが……)実に良く変わってくれます。それは
Gmやhfeが変わるから当然負帰還量が変わり歪率が影響を受けるからだと考えられるでし
ょうが,どうもそれだけではなく,同じGm、hfeの球や石でも音が変わるので,真空度,極間容
量,動作点等が影響しているように考えられますが,ヒーター電力差も問題です。
ましてトランジスターの構造を考えますと,そんな均一なものを要求する方が無理でhfeのみな
らず,Gobは全ランクに平均分布し,それが動作点と温度により変化してくれるのです
から当然だといえますが,1個何千円も中には何万円もするコンデンサーと並の何十円台
のものと交換したときの差と,どうかということも考える必要があるのではないでしょうか。
悪いより良い部品の方が良いのは分りきったことですが,限りのあるのは何も資源だけで
はありませんから,その中でより良いコスト・パーフォーマンスをみつけることが大切だと
思います。
Aのトランスについては,最近は良いものがでてきているようですが,これによる差は大
変なもので,パワー・トランスを1例に考えてみますと,使用して発熱するのは損失(鉄損
や銅損)があるからですから,音に対して影響があり,整流方式に尖る差も少なくとも線
やコンデンサー(特別に悪いものは別として)よりは大きいようです。
また,アウトブット等のPP用トランスでは,P1−B1とP2−B2間の直流抵抗が違いますので
(全く同じにはできにくい),これからも音の差となりますし,一次電流のアンバランスを2.5%
級メーターでどうバランスさせるかという問題があります。
かりに50rnAの電流を1本の球に流すとしますと,完全に合せても,
50rnA×2.5÷100=1.25mA
±1.25rnAの誤差ができます。
もしも,2台のメーターで合せるとすると,最悪は2.5mAの差となります。その場合,高級ア
ウトプット・トランスのインダクタンスは5OHzでは元の値の70%程度に低下し1ランク下のト
ランスと大差なくなります(第2図参照)。

1台のメーターで合せる場合は,直流抵抗が異なるのが問題になりますし,かりに完全に合
せられたとしても時間とともに,動きますので2〜3rnAは変動しますから,完全なスタガー比
をもたせることがむずかしくなり,小さいことのようでもスピーカーの線の差エり影響が大きい
と思います。
Bの抵抗器ですが,この差は一般に考えられている以上に大きく、みなさんもアンブのポリュ
ームを下げると音が貧弱になるのを知っておられと思いますが,それはフレッチャー・マンソン
の曲線の補正がないからといわれてきました。しかし,通常レぺルより上であるいは下のレべ
ルで音が良くなる点があるのを経験された方があると思いますが,通常レベルでは補正の必
要は当然なく,それより上下で急に良く感じるのは変ですね。
この理由について後で説明いたしたいと思います。
Cのブリント基板は,同じ回路でもバターンにより発振したり,ハムが出たりという話を聴かれ
たことがあるように,プリント基板を変えると音も当然変わります。
これは各素子が互いに同じ平面上で同じ絶縁体上にあるために,各個が程度の差こそあれ,
LCRで結ばれていると考えられるからで、諸先生方が基板パターンまで示されるのは,その
必要があるからなのです。
Dのダイオードは高周波動作のときに問題になっていますが,程度の差こそあれ,低周波
でも差がでます。
Eのスピーカー,Fのカートリッジはみなさんの方が経験を多くお持ちと思いますが,いまま
では音の70〜80%の比率をもつとされてきた部品ですが,エンクロージャーの大切なこと
も忘れて
はなりません。
あの有名なグッドマンのBBCのモニターとして採用されたといわれるAXIOM−8Oもオリ
ジナルのARU付の2本,4本入でも不十分ですが、80の特性と構造を生かすエンクロー
ジャーに入れてやると,中音域から高域の抜けの良い音と同様の低音が出るようになり,
鳴るとは思えない音となり,グッドマンでもこんな音で鳴るのは知らないのではないかと思
うほどです。
それも使い方しだいですが,このスピーカー程,音の微妙な差を表現できる製品は少なく,
オーディオ・バーツの音色の聴き分けには一番だと思うのですが,製造中止となり残念に
思っています。
話が横道に逸れました,1例に上げた部品を考えても,相当音を損う要素をもつことがお
判りだと思いますが,それでは音を悪くする素子を全部なくすれぱと申しますと,そう簡箪
にはいきません。構成がシンブルなほど,音が良いといわれる理論がありますが,極言
すれぱ,直接針を口でくわえて,骨伝導で音を聴くのが最良ということにりますが,決して
そうではないことはお判りになるでしょう。
例えぱ,アンブの場合でもロフティン・ホワイトと呼ぱれる直結回路がありますが,音を悪く
するといわれるコンデンサーを1個取りさり,直結にするために,前段や出力段が大変苦
しい動作を強いられているのが,第3図をご覧になれぱお判りのことと思います。

45のブレート電圧は250Vですが、+Bは485Vを用意しなけれぱなりません。
なんでもないようですが,トランスの2次巻線の直流抵抗を考えると,倍の面積の線を使っ
ても抵抗は大きくなるのです。
電流容量だけを考えて同じ線で巻き上げたとすると,レギュレーションは250V動作させ
た場合の倍以上悪くなります。
1個のコンデンサーの悪さと,トランスを含め,回路的な無理とのバランスを考えると,一
方的に直結が優れているとは言い難く両刃の剣だと思ます。
全て物事は両面あり,上記はほんのー例で,現在の流行のDCアンプ等も全く同じで,全
て大局的に判断する必要があるのではないかと思います。
上記を考慮の上で,前述しました可変抵抗器についての実験報告慈いたします。
なぜ可変抵抗器て音が悪くなるか?
私が,可変抵抗器(以下ボリュームと書きますが)が音を悪くすることを知ったのは,必要
以上の利得をもたないブリ・アンブを製作し普通の使用位置が全開で,夜分など音量を下
げる必要のあるときだけ絞って使うというアンプで,ある点から急激に音質が劣化するの
を知ったことからでした。
アンプのゲインは
プリ・アンブ 40dB
メイン・アンプ 20dB
ト−タルゲインが,60dBのものでカートリッジに出力5mVのものを使用すると,出力に5V
の出力が得られるというアンプの話です。

第4図で示したようにボリュームの変化カーブはA型,B型,C型等があり,主に音量調整に
はA型が用いられます。

A型の場合ですと,絞ってa点の所まで絞りますと急激に音が悪くなり,耳でa点の通過が判
ります.B型カーブのボリュームは徐々に変化しますので,あまり急に悪くなったようには感
じませんが,半分も絞ると,音の生々しさが半滅します。
この原因はどこにあるかといいますと,理由としては次のようなことが考えられます。
(1)直列に抵抗がはいるための悪さ
(2)高域の損失
(1)の抵抗がはいるのはA型,B型,C型のボリュームでも同様で,ボリュームで音量をコン
トロールするかぎり,避けられないことです.それによる特性の劣化は測定上は問麹がな
いようですそこで(2)の方の問題ですが,オッシロスコープによる特性を見てください。
上側がボリュームを通った10kHzの方形波で下が原波形です。写真1では,ボリュームを
全開とした状態です。
ボリュームはカーボン型,抵抗値が250kΩのAカーブのものです。写真1では原波形と同
じですが,写真2(30度絞った状態)では,高域が明らかに落ちていることを表わしていま
す。
この点で,急に音質が劣化するのが判るのです,写真3〜4でも,程度の差はあっても,同
様に高域が落ちています。
ボリュ−ムの接続は,蝋線のでホットとアース側を近づけぬようにして,10crn程の線でオ
ッシロに直接接統し,容量をもたないようにしています。
それでも高域がこのように落ちるのです。理由はボリュ−ムに容量が働いてくるからです。
第5図がボリュームの回路図に画く時の記号ですが,等価的に表わすと(a)でなく(b)と考
えられます。

これはCR型トーン・コントロール回路です.C1とC2は端子間に生じる小容最で,いかにし
てもゼロにすることはできません。それ故ポリューム全開では,R1が0となりますから,C2
があっても特性は落ちません.いくらか絞ってR1が大きくなると,
f=1/2πR1C2
で表わされる周波数から6dB/octで落ちるのです.中央の位麿の方が落ちが少ないのは
A型であるため,R25≒50k,R1=200k,前後であるために,カットオフが上つていくため
です。これにシ−ルド線の容量C3や,球や,トランジスターのミラー効果により,容量は増加
しても減ることはありません。
ミラー効果について,ちょっと説明しますと,第6図において,入力電圧がEのとき,増幅度が
Aならぱ,出力側にはE×Aの電圧が発生し,この電圧は入力と位相が逆ですからCpqの両
端に加わり,(E+EA)となります.また,CqkとCpq,には
i なる交流電流が流れ込み,Cqk
に流れ込む電流をiqkとすると,
iqk=EωCgk
となり,Cpqの側に流れ込む電流
ipqは、
ipq=(E+EA)・ωCpq
となり,合成電流 iは,
i= iqk+ipq
=e・ω[Cgk+Cpq(1+A)]
で表わされ,合成容量をCTとすると
CT=i/e・ω=C+Cp,(1+A)
となりA(利得)が大きい程CTが大きくなることが判ります。
この作用をミラー効果といい,高域の特性に影響します。
これを少なくするには,負荷抵抗を小さくするか,NFBをかけるのが良く,入力容量は1/(1
+AB)になります。
入力容量がかりに100pFあって,NFBを20dBかけたとして10pFになっても,点aではR1≒
140kΩであるから,
f=1/2πCR
=1/2V×1O×10−12×140×103
≒113.7kHz(−3dB)
となり,ミラー効果だけですでに,100kHzフラットは無理です。
それに線の容量C3と端子間容量C2が加わるのですから,当然可聴範囲に影響があります。
都合の悪いことにこの特性はポリュームの回転角によって変化するのです。これを補正する
方法はないものでしょうか。良い方法があります。
それはC1を大きくしてR2との位相進みで補正する方法です。
線の容量や,ミラー効果での高域の低下をC1を可変にすることにより補正してやれぱ,全回
転角において,10kHzの方形波が通るポリュームが作れます。
かりに入力容量が10pFで,線の容量が20pFあったとするとし,分りやすくするために100
mのBカーブのポリュームを使うと仮定すると,中央の位置ではB型カーブですから,R1=R2
=50kΩとなり,C2+C3+CT
≒30pFとすると,C1=30pFとすれぱ,中央位置ではフラッ
トな周波数特性が得られることになります。
C1はほとんどC2に等しい容量ですから,ボリュームのみを考えますと,R1<R2となる点から
は高域上昇として働くのですが,第5図(C)のようにCIN+C3+CT[Cgk+Cpq(1+A)]の容
重が大きいので,実際の回路では上弁するまでには至りません。
第8図に30度と15O度絞ったときの周波数特性をグラフで表わしておきますが,ボリュームの
値が大であればもっと高域が低下します。ポリュームの値が小さけれぱそれに比例して高域は
伸びます。
その,点からだけ考えれば,ボリュームの抵抗値は低いほど有利です。
それではどうして補正するかといいますと,前述したように第9図の(a)のR1×Cと(b)のR2×Cl
との時定数を常に一定にしてやれば良いのです。

Cは一定で多くとも30pF前後で(それ以下にしなければ困りますが)あるとすると,10OKB型
のときは第7図で9の位置ではR1は大体1OkΩ,8の位置では20kΩ,以下各位置ごとに10
kΩずつ増加してくので,位置9では,
R2=9OkΩ,C=3OpF
R2 ×C=2700(pF・kΩ)
R1
×C1=10k×C1=2700
C1≒270pF
同様にして
位置8では C1=135pF
〃 7 〃 C1=90PF
〃 6 〃 C1=68pF
〃 5 〃 C1=54pF
〃 4 〃 C1=45pF
〃 3 〃 C1=39PF
〃 2 〃 C1=33pF
〃 1 〃 C1=27pF
となります。
この値にC1を適動して変化させれば,どの位置でもフラットな周波数特性が得られます。
回転できて,上記変化は周波数直線形の変化で,雑音を出さず,音質に影響のない可変
コンデンサ−であれぱ良いのです。
そうです,空気コンデンサーと言われる通常バリコンといわれるコンデンサーを,ポリュー
ムと速動して動作させれぱ良いのです。
位置9での270PFは別としても位置8以下の補正であれば小型で間に合いますし,しかも
間隔を加減できるようにしておけば,回路による容量差もアジャストできます。
第1O図のような構造にすれぱ,オーディオだけでなく,とくに測定認等にも連続補正ができ
て,大変便利です。

C1は端子間容量とバリコンの容量の加算されたものですから,実際にはもっと少ない容量
で良いし,位置8や7で使用しないのならその使用上限か,通常使用位置に止めるのであ
れぱ,さらに小容最でカバーできます。
実験的にブリ・アンプやメイン・アンプのポリュームで試験してみますと,音抜けが良くなり,
解像力が増し,音色が一段と良くなり,レコードにはこんなに音がと,あらためて感じたしだ
いですなお,この可変コンデンサーの付いた可変抵抗器は,出願番号52−5906で実用新
案登録をいたしております。補正のためなら,入力と出力端子の間に,第5図(b)のC1のよ
うに接続すれぱよろしいが,C1とC2のようになるように接続するとポリューム1個でトーンコ
ントロール素子として使え,空気コンデンサーですから雑音は出ませんし,音も悪くなりませ
んポリュームとC1,C2の値を考えるとフィルター素子等の多くの使い方が考えられるので,
大変広い用途があると思います。
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