| 現在,主な方式としては (1)1アンプ,1スピーカー方式.
(2)1アンプ,ネットワーク使用によるマルチ・スピーカー方式.
(3)デバイダー使用による,マルチ・アンプ,マルチ・スピーカー方式。
と大体(1)〜(3)方式に大別できると思います.
(1)の方式の利点は何生りもロー・コストであること,それと位相のずれがないことで,
欠点としては低音から高音主で1個のスピーカーで受け持つため,混変調歪みが大
きく音抜けが悪く,ダイナミック・レンジが取りにくいという点で,極言すれぱ大地震の
中で字を書いてるような動作を強いられるわけです。
(2)の方式の利点は混変調歪みは(1)より少なく,コストも比較的(3)よりは安でき,
スピーカーも再生帯域に適合したものを採用できるので,過渡特性も良くなります。
欠点としては・ネットワークを使用するため,・直接アンプの制御下にスピーカーを置くこ
とができないこと, 1台のアンプに複数個のスピーカーが並列に接続されるため,ただ
でさえ苦しい逆起電力の処理が数倍に増加すること,それに,いかに良いコンデンサー
やコイルと言えども音を良くはしませんから,これらのインダクタンスやリアクタンス分が
SPとともにアンプに直列や並列にぷらさがることになります。良かろうはずはありません
ね.それに加えて,ネットワークによる位相のずれが出てきます。
(3)の方式の利点はアンプとスピーカーを1対1で接続できるため,(2)での欠点を全て
カバーし,(1)と同じ条件で使え,しかも各帯域には
分割された周波数しかはいりません
から,混変調歪みが減り,その帯域に合ったスピーカーを選ぺますから,過渡特性の良い
ダイナミック・レンジの広いシステムが構成できます。欠点としては アンプがチャンネル数
だけ必要なのと,デバイダーが必要になるために,コスト高になること,位相のずれのない
デバイダー,同じ形式(位相の点で)のパワー・アンプでないと位相のずれが生じること等の
問題があります。(リ〜(3)の方式の利点欠点を大まかに述ぺさせて戴きましたが,マルチ
方式にする最大の理由について,いま一度初心に返って考えてみたいと思います。
マルチ方式は(1)のシングル方式では混変調歪み(音がダンゴになって出る)が多いから,
分割して入力を何分割かにして帯域を制限することにより混変調歪みを少なくし,スピーカ
ーの増加分だけ入力が少なくて済むので,高調波歪みも少なくなるというのが目的で,そ
の帯域に合ったスピーカーを選ぺるというのは本当は余禄だと思うのですが,現状では低
音用,中音用,高音用の各スピーカーの選択が優先されているようで,受け持ち帯域が均
等分割されておらず,低音用のスピーカーに,味付け程度に中音,高音が付いているマル
チ・システムが大変多いように思います。
これは,とくに過渡特性を重要視してスピーカー・システムを構成されるからで,とくにホーン
・システムでラインアップを組みますと,ホーンのというよりドライバー・ユニットのカットオフ周
波数があるために,どうしても低い周波数を入れることができず,受け持ち帯域が上に上
に上昇していくからです。普通,小生の経験から考えますと,オクターブ18dB(NF型)でかり
にカットしたとしても, そのクロスオーバー周波数の少なくともエオクターブ下までは完全に音
になるユニット(何とか歪まないと言うのでなく)でないと音を悪くするようです。
例えぱ, 4kHzで18dB/octでクロスさせてトゥイーターを使うとしますと,少なくとも1オクタ
ーブ下すなわち2kHzまではフラットで音色の変化がなく,しかもカットオフがそれ以下のユニ
ットでないと駄目だと思います。
理由は完全に調整されたNF型で18dBカットのもので、1オクターブ下の周波数がフラットの
帯域に対して,約
−18dB,12dBカットのもので−12dBの減衰にしかなりませんので, オ
クターブ18dBで切っても,1オクターブ下のデバイダーの出力電圧は10分のユ以上になるか
らです。
それ故に,NF型でも未調整のものやCR型は滅衰特性が甘くなりやすく,より急な滅衰特性で
ないと上記のような用途にはむずかしいと思います(第1図参照)。
まして, LC型のネットワークの場合はもっと苦しくなります。それでは上記が全て解決されたと
して,2kHzから使用できる(コーン型も含めても良いとも思いますが)市販のホーン型トゥイータ
ーには,私の知る限りにおいて,適当なものは見当たりません。
かりに, 4チャンネルで可聴帯域をカバーするとすれぱ,2.5オクターブになりますから,周波
数は
| 低音:20Hz〜120Hz 中音:120Hz〜640Hz
中高音:640Hz〜3750Hz
高音:375Hz〜20kHz
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となり, 4チャンネルのマルチ・アンブ方式ではホーン型で採用できるトゥイーターは市販には
適当なものがないことになります。これは,あくまで前記のマルチ方式の第1目的に主眼をおき,
音の点で妥協しないという仮定に立っての話で,決して市販スピーカーが悪いというのではあ
りませんが, とくにホーン型の場合は過渡特性が良いのと,見た形の良さもあって(マグネ
ットの大きさ等),ついスピーカーの方のみ先に選ばれることになるのだと思います。
また,振動系の質量を軽くして高域を伸ぱしたり,過渡特性を良くするのは他の特性を良くする
のに比ぺて楽なため, どうもその方向に片寄りすぎているように私は思いますが,聴取周波数
以上に特性が伸びているのも結構ですが,実際に音楽の基音となる帯域のもっと広い少なくと
も,4チャンネルでマルチが構成できるホーン型スピーカーがあれぱといつも思います。
その意味では,岩田さんのシステムも帯域制限のあるホーン型ですので,デバイダーもオクター
ブ12dB以上の減衰特性が必要で,位相の乱れがあっても,急速に切ってやる必要がありました
ので,それに適応するデバイダーとなっております。
なお,上記の目的を全て満した上に、いままでのマルチの欠点であった音の接がりも解決した新
着眼方式のマルチ・アンプ・システムを,近々に発表させていただけるかもしれないことを申し上
げて,デバイダーの説明にはいらせていただきます。
本体の構成について
デバイダーは バッファー・アンプとロー・パスやハイ・パスを構成するCR群とから成ることは良くご
承知のことですが,何といっても音を悪くしようと待ちかまえるCRを,いかにその影響から音を守る
かに,バッファー・アンプの生命がかかっていると思います。
そこで,バッファー・アンプに要求される性能について考えてみますと,
(1) 入力インピー夕ンスが高いこと
(2) 出力インピーダンスが低いこと
(3) 出力が大きくリニアリティーが良いこと
の大体3点です。
球やトランジスターのカソード・フォロアーやエミッター・フォロアーが良く用いられますが,(2)の点
で不十分ですし, トランジスターでなく管球式にしたのも(3)の理由からです。
本誌にも,良くトランジスター方式のデバイダーが発表されますが,残念ながら供給電圧以上の出
力を取り出すことは物理的に無理ですので,管球式のSRPPバッファーにて構成いたしました。
その理由を説明いたしますと, トランジスターのPPバッファーではVcc=±30Vを供給しても出力
は10V前後となり,デバイダーのポリュームを20dBも絞られると苦くしなり,とくにホーン・スピーカ
ーは能率の差があり,中音等は高音に比ぺてもそれ以上のレべル差があるために,デバイ夕ー
は絞られるという前提に立って考えますと,トランジスターでは無理なのです。
一応−40dB絞っても使えるものということですと,前記トランジスター方式は0.1V,管球式カソー
ド・フォロアー方式は0.4V,SRPP管球式は(Ebb=300V,歪率を0.1%以下とすると)の出力が得
られます。これならば-40dBの点でもメイン・アンプが十分動作できるし,また絞らなけれぱそれ
だけ動作上は余裕カあることになります。
第2図をご覧ください。これがノッファー・アンプの基本回路です。
第3図は,本誌でも良く発表されているSRPPですが,その動作について少し説明いたしますと,第4
 
図が原形回路で,’68年の「ラジオ技術」3月号でテクニクスのプリ・アンブのバッファーとして, ま
た’69年の同誌2月号で和田氏(小生の友人)のプリ・アンプにも同型が採用されており,アンプの
NFを極限まで深めたもので,これをバッファー・アンプ用に改造して採用いたしております。
第4図においてNF量を増加させるにはV2のRpを大きくして利得を上げ,βを大きくするためR−
NFを小さく, Rkを大きくすれぱ良いのですが,これを極限まで進めるR-NF=0,
Rk=∞とする
と第2図の基本回路となり,V1V2の全ゲインがNFBとなるため,出力インビーダンス約190α,
またNF量が多いのでノイズが大変少なく,歪率もEbb=300Vで出力80Vの時に0.1%以下とな
ります。V1のプレート抵抗も大きい方が良いのですが,回路に合せてカットアンド・トライで決定し
ました。
第3図のSRPPは本誌でおなじみの回路ですが,第2図との違いはゲインがあることで,V2がV1
の出力を分割した電圧でドライプされ,いまeg1の電圧でドライブされたとするとi1が流れますが,そ
のときRにはi×Rの電圧が生じます。
これがV2のグリッド入力となり,この電圧をeg2とし,RLを負荷として接続すると,この負荷に生ず
る電圧をe0,V2の出力電流をi2とすると,
e0=(ig+i2)RL
eg1=eg2=i1R,
i1=i2であるので,
この回路の利得をAとすると,
A=eo/egt=2i1RL/i1R
=2RL/R
また,A=2gm×RLとも表わせる
ので,A=2gm×RL
=2RL/R
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∴R=1/gmとなります。12A×7のgm≒1.2〜1.6ですから,Rは700Ω前後となり,負荷を50
kΩとすると,増幅度A=2×50kΩ/700Ω≒143倍の増幅度があります。
このように第2図と第3図では同じSRPPでも発想が違うのがお判りと思いますが,一番大きな違い
は本回路はゲインは0,出力インピーダンスが低いことで二段NFアンプ,第3図は上式でもお判り
のように,V1のRPをV2が代行しているような回路で,ゲインがあり,出力インピーダンスが高い点
が同じSRPPでも違うところです。そのような理由から,第3図のSRPPはバッファーには向きません。
バッファーはこれくらいにして,クロスオーバー・ネットワークについて説明しますと,前述の理由もあ
りますが,岩田さんのご希望もあって12dB/octのカットを採用することになりました。
第5図がNF型のいわゆる山根式デバイダーの略図で,CRはその時定数を選んで使うというおなじ
みの回路ですので,詳しくは教科書をお読み戴くとして,このような構成であることをご理解ください。

本体の構成について
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