SRPPバッファーに構成した4ウェイ型
管球式チャンネルデバイダーの製作

(この記事は無線と実験1980年4月号で発表しました。)

1月号て発表した管球式DCプリ・アンプに接続して使って戴いている,管球式
の4チャンネル用デバイダーについて発表させていただきます。
時代の流れとともに,シングル・スピーカー方式や,ネットワークを使用した1アン
プ2〜5ウェイ方式や,マルチ・チャンネル・アンプによるマルチ・スピーカー方式と
いろいろと流行があったようてすが,音質のみを重視するとすれば,マルチ・チャ
ンネル・アンプによるマルチ・スピーカー方式が,コストの点を考えなければ,全て
の点て優れているのてはないかと思います.
いままでにこれらの理由についてあまり深く考えられたことがないように思いますの
で,一度みなさんにも,それぞれの方式の利点,欠点についてお考た戴きたい
と思い蛍すます。

 

現在,主な方式としては

(1)1アンプ,1スピーカー方式.

(2)1アンプ,ネットワーク使用によるマルチ・スピーカー方式.

(3)デバイダー使用による,マルチ・アンプ,マルチ・スピーカー方式。

と大体(1)〜(3)方式に大別できると思います.
(1)の方式の利点は何生りもロー・コストであること,それと位相のずれがないことで,
欠点としては低音から高音主で1個のスピーカーで受け持つため,混変調歪みが大
きく音抜けが悪く,ダイナミック・レンジが取りにくいという点で,極言すれぱ大地震の
中で字を書いてるような動作を強いられるわけです。
(2)の方式の利点は混変調歪みは(1)より少なく,コストも比較的(3)よりは安でき,
 スピーカーも再生帯域に適合したものを採用できるので,過渡特性も良くなります。
欠点としては・ネットワークを使用するため,・直接アンプの制御下にスピーカーを置くこ
とができないこと, 1台のアンプに複数個のスピーカーが並列に接続されるため,ただ
でさえ苦しい逆起電力の処理が数倍に増加すること,それに,いかに良いコンデンサー
やコイルと言えども音を良くはしませんから,これらのインダクタンスやリアクタンス分が
SPとともにアンプに直列や並列にぷらさがることになります。良かろうはずはありません
ね.それに加えて,ネットワークによる位相のずれが出てきます。
(3)の方式の利点はアンプとスピーカーを1対1で接続できるため,(2)での欠点を全て
カバーし,(1)と同じ条件で使え,しかも各帯域には 分割された周波数しかはいりません
から,混変調歪みが減り,その帯域に合ったスピーカーを選ぺますから,過渡特性の良い
ダイナミック・レンジの広いシステムが構成できます。欠点としては アンプがチャンネル数
だけ必要なのと,デバイダーが必要になるために,コスト高になること,位相のずれのない
デバイダー,同じ形式(位相の点で)のパワー・アンプでないと位相のずれが生じること等の
問題があります。(リ〜(3)の方式の利点欠点を大まかに述ぺさせて戴きましたが,マルチ
方式にする最大の理由について,いま一度初心に返って考えてみたいと思います。

マルチ方式は(1)のシングル方式では混変調歪み(音がダンゴになって出る)が多いから,
分割して入力を何分割かにして帯域を制限することにより混変調歪みを少なくし,スピーカ
ーの増加分だけ入力が少なくて済むので,高調波歪みも少なくなるというのが目的で,そ
の帯域に合ったスピーカーを選ぺるというのは本当は余禄だと思うのですが,現状では低
音用,中音用,高音用の各スピーカーの選択が優先されているようで,受け持ち帯域が均
等分割されておらず,低音用のスピーカーに,味付け程度に中音,高音が付いているマル
チ・システムが大変多いように思います。

これは,とくに過渡特性を重要視してスピーカー・システムを構成されるからで,とくにホーン
・システムでラインアップを組みますと,ホーンのというよりドライバー・ユニットのカットオフ周
波数があるために,どうしても低い周波数を入れることができず,受け持ち帯域が上に上
に上昇していくからです。普通,小生の経験から考えますと,オクターブ18dB(NF型)でかり
にカットしたとしても, そのクロスオーバー周波数の少なくともエオクターブ下までは完全に音
になるユニット(何とか歪まないと言うのでなく)でないと音を悪くするようです。
例えぱ, 4kHzで18dB/octでクロスさせてトゥイーターを使うとしますと,少なくとも1オクタ
ーブ下すなわち2kHzまではフラットで音色の変化がなく,しかもカットオフがそれ以下のユニ
ットでないと駄目だと思います。
理由は完全に調整されたNF型で18dBカットのもので、1オクターブ下の周波数がフラットの
帯域に対して,約 −18dB,12dBカットのもので−12dBの減衰にしかなりませんので, オ
クターブ18dBで切っても,1オクターブ下のデバイダーの出力電圧は10分のユ以上になるか
らです。
それ故に,NF型でも未調整のものやCR型は滅衰特性が甘くなりやすく,より急な滅衰特性で
ないと上記のような用途にはむずかしいと思います(第1図参照)。

まして, LC型のネットワークの場合はもっと苦しくなります。それでは上記が全て解決されたと
して,2kHzから使用できる(コーン型も含めても良いとも思いますが)市販のホーン型トゥイータ
ーには,私の知る限りにおいて,適当なものは見当たりません。
かりに, 4チャンネルで可聴帯域をカバーするとすれぱ,2.5オクターブになりますから,周波
数は

低音:20Hz〜120Hz

中音:120Hz〜640Hz

中高音:640Hz〜3750Hz

高音:375Hz〜20kHz

となり, 4チャンネルのマルチ・アンブ方式ではホーン型で採用できるトゥイーターは市販には
適当なものがないことになります。これは,あくまで前記のマルチ方式の第1目的に主眼をおき,
音の点で妥協しないという仮定に立っての話で,決して市販スピーカーが悪いというのではあ
りませんが, とくにホーン型の場合は過渡特性が良いのと,見た形の良さもあって(マグネ
ットの大きさ等),ついスピーカーの方のみ先に選ばれることになるのだと思います。
また,振動系の質量を軽くして高域を伸ぱしたり,過渡特性を良くするのは他の特性を良くする
のに比ぺて楽なため, どうもその方向に片寄りすぎているように私は思いますが,聴取周波数
以上に特性が伸びているのも結構ですが,実際に音楽の基音となる帯域のもっと広い少なくと
も,4チャンネルでマルチが構成できるホーン型スピーカーがあれぱといつも思います。
その意味では,岩田さんのシステムも帯域制限のあるホーン型ですので,デバイダーもオクター
ブ12dB以上の減衰特性が必要で,位相の乱れがあっても,急速に切ってやる必要がありました
ので,それに適応するデバイダーとなっております。
なお,上記の目的を全て満した上に、いままでのマルチの欠点であった音の接がりも解決した新
着眼方式のマルチ・アンプ・システムを,近々に発表させていただけるかもしれないことを申し上
げて,デバイダーの説明にはいらせていただきます。

本体の構成について

デバイダーは バッファー・アンプとロー・パスやハイ・パスを構成するCR群とから成ることは良くご
承知のことですが,何といっても音を悪くしようと待ちかまえるCRを,いかにその影響から音を守る
かに,バッファー・アンプの生命がかかっていると思います。
そこで,バッファー・アンプに要求される性能について考えてみますと,

(1) 入力インピー夕ンスが高いこと

(2) 出力インピーダンスが低いこと

(3) 出力が大きくリニアリティーが良いこと

の大体3点です。
球やトランジスターのカソード・フォロアーやエミッター・フォロアーが良く用いられますが,(2)の点
で不十分ですし, トランジスターでなく管球式にしたのも(3)の理由からです。
本誌にも,良くトランジスター方式のデバイダーが発表されますが,残念ながら供給電圧以上の出
力を取り出すことは物理的に無理ですので,管球式のSRPPバッファーにて構成いたしました。
その理由を説明いたしますと, トランジスターのPPバッファーではVcc=±30Vを供給しても出力
は10V前後となり,デバイダーのポリュームを20dBも絞られると苦くしなり,とくにホーン・スピーカ
ーは能率の差があり,中音等は高音に比ぺてもそれ以上のレべル差があるために,デバイ夕ー
は絞られるという前提に立って考えますと,トランジスターでは無理なのです。
一応−40dB絞っても使えるものということですと,前記トランジスター方式は0.1V,管球式カソー
ド・フォロアー方式は0.4V,SRPP管球式は(Ebb=300V,歪率を0.1%以下とすると)の出力が得
られます。これならば-40dBの点でもメイン・アンプが十分動作できるし,また絞らなけれぱそれ
だけ動作上は余裕カあることになります。

第2図をご覧ください。これがノッファー・アンプの基本回路です。
第3図は,本誌でも良く発表されているSRPPですが,その動作について少し説明いたしますと,第4

図が原形回路で,’68年の「ラジオ技術」3月号でテクニクスのプリ・アンブのバッファーとして, ま
た’69年の同誌2月号で和田氏(小生の友人)のプリ・アンプにも同型が採用されており,アンプの
NFを極限まで深めたもので,これをバッファー・アンプ用に改造して採用いたしております。
第4図においてNF量を増加させるにはVのRを大きくして利得を上げ,βを大きくするためR−
NFを小さく, Rkを大きくすれぱ良いのですが,これを極限まで進めるR-NF=0, Rk=∞とする
と第2図の基本回路となり,Vの全ゲインがNFBとなるため,出力インビーダンス約190α,
またNF量が多いのでノイズが大変少なく,歪率もEbb=300Vで出力80Vの時に0.1%以下とな
ります。Vのプレート抵抗も大きい方が良いのですが,回路に合せてカットアンド・トライで決定し
ました。
第3図のSRPPは本誌でおなじみの回路ですが,第2図との違いはゲインがあることで,V2がV1
の出力を分割した電圧でドライプされ,いまeg1の電圧でドライブされたとするとi1が流れますが,そ
のときRにはi×Rの電圧が生じます。
これがV2のグリッド入力となり,この電圧をeg2とし,RLを負荷として接続すると,この負荷に生ず
る電圧をe,Vの出力電流をiとすると,

=(i+i)R

g1=eg2=iR, i=iであるので,
この回路の利得をAとすると,

A=e/egt=2i/i

=2R/R

また,A=2g×Rとも表わせる

ので,A=2gm×R

=2R/R

∴R=1/gmとなります。12A×7のg≒1.2〜1.6ですから,Rは700Ω前後となり,負荷を50
kΩとすると,増幅度A=2×50kΩ/700Ω≒143倍の増幅度があります。
このように第2図と第3図では同じSRPPでも発想が違うのがお判りと思いますが,一番大きな違い
は本回路はゲインは0,出力インピーダンスが低いことで二段NFアンプ,第3図は上式でもお判り
のように,VのRPをVが代行しているような回路で,ゲインがあり,出力インピーダンスが高い点
が同じSRPPでも違うところです。そのような理由から,第3図のSRPPはバッファーには向きません。

バッファーはこれくらいにして,クロスオーバー・ネットワークについて説明しますと,前述の理由もあ
りますが,岩田さんのご希望もあって12dB/octのカットを採用することになりました。
第5図がNF型のいわゆる山根式デバイダーの略図で,CRはその時定数を選んで使うというおなじ
みの回路ですので,詳しくは教科書をお読み戴くとして,このような構成であることをご理解ください。

本体の構成について

第6図がデバイダーの本体の片チャンネル分の回路図です。


一般のデバイダーと異なる所は,フロントのバッファー・アンプが全チャンネルに付いている点で,
少しでも負荷を少なくしたいというところから,このような構成になっております。
また+B電源もヒーター電源もLチャンネル,Rチャンネルともに完全に別々に供給し,クロストー
クの増加を防いでおります。真空管は12AU7Tを使用し,プレート電流を約4.5mA前後も流し
て下側の球をチョットしたパワー管並の動作をさせた結果,前述しましたように, 出力インピーダ
ンスが190Ω(ON−OFF法にて実測)で,周波数特性は10Hz〜100kHzまで+0,−0.5dB
以内の特性となりました(補正なし)。
各チャンネノレともにフィルターを前や後に付けるのですから,不要な特性だとお考えかも判りませ
んが,各ステージが良いということは音を損う比率が少ないと考えておりますので,このようにいた
しております。上記のような特性の結果,当然配線にはシールド線はただの1cmも使っておりませ
ん。
いかに良いシールド線といえども,単線には勝てないと思いますし,見かけの特性が良くても裸特
性が悪いと音が損われるように思いますし,シールド線を引回し,無理に電磁誘導を防ぐのでなく,
一歩進んで交流磁界を本体に持ち込まない,またかりに磁界があってもその影響を受けなはうな
構成にするという考え方で,全てを音優先としてい主す。そのような理由で別電源とし,B電源,A
電源(ヒーター)の各リップルを極力低下させ,完全な直琉の形で供給しています。
本体の配線2.5mm(50芯)の単線をできるだけ短距離になるように配置し,見た目や重量バラ
ンス等は無視いたしました。使用いたしました部品は,抵抗類は金属皮膜とP型カーボンの1/2
W型,コンデンサーは並のMPコンデンサー,ボリュームはカーボン型を使っています。
バッファーの時定数は,極力低くし,少しでもCのリアクハス分を少なくするようにしています。入力
の時定数

=160/C(μf ・R(kΩ)

より6.7Hz

二段アンプの結合時定数はループ内ですので1桁下げて1μF×510kΩで0.31Hzとしており、
各出力段は(1.8μ+20μF)×100kΩ=0.07Hzともう1桁時定数を下げておりますが,こ
れは電源部のリップルが少ないことと,各ステージの出力インピーダンスが低いからできます。
クロスオーバー周波数は各チャンネルとも3点で下記のようになっています。


各周波数切換えは必ずRのみを変更し,Cは変更しない構成にしていますが, これはロータリー
・スイッチの接触抵抗を見越して,それが存在しても大勢に影響がないようにしたかったからです。
とS,SとS,SとSは,連動しており,両チャンネノレを同時に切り換えるため,8回路の
3接点が必要となります。もともと位相の点では前述いたしましたとおり,カットオフの関係で位相
のずれがある方式ですので,予定の減衰特性が得られる最小の段数で構成いたしております。

電源部の構成について

テバイダーは,プリ・アンプ程重要視しないというわけではないのですが,電圧の関係とヒーター電
圧の関係もあり,トランスはタンゴのST−230を2台使っております(容量的には1台で可です)。
トこのトランスは,便利なことに,6.3V(2A)のヒーター用巻線が4組もあるため,総勢20本の
12AU7Tを点火してやるのに大変便利なトランスなので採用いたしました。
第7図が本機の電源です。

前回プリ・アンプと同様の考え方によリまして,音声回路は球で,電源部はトランジスターでという
構成ですが、プリ・アンプと違ってまだ改造をいたしておりませんので,旧式の電源のままですが
一応ご説明いたしますと,約130Vの倍電圧で340VのDCを得ており,ICの723でリップルと安
定化を受け持たせています。いわゆるフローティング電源といわれる高圧用のリップルリジェクシ
ョン方式で,lCの723ECには最大定格の40Vがかからないように1Z−36のツェナー・ダイオ
ードでクランプして使っております。
レギュレーター用のトランジスターは 松下の25D312(グリーンマーク),ダーリントン用に東芝
2SC5T5Aを使って,ICのドライブを楽にしております。片チャンネルの電流は45mA前後で
すので,トランスの定格の5分の1の電流で使っていますので,交流の波高値いっぱいの使い方
ができますが,何と申しましても,今から5年も前に改造したままで,今日まできておりますので,
電源としての見おとりはやむを得ないと思います。早く,ICにむだ飯を喰わせるのはやめたいと思
っています。
ともかくAC供給約260V(倍電圧なので倍とみて)で安定化後のDCの300Vでリップル電圧が定
格で10OμV,ヒーターの方は同じようにICの723を使ったシリーズレギュレーターで,電力増加
用にRCAの2N3232を使っていますが,電流(Ic)が2A以上で,コレクター損失が25W以上のN
PNのTrなら何でも良いと思います。
本機でのレギュレーターの石の損失は,

+B回路 

ドロップアウト40V

40V×0.045A=1.8W

ヒーター回路

ドロップアウト 4V

電流・・・・・・0.75A

4V×0.75A=3W

で比較的損失の少ない方ではないかと思います。
ヒーター電源は,定格負荷でリップルが0.5mVで,25Vで供給しています。
これは,各増幅段のステージの電圧配分が第8図のようになるために,上側の球のカソード電位

がアースに対して,+120V前後となりますが,12AU7のヒーター・カソード間の耐圧はDC分±2
00Vとなっており安全ですが,少しでも安全なように,ヒーター回路は電圧を高めにし,電流を少
なくして,下側の段でアースするようにし少しでも+電位になるようにします。
これらの安定化電源を設計するときに,一番問題になるAC100Vのドロップをどこまでとみなすか
により,全然むずかしさが違ってくるのですが,この電源では一応92Vまで低下しても安定化が崩
れないようにと動作点を決定いたしました。後日,岩田さんのお宅への柱上トランスからのお宅へ
までの単相200Vの動力線が38スクエヤーの線に交換されました。
1スクエヤー当たりトランスの巻線並みの2Aとしても,

38×2A×2=152A

の交流がほとんど損失なくアンプまでくることになり,電圧のドロップはほとんどなくなりましたので,
今後改造させていただくときにはAC98V以上の設計にできると楽しみにしています。
余談になりますが,音の良し悪しをアンプとかスピーカーとかの一部だけで考えないで,一番大切
な供給源のインピーダンスまでも含めてみられる,音に対する広い視野とその姿勢と努力とに,頭
が下がる思いがします。
ややもすると,そのー部を採り上げて,少しでも他より良いと鬼の首でも取ったかのごとくに考える
私達の小さい考え方を,大いに反省させられたしだいです。
いずれ詳細については岩田氏からご発表があると思いますが,本当に良い勉強をさせていただけ
ます。

話を戻させていただいて,第7図をご覧ください。
前述いたしましたように,アンプまでの電源インピーダンスと直流抵抗が極端に下ったため,スイッ
チのONの時のインラッシュはものすごく,それ故第7図の1次側には5Ωの抵抗を入れて,遅延リ
レーでこのラッシュカレントから保護しております。5Dですから,かりに1次側の巻線抵抗が0でも,
20A以上は流れませんので,シリコン・ダイオードのサージ45Aなので保護抵抗は必要ないと思っ
ています。この遅延時間はリレーに並列にはいっている2〜300μFでその並列共振を利用して,
遅延時間を決定できるので便利で,200μFで約4秒,300μFで約5秒の遅延となります。2次
側の高圧用のダイオードはフジのガラス封入のSIB−03の1kV逆耐圧のものを, ヒーター用に
は同じくフジのFR-202という逆耐圧200Vの各1A用というのを使っております。
各安定化電源ともに電流保護回路は付けておりませんが,それは折角低いインピーダンスを、検出
用の0.何Ωかに邪魔されたくないのと,そのようなものが必要ないようにする方に努力するという考
え方で,一切電源の保護は付けておりません。
一応,ラインアップの説明は以上の通りですが,クロスオーバーポイントが低音では10Hzきざみで
すし各チャンネルとともに接近していますので,クロスオーバー周波数の認整は大変注意深く特性を
合せ,ちゃんと−3dBでクロスするように慎重に行います。
切り換えを付けた意味があるように調整し,またその特性による差が岩田さんの所では音になり出ま
すので,十分時間をかけて行います。予めCRはプリッジで選択して,0.5%級に合せてはあります
が,接触抵抗やストレーキャパシティー等の関係で,回路で表示した値と少しずつ異なっており,計算
通りで作ったら,周波数が少しずれただけでしたでは、私どもは通らないからです。
シールド線を使用したり,バッファー・アンプがエミッター・フォロアーや球のカソード・フォロアーのと
きは もっと修正が必要でした。
管球式やTf式のデバイダーを40台以上も製作いたしました結果,ポリュームの1目もり(約6度)の
変化で音の構成が変化するのを知ってますので,必ず各チャンネルのボリュームームのツマミには
回転角300度を10等分し,それをまた5等分してあるものを使用し,正確にレべル合せができるよ
うにしています。
パイロット・ランプはネオン管ですが,本体の方には直流しかきておりませんので,直流で点燈いたし
ております。
各チャンネルのクロスオーバー特性は各教科書に発表になっている通り,第1図の鞭型12dBオクタ
ーブの減衰となっている,というより合せましたので,再掲載して無駄なぺージ数を使うのはご遠慮申
し上げて,第1図の1kHzのクロスオーバー点が,各チャンネノレのクロスオーバー点,例えぱ80円z
や90Hzに,また高域では6kHzや7kHzに移ったとお考えくだされぱ結構です。
本体の回路図で+Bとなっている点は,全部同じ電源のC300Vにデカップリングなしで,直結されて
いますが,これは少しでも良い音のために電源から直結で供給しておりますが,SN比との関係を考え
ながら行うようにしています。かりにメイン・アンプのゲインが20dBあるものとして,デバイダーでの残
留ノイズレべルを逆算してみますと,メイン・アンプ出力でのノイズを1mV以下と仮定すれば

1mV×0.1ー100μV

となり,一応それ以下であれぱデバイダーからのノイズは問題になりません。
本機では各出力ともに入力オープン,ボリューム最大で50μV前後ですので,何とか使えそうな値だ
と思います。

製作後の磯想

デバイダーの最高の特性は,デバイダーで音が良くなるのではなく,挿入したときとダイレクトのときの
差がなく,ただ単に周波数が希望のチャンネルに分割され,位相差なくでてくる特性だと思っておりま
すので,製作時はその点のみを重視しました結果,その特性においては大体達成できたように思いま
すし,私の知る限りにおいて最も損失の少ない部類にはいるデバイダーだと思っています。
ここで申し上げたにとはこのデバイダーもプリ・アンプと同様に経済性と外観を考えないで,音のみを
追求したデバイダーですし,大変高域まで各ステージが伸ぴているのと(前述の100kHz,-0.5dB
はオッシレーターを含めた特性で,補正しておりませんので,500kHzぐらいまではフラットです),位
相の関係があり,へたに線を引き回わしマすと,シールド線を使っても発振いたしますので,本機はあ
くまでも参考の域に止めておいてくださると幸いです。
みな様のご要望が多いようでしたら,経済性があり,必ず成功するデバイダーを後日発表するチャン
スが与えられるのではと思っています。

今後の計画

前述いたしましたように,岩田氏の引き込み線が38スケヤーになり,アンプ内部のトランスまでの線が
5スケヤーに変更された結果 (ACコネクター等もAC30A用となりました),各アンプがイントラB級ト
ランジスター・アンプがA級のDCアンプに変わった以上に音の抜け,分解度が上ったように感じ,何か
A級だB級だなぞと小さな差にこだわるのが馬鹿らしく思いますが,良くなったのをより良くする意味で,
プリ・アンプ並の損失の少ないディスクリート電源に改造し,AC98Vでの動作を試させていただくよウ
にお願いするつもりです。
本体の方は岩田氏のホーンの改良で,中低音や中音は全音域の周波数を入れても音が歪んだりしな
いように改造されましたので,急カットの方式でなく,位相も考えた伝達函数1のデバイダーに改造させ
ていただきたいと考えています。また,バッファー・アンプの出力インピーダンスが1桁低い20Ω以下
で,出力100Vのバッファーが完成しており,それに本機を改造すれぱどうなるか,楽しみです。
またご報告できれぱと思っております。
参考姿料…ラジオ技術.
1969年2月号
1968年3月号
電波科学シリーズ

本機のフィルター・アンプ部(左)と電源部(右)

トップページへ