コストパフォーマンスとコンパクトさも考慮した

電源内蔵型

管球式DCプリアンプの設計と制作
(無線と実験1981年10月発表)

 

昨年の1月号で発表させて戴いた管球式のDCプリアンブは,規模並ひに方式が大変複雑な上,コス卜的
にも―般の方々に手軽にお推め出来るようなものてでありませんでした
マニアのI氏は音の点で現在,考えうる最上と思われる方式を採用し,より完全さを目指されるのは理想
的で,それなりの成果は得られますが,コス卜,設置場所等の関係で,あそこまで追求するのは―応残念
でも我慢して(出来るかどうかは別問題として),コストパフォーマンスの良さに重点を置き,場所的
にも取り扱いの面でも比較的便利で,よリコンパク卜で,性能は大規模方式にそう見劣りしないプリアン
プをと思い,製作したものです.あれからもう既にl年半も過ぎましたが,現在の時点で見ても,TR
はリニアティ−の良さと,ダイナミックレンジの広さで,まだ球に―歩を譲るように思います
昨年もそう感じたのですが,TRの良さが思った程発揮出来ないのはトランジス夕―に問題があるので
あって,回路方式や少くとも他の部品に原因があるのていないと,現在でも私は思っていますコンデン
サ―や線や抵抗に問題があるのは当然で全てが完全な部品であるとは言い難いからです。
例えば抵抗ですが,ご承知の通りに純抵抗とは言えず,L分やC分も当然含んでおり,レジス夕ンスで
まなくインピ−夕ンスと言っても良いようなものもありますコンデンサ―やコイル等はそれ以上に複雑
に各成分がからみ合って構成されていますから,それらを交換すれば音が多少なりとも変化するのは当
然だと思います。しかし,コンデンサ−や線に多少インダクタンスやキャバシタンスが存在しても,そ
れによる影響を受けてもあまり変化しないように各部をコントロ−ルするのも―つの方法てすし,訳を
知って使えば良いのです。バワ−アンプで言いますと,スピ−力−のような(コ―ン型ド−ム型)場合
はインピ−夕ンスが何百Ωから何Ωまで変化するものを定電圧でドライブするのですから,他のバ−ツ類
の変化から比較しても大変条件が厳しいといえます.
 したがってスピ−力−を完全に近い程制御出来るアンブの場合はピ−力−までの線を交換しても音に大
した変化は出ないように思います。言い換えれば―般水準にあるアンプの場合は,スピ−力―コード等の
影響を受けにくい物程,コ−ドも含めスピ−力−そのものをよリ完全に近い状態で制御下に置いていると考
えてよく,線やC,Rの追加等によリ音の変化の少ないアンブ程良いアンプと言えると思います。
だからと言って何でも良いと言うのでは無く,理想に近いコードにこした事はありませんが,コストや見
た目や取り扱い勝手等も考えた上で決定されるのが良いと思います.多くのコ−ドが市販されている様で
すが,全体のコス卜に占る割合と,得られる音の比率を考える事が肝心だと思います。
―例としてコ−ドだけについて私案を申し上げましたが,これは他の部品についても全く同じで,雑誌で
良いと書かれると,それ無しでは過されぬ様に思われるのでしようが,自分の耳と目で確認されてから使
用されるのが賢明だと思います.ある条件では大変効果が出ると言う場合も多いからです。
今迄に寒いと言われて発売になった品物はな<,全てが以前のものに比較して良くなったと言われており
特にアンプは小数点以下何桁も零か続く様な歪率で,理論的に言うとほとんど原波形と同じものか出るア
ンプがほとんどですが,それでも音の点では完全に満足といかないのがオ−ディオの楽しみであると共に
不思議なところですそれだからこそ奥が深いと申せましょう。
 これらの点も考慮に入れて,コス卜パ−フォマンスが少しでも良いようにと考えて設計したのがこのプ
リアンプです。
☆ 電源内蔵管球式DCプリアンプ
前記I氏ブリアンブ(8O年l月号発表)をご覧になってない方の為にちよっと前回のブリアンプの設計
ポイントに触れてみますと,前回の電源別ブリアンプは次のような点に重点を置いて設計しました
@ダイナミックレンジの広いこと
A実在感のあること (そこで歌っている感じのすること)
B音源を感じさせないこと
C音のためなら経済性を無視しても採用すること
の4点でしたが,今回のアンプは@〜Bまでは同様ですが,Cの経済性の点を重視し,コストパ−フォマ
ンスと形状のコンパクト化を計り,使用上の便利さも含めて考えに入れて設計することにしました。
管球式でアンプを構成するのは@のダイナミックレンジがトランジスタ−より広く取れるからで,特にM
M型力−トリッジを使用する場合で考えますと,ちょっとTRではむつかしいと考えたからです
かりに出力5mV(1kHz/5cm)の力−トリッジがあるとします
1kHzで5mVですからI5kHzでは+17.17dBの入力になります
+l7川dBは約7.2倍ですから
5mV×7.2=36mV
の入力となります
レコードに録音出来得るダイナミックレンジは50dBとされています。
これは中音出力から見ると±25dBとなりますが多めに見て+3OdBと考えると,30dB=
31.62倍ですから36mV×31.62倍=1.14Vの入力となります
イコライザ−段でのゲインを3OdBとすれば,3OdB≒31.6倍ですから
1.14V×31.6=36.O24V
となり,大体36Vの出力を歪なく出せる必要があります
したがって卜ランジス夕−での36Vの出力は耐圧の関係もあってむずかしく,―応真空管の方が秀れて
いると言えます。
これらの点だけで考えるとイコライザ−段でゲインを稼ぐのは苦しく,と言ってあまりロ−ゲインですと
SN比の点で悪<なります。
これらが設計のポイン卜となりますが,他の条件を考えて見ましよう仮りにイコライザ−段で4OdBゲ
インを稼ぐとすると,4OdB=1OOですから,15kHzでは1.14V×1OO=114Vの出力
を歪み無く出せる必要があり,真空管といえども大分苦し<なります。これは高城だけの事で中音,低音
ではイコライザーの関係で,中音では高域が+17.17dBに対し,0dB,低域5OHzでは−l6.
96dBと入力の点では楽になりますが,NFBがそれに応じて少くなり(NFイコライザ−型の場合),
やはり同様の注意が必要になってきます。本機の場合以上のような理由もあり,イコライザ−段のゲイン
を低めに取り,その代りFETによるMC型力−トリッジ用のヘッドアンプを内蔵し,MM型とMO型と
を使い分けてゲインとSN比を無理なく稼げる様に考えました。
☆ 基本回路について
本体の増幅段回路を初めての方々のために簡単に説明しますと,各段がそれぞれ自動安定回路のバランス
型で,対称回路になつているものて懲,基本回路は前回と全く同じ考え方によるものです
第1図がその基本回路を示したものですが,その動作について簡単に説明します
最近,差動増幅器が作られ,多くのアンプで採用されているのが見受けられますが,これは2つの素子(
差動として働く)が揃っていればさえ(初期特性のみでなく,温度特性,増幅度,gm等)大変秀れた増
幅作用をすることは良くご承知と思います
 この回路はその差動増幅器と基本的には同じですが,普通の差動増幅器と異り便利な所は,入力と出力
がア−スに対して同電位ですのて晦,NFBを掛けたり,さらに何段も増幅段を増やすのに,何ら特別な
事をする必要もなく(コンデンサ−で直流を切ってやらなければならないような),何段でも直結出来る
という点が異っています。
簡単に自動安定回路について説明しますと,第1図において,供給電源電圧を全く同じ電庄とし,対ア−
スに対して+電圧を+側に,同様に−電圧を−側に供給します.そしてR1=R6,R2=R4,日3=
R5,と同じ抵抗値にしてやリますと,共通の抵抗であるR3の作用で球の内部抵抗が多少変化してもプ
レ−卜電流が―定となる様にバイアスされ,動作点が一定にたもたれます。
そこで正負の供給電圧を変動しない安定化電源(定電圧電源)から供給し,実際にはR1=R6,R2=
R4にある多少の誤差をバランスさせる為にR2とR4の間にバランス用の可変抵抗を入れ,真空管のア
ンバランスも含めてバランスさせ,ア−スと同電位に調整出来るようにしたものが,基本回路です。
前回も述べましたが,直結アンプのポイントは全てバランスに掛って来ますので,前述した抵抗(値より
何よりも揃つている事が大切で,多くの中から選ぶ必要が有リます)は元より各部のバランス,特に真空
管のバランスは大変重要です。
真空管はgmの揃った,すなわちバイアス電圧の変化に対するプレ一ト電流の変化の比の揃っているもの
を必ず使う必要があり,いわゆる静的な特性(−定電圧,一定バイアス時におけるプレ一ト電流,増幅率
等の各特性の揃っていること)だけでな<,動特性,特にバイアス等の変化に対して両ユ二ットが同じよ
うに変化する必要があり,ニの点を特に重視してgmチェッ力−で球を選択することがこのプリアンブを
成功させるポイン卜です。その点,真空管は温度の変化に対してはほとんど考える必要が無いので,トラ
ンジスタ−に比べて大変楽ですが,その反面真空管はヒ−ター電庄の変動によりエミッション(カソ−ド
からの電子の出る量)が極端に変化しますので,必ず定電庄電源から供給し点火する必要があります。
大体,以上の点が本織の構成のポイン卜です

☆本体の構成について

前述した通り,本機は経済性とコンパクト化も考慮に入れましたので,各パ−ツ類も特別な(別詫品等)
ものは使用せず,全て市販のパ−ツ類で構成しました。
まず肝心の真空管ですが,前回使用したECC8O8Sはやめて,ナショナルのECC83(12AX7
と同じもの)を使いました。
ECCSOSSと比べて多少球自身の歪が多いだけで大差ないと思いますしコストと入手しやすさと撰び
やすさということもあり,これに決定しました
第2図がECC8O8SとECC83とのデータ−比較及び電極図ですが,一番大きな違いはヒ−タ−電
力と両ユニットがシ−ルド出来るか,あるいはそうでないか,との違いですが、気になる方は当然ECC
8O8Sを使用すればよいと思います。
プリアンプのケ一スはアイデアル(摂津金属)のFE‐4OOOと書うケ−スを大きさの関係で採用致し
ましたがこのケ−スの力バ−には放熱穴が有りませんので,放熱穴を開けて使用しました
使用部品は,特に抵抗は温度変化の少い金属被膜抵抗を使っていますが,その点は良いのですが,形状か
らくる問題は容量が少し多くなる様て補正をしてあります。
ボリュ一ムは自作のアッテネ−タ−を使用し(80年2月号で拙文可変抵抗器についてに発表させて戴い
た考えによるもの)ていますが,これは各ポジションで浮遊容量の補正も兼ねた
もので,一般の方の場合はボリュ−ムまたはT型,H型アッテネ−タ−を使用すれば良いと思います。
ニのアッテネ−タ一はメインとファインコント口−ルに分れておリ,特別な場合を除けば少しのアッテネ
−タ−量で使う様にゲイン及びアッテネ−タ−を設計しています。
第3図が本織の本体の回路図です

第3図
回路図でお判りのようにPHONO−1にはMO型力一ドリッジ用にへッドアンプを内蔵しました。
理由は前述したように,今回のプリアンブでまMO型もMM型も使用し,両方の力−トリッジ共,歪みな
く広いダイナミックレンジを取るとなると,力一トリッジの出力が2OdBも違うために,プリアンプが
大変苦しい動作を強いられることになり,良好な音質が得られにくいからです。
一般には大は小を兼ねるで,音が大きければボリュームで絞って使えば良いと考えられるかもじれません
が,何しろイコライザ−段は常にフルパワ−で動作しているのですから,少しでも許容入力をオ−バ−す
ると著るし<歪みます.
ましてやボリュ−ムの回転角が0から少し回した所で大きな音量になるものがバワ−があるとか,余裕が
あるとか考えるのは少しまずいと思います.(音質の点においても)したがつてボリュームにしてもアッ
テネ−ターにしても最大でも使用出来る入力及びゲインにしておいて,必要に応じて上げるのでなく,必
要に応じて絞って使うのが歪みやSN比や残留ノイズの点でも有利ですし,さらにはスピー力ーの保護に
もなると考えています.だからこそアッテネ−タ−(減衰器)というのです。
以上のような理由から2OdBもゲインの違う入力をそのままインプッ卜出来るようにするには,高い方
に合せてプリアンプのゲインを決定しておき,低い出力の力−トリッジをその差だけへッドアンブで増幅
してやれば,その度にアッテネーターを回してやらなくても,そのままの位置で全く同じように使用出来
るだけでなく,他の電庄配分やゲイン等をその位置で最良になるようにアジャス卜してやれば,比較的良
いものが出来るとの考えによります。
それにより,ブリアンプのフロントステ−ジは27dB,リヤーステージはアッテネ−タ一の損失も含め
て2OdBのゲインとし,トータルゲイン+47dBとしました。
かりに入力5mVと称する力ートリッジを接続したとすると,47dBは約224倍ですから
5mV×224=1.12V
となり,普通のパワ−アンプの場合なら最大出力まで振る事が出来ます。かりに+3OdBの入力が入っ
ても(15kHzでは+17.17dB)前述の計算のように1.14Vの入力となり,イコライザ−段
での出力は,ゲインが27dBですから22.39倍となり
1.14×22.39=25.5V
の出力となり充分に耐えることが出来ます
そして出力の低い力一卜リッジの場合はその不足分だけ増幅してやるとすれば許容入力,出力の点でも変
化な<,不利になりませんヘッドアンプに採用したアンプは本誌76年I2月号でM氏も発表されオFE
Tのゼ口バイアス・へッドアンプです.
  これを採用した理由は 
@ノイズが少ないこと.
Aヒ−タ一の電源電庄を利用すれば特別な電源を必要としない.
Bゲインコント口−ルが簡単なこと
の理由によります
@のノイズの点を−番に上げたのは,いかなる増幅器でもノイズがあるのは良いことではまなく,少くす
るように,心掛けるのですが,今回は特にMO型,MM型と2WAY方式としましたので,音量は同じで
もMO型にしたらノイズが増し,すぐにでも判別出来るようでは何にもなりませんので,どちらに切り換
えてもノイズ量が変化しないように極力ノイズの少い方式にしました.
Aの供給電源の問題ですが,別電源源とすると,どうしても多段安定化となり,ア一スボイン卜の少しの
差でノイズが増加したりするので,他電源の―部を借りる方式としました
Bのゲインコン卜口−ルは牧氏の記事をお読みの方にはお判りと思いますが,簡単に説明します.FET
のドレイン抵抗をRD,電流をID,供給電庄をVcc,FETの増幅率9mとしますと
RD=Vcc×VD/lD
A=gm×RD
VD…ドレイン・ソ−ス間電圧
A…増幅度
したがってVccが―定であれは,RDによりゲインコン卜ロールが出来ます。
これはFETのgmを測定してぺア−を組み,電源とRDに合せるかまたはその反対に9mの方を合せる
かして,ゲインを決定する,いわゆる手作りアンプです
詳細についてお知りになりたい方は牧氏の記事をご覧戴くとして,今回は電源電圧が+10Vと決定して
いましたので,RDとgmの両方でアジャス卜し,ゲインを+17.5dBに決定しました。
約7.5倍の増幅度となり前述の入力から計算して,MM型5mVの場合は約O.67mV,MM型に3
mVの製品を使う場合は0.4mVの出力の力−卜リッジですと全く同じ出力になる計算ですが,力−卜
リッジの出力は大変バラツキが多く,計算通りにはなりませんが,l〜2dB出力が違ってもほとんど音
量の大小は音楽の場合は感じられません
しかしこの場合,へッドアンプの残留ノイズをプリアンプの残留ノイズより少くとも17.5dB+47
dB=64.5dBは低くしておきませんと,ノイズでどちらか判るといわれます。
このプリアンプの残留ノイズが1mVですからO.63μV以下が要次されますこれは大変むずかしい数
字ですが,確かに理論上はO.63μV以下であればプリアンプの出力には出て来ないことになるのです
が,前段のイコライザー段でのノイズが0.1mV=100μVはある計算になりますのて、それの−3
0dB以下であればマスキングされて耳には判別が出来ないことが判りました。
これなら何とか出来そうです.約3〜5μV以下のノイズとすれば―応判別がつきませんでした.
へッドアンプの件はこれくらいにして本体の方の説明をします.イコライザ一段,フラットアンプ段共,
両ステ一ジの後段のパスコン(I5μF)はゲインを稼ぐために電流帰還を掛けないようにI5μFのコ
ンデンサ一でパスしています。 これはI5W・Vのノンポ−ラ−型を入れましたが,別にどんなコンデ
ンサーでもよいと思います(オイル等)さらに前回と―番大き<異ることは,やはり電源が貧弱なため,
小生が希望する程のローノイズ化が出来なかつたので,1.3KΩと200μFでデ力ップリングを挿入
しています電源の残留ノイズが50μV程度ではやはり少しむつかしいようでした後日新らしいTR(高
耐圧のコンプリメンタリ−)が入手出来ましたので
別のプリアンプで実験してみると,このデ力ップリング無しで低ノイズが達成出来ましたので,後日,報
告出来ると思います。
いずれにしても,コンパク卜化した罪がこのような所に来たと,その時は思っていましたので―応やむな
くSN比の為にデ力ップリングを入れ,出力にそのドロップによる少しのドリフ卜電圧を力ッ卜するのに
コンデンサ−(第3図でCと表示のもの)を入れましたこれはアッテネ−タ―との間で時定数を持ち,当
然直流の増幅は出来ないので,DOアンプとは実際はいえないのですが,行きがかり上そのように仮称さ
せて戴きます.
この値はATTとの関係もあり,力ットオフをどこに持っていくかで決定すべきものですが,一定IμF
(MP)を入れ,アッテネーターの総合インピ−ダンスの約I27Kとで力ットオフ周波数は約I.25
Hzとしました.
☆ 電源部について
第4図が今回使用したタンゴのN‐12という両波整流用(6BM8,6BQ5PP用)で出力が端子板
に付いている
使いやすいものです.
もしもこの卜ランスが入手出来ない場合は,例えばタンゴのST‐130等で第5図のようにすれば±B回
路は代用出来ます.
必要電流は±共に約30mA程度ですから倍電圧整流のトランスを使われる場合はAC表示×0.3/4=
0.03A以上のものを使用されると良いと思います.すなわちAC表示0.4A以上のものです.
 写真のようにスぺ−スと交流磁界の関係でパワートランスとチョークトランスはケ−スの外に出してあ
ります.チョークトランスはラックスの5BC−1Oを使用しています.これはラックスのB型低周波チ
ョ一クコイルと言われるものて,大変良いチョークコイルと思います.絞りのケースに入っており,特に
今回のようにケ−スの外に出して使用するにはもって来いの形ですし,第6図のデ−ターのように5BC
−10は一応10Hですが30mAの場合は約I5H程あり,しかも内部抵抗は195Ωと低い値ですの
で,その点大変使いやすいチョークです。
 チョ一クでのドロップは
195p×0.03=5.85V
となります。出来ればこの程度のチョ−ク卜ランスを使用したいものです.第6図の電流とインダクタン
スのグラフで,直線に近い変化をし,そのインダクタンスの低下の少い物程チョークトランスとしては優
秀なものです。
 ただしこのチョ一クは完全シ−ルド型のためオーバーロードには弱く,ピッチが流れ出る場合がありま
すから,出来るだけ低負荷で楽に使ってやるようにします.そうすればうなりも無く大変長持ちします.
本アンプの場合は5BC−1Oは電流MAX19OmAを3OmAて使っていますので,+分余裕があり
ます。
 この場合,私でもすぐにデ−タ−の―面だけを見て5BC‐20を使えばよりリップルを低く出来ると
考えるのですが,第6図のように電流の変化に対するインダク夕ンスの変化がノンリ二アーなのと,内部
抵抗が倍以上にもなる点も考え合わせると,やはり5BC‐10が良いようです.
 第7図がヒ−夕−及ぴへッドアンプ用の安定化電源の回路で,前述のようにヒータ一はリップルよりも
電圧の安定性が大変大切で,AC100Vが90V〜110Vまで変化しても0.1V以内の変動でおさま
る必要があるため,レギュレータ−のTRのぺ−スを別電源からドライブして,エミッ夕ーに対し常に
一定電庄になるようにしています。
 ヒータ−電源の変動は次の通りです.AO90V〜110Vで電圧は不変でリップルがO.3mA〜1
mAまで変化しますが,初期の目的は達せられています.
 その出力側からへッドアンプ用の電圧を取り出していますが,一度安定化してあり,前述の通り電圧は
不変ですから,リップルを取ることに重点を置いたリップルフィルタを入れることにしました。
2段に安定化すればさらに良くなるのではと思われるかもしれません。トランジス夕−やツェナーダイオ
ードで基準電圧を作ると,そのノイズがぺースに流れ込んで高減のランダムノイズやフリッ力−ノイズと
なりSN比が極端に悪くなり,とても10μV以下のノイズにはおさまりません。
したがって第7図の電源となりました

しかしこれに使用するトランジス夕−は(今回は2SC945を使いましたが)少くともhfe4〜
5OO以上で,トランジス夕−のノイズの少いものを利用するようにします
かりに5OOのhfeのものが使えればべースに500μfを入れると500×500=250.000
μFのコンデンサーを入れたのと等価となりリップル及ぴノイズをおさえてくれます.
ただしこの計算にばかり目が行き、極端に大きなコンデンサーを入れますと,その充電に時問が掛るばか
りてな<,出力電圧がリークにより変動しますのて,このコンデンサ−も極力リークの少いものを選択し
てやる必要があり,極端に大きくは出来ません
その点,アフマチュアの方に多いのではないかと思いますが,良いといわれた部品を使用しさえすれば良
いという考えのもとに,とにかくそれを購入する.しかしそのような部品は不当に高い物が多いので,必
要以上に購入して選ぶということが出来にくい.そうなると,良いも悪いも無く使わざるを得ないという
ことになる場合が多いように思えます。それも楽しみの―つであるとは思いますが,オ−デイオは少しの
音の差が問題になる世界ですから,応々にしてバ−ツの差より,達別の差ととかバランスの差の方が大き
くなる場合もあるのですから,全て総合的に判断すると,良い結果が卜ー夕ルで出て来るように思います
この2SC945もIO0個の達別デ−タを見るとhfeだけでもl50〜600以上に至るまてイまと
んど均等に分布しています.ニの二とからも,いかに選んで使う必要があるかが判り,さらに選らばれた
石ならその何十倍もの価値の卜ランジス夕一より勝ります.
話を戻しますが,前述の達別の結果へッドアンプ用には10μV〜6μVの残ノイズの電源が出来ました。
高い値はACが90Vに低下した時の値いです
ヒー夕ーには6.3V×2.5Aを直列にしI2.6Vを使って、これをフジのIA用ダイオ一ドSlB−
O2を4本使いブリッジで整流し、レギュレーターの石は2N3O55を使用し、誤差アンプ用には前述
の選にもれた2SC945を使用しています。
ZN3O55は電流1.2A(ヒー夕ー8本分)とへッドアンプ用に少しの電流があれば良いので、大体
1.2Aとドロップアウ卜電圧が2.5Vですから損失はI.2A×2.5=3Wとなり、少し放熱が必
要です。内部にアルミ板を立てそれにマイ力板を付けて放熱していますが、ほとんど熱くはなりません
次に第8図に本機の高庄電源の回路図を示します
第8図
簡単に回路について説明しますと、+側−側共にダ−リン卜ンとインバ−デッドダ一リン卜ンとし、その
hfeの積によりべ−ス電流を少くし、より大きい抵抗を入れ定電流化を計り、安定化することにより見
かけ上のコンデンサ一の等価値を大きくするのを主体としています。
 2SD312のhfeを2O、2SC1929のhfeを100とかりにしますと、見かけのhfeは
2O0O倍となります
電源が90Vまて低下しても安定化するとしますと
0.9×22OV×1.4≒277V
までしか供給出来ませんので、安定化電圧は277V以下となりますこれは220Vタップを使用して両
波整流した場合ですが、不足なら250Vのタップを使えば良いのですが、卜ランジス夕一の耐庄の関係
で200Vが限度と思います。一応出力電圧を250Vとし、流れる電流を30mAとして、2SC19
29のべ一ス電流は30/2000=15μAが必要となります。
出来るだけべースの抵抗を大きくしたいのでチョークの前から少し高い電圧で取り出し、1kΩと2Oμ
Fのフィルタ−を通した後べースに電流を流すとすると、最良の条件でのべース抵抗は 
277V−250V=27
27V÷15×10-6=1.8×10Ω
=1.8MΩ
のぺース抵抗が採用出来る計算になります。
 しかし卜ランジスターのhfeは小電流の時は低下していますし、電源電圧も波高値いっぱい充電され
たとした場合ですので、多少でも電流を流せば低下します。
 ACIOOVが9OVまで下って、波高値の1.3倍までの充電電圧で、しかもhfeが1/4程度の
低下の場合でも安定化させるには、出力電圧を25OVとすると
0.9×220X1.3=257.4V
257.4V−250V=7.4V
lB=30/50O=60μA
7.4÷6×10−6−0.123×10−6
=123kΩ
となります。したがって一応100〜150kΩは採用出来ることになります。
レギュレー夕ーのロスを計算しますと、これはAC100Vの場合が一番苦しく、電流は0.03Aです
から
220V×1.4=308V308V−250V=58V
58V×0.03=1.74W
AC1OOVが11OVに上昇したとすると
22O×1.1×I.4=338.8V
338.8V−25OV=88.8V
88.8V×O.O3=2.664W
となり、+側−側とヒーター用の全
部を合せてもAC110Vの場合で
3.3W+2.66W×2≒8.62W
となり200cu(1mmアルミも)あれば充分だと思います
これは最悪の場合でAO1OOVがそのままの場合は
3W+1.74×2W=6.48W
となりもっと楽になります。しかしこれに引きかえ真空管のヒー夕ーによる発熱は
12.5V×1.2A=l5W
にもなり (これはAC1OOにより変動はしませんが)約2.3倍にもなります
ので、ケ一スに小穴を沢山明けて放熱を計っています。
上記により決定したのが第8図の電源回路です。例のごとく一次側には卜ランジスターの保護も兼ねてイ
ンラッシュプ口テク夕ーを入れ、23秒遅延させて100%電圧を掛けるようにしています。電源に使用
したダイオ一ドはフジのDS−1Kというハーメチックシールト゛型の逆耐圧1kVと称する1A用の夕
イオードで、逆耐圧を実測してみると全部が15kVをハ゜スしましたしたがってコンデンサー入力て使
用する場合は1500V÷2√2≒530VACまで使える計算になります。
このダイオ一ドは大変強く、悪い環境にもビクともしませんが(外側が緑青に変色するような所て使って
も)ただ少し転流ノイズが多いようなのが残念です。もしこれが改善されたら、最高のダイオ一ドと言え
ます
これらの安定化電源の設計については後日、安定化電源の特集にも記述することになっていますので そ
の時に少し詳しく述べさせて戴くとして、第8図の回路で出力250V時にAC90V〜110Vでリッ
プル出力は50μVの安定化電源となりました。
 まず B電源をダイオードの所ではずし、ヒー夕ーのみ電源が掛るようにします。
 そして出力電圧が12.5Vになるように1KΩに並列に抵抗を入れ、希望の電庄にします。固定抵抗
にしたのは大電流で不良になるのがいやで、可変抵抗器は使用しませんでした。
 ヒ一タ一が完了しましたら、へッドアンプの電源を測定し、ついでに前述したRDを微調しッゲインを
含せてしまいます。
 次いで±側のダイオ一ドをトランスに接続し、出力側の両方に2個の電圧計を入れ、徐々に電庄を上げ
て出力が250Vになるように5kΩの可変抵抗器を動かします。
当然それまてに充分各部のショー卜、対アースのリークをチェックし、ハンダのくずやリ一ド線の切れは
しが卜ランジス夕ーのエミッターやべースに接触したり、はまり込んだりしていないか充分注意して下さ
いそれから何らかの理由で本体を動かしたり、テス夕ーのリード棒等て内部をさぐる場合は必ず電源を切
り、その上完全に放電させてから行うようにして下さい。 何故ならトランジスターは内部掻抗が低い上
に大量のコンデンサーが入っていますので、必ずこれを面倒でも実行しませんと、すぐにトランジスタ一
をダメにしてしまいます。
これは小生の経験から申し上けています。
 これらが完了したらl台の電圧形て+側−側を完全に電圧を合せます。絶対値ではなく相対値で全く同
じしに合せる訳です。 それから各段をア一ス電位にすれば調整完了です。

製作後の感想

コンパクト化により大変扱いやすく小さくなりましたが、やはり音の面でも少しコンパクトになった感じ
がしないでもありません。大阪I氏のあの大規模の電源と比較すれば良く頑張っている方だと思います。
しかし人間は勝手なものでそれを考えないで比較してしまいます。他の形式や、市販のアンブとは比べる
べくもありませんが、やはりむつかしいものだと思います
しかしこのコンパクトさはまた捨難いものだとも思いなおしております

参考資料
(1)アマチュアオ一ディオハンドフック
   (オーム社)
(2)無線と実験l976年l2月号 牧氏記事
(3)ラックス 卜ランスデ一夕一
   (チョークデーター)
(4)タンゴ トランスデ一タ一
(5)ナショナル真空管ハンドフック

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