温泉に含まれている物質及びその量による分類。
各地の旅館・温泉施設のパンフレット・ホームページを見たり、多数の温泉ガイドブックを参考にした経験からすると、温泉の泉質表記について統一性を欠き、大変分りにくくなっています。
これはひとえに、行政上の泉質分類・表記方法が複数あるということに由来しています。

1.旧泉質名(1979年まで運用)
  「旧」の名はつくが、現在も広く使われているもので温泉の泉質を大きくは11種類に分類している。
  (例示:単純泉、単純炭酸泉、重炭酸土類泉、重曹泉、食塩泉、緑礬泉等)

2.新泉質名(1979年〜現在)
  温泉に含まれているイオンによる表示で、大きくは9種類に分類されている。
  (例示:単純温泉、単純二酸化炭素泉、ナトリウムー炭酸水素塩泉、ナトリウムー塩化物泉等)

3.掲示用新泉質名
  上記2のイオンによる表示は一般の人には分りにくいとして、温泉施設において掲示する分析書等に
  用いられる
掲示用新泉質名
  (例示:炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉等)

環境省では、温泉施設では上記の「3.掲示用新泉質名」に「1.旧泉質名」を併記するよう行政指導ているようですが、実際に温泉施設を回ってみると、
*温泉分析表の表示が見当たらない
*旧泉質名で表示
*新泉質名で表示
*掲示用新泉質名で表示
等、表示がバラバラで、統一されていません。
同じように温泉ガイドブックでも混乱が見られます。
ここは、行政として通達を徹底する必要があるように思われます。

ご参考までに「日本温泉協会」のホームページから、3種類の泉質分類の相関関係を転載しておきます

掲示用新泉質名 旧泉質名 新泉質名
単純温泉 単純泉 単純温泉
アルカリ性単純温泉
二酸化炭素泉 単純炭酸泉 単純二酸化炭素泉
炭酸水素塩泉 重炭酸土類泉
重曹泉
カルシウム(・マグネシウム)−炭酸水素塩泉
ナトリウム−炭酸水素塩泉
塩化物泉 食塩泉 ナトリウム−塩化物泉
硫酸塩泉 純硫酸塩泉
正苦味泉
芒硝泉
石膏泉
硫酸塩泉
マグネシウム−硫酸塩泉
ナトリウム−硫酸塩泉
カルシウム−硫酸塩泉
含鉄泉 鉄泉
炭酸鉄泉
緑礬泉
鉄泉
鉄(U)−炭酸水素塩泉
鉄(U)−硫酸塩泉
含.アルミニウム泉 含.明礬・緑礬泉など アルミニウム・鉄(U)−硫酸塩泉
含鉄(U)−アルミニウム−硫酸塩泉
含.銅−鉄泉 含銅・酸性緑礬泉など 酸性−含銅・鉄(U)−硫酸塩泉
硫黄泉 硫黄泉
硫化水素泉
硫黄泉
硫黄泉(硫化水素型)
酸性泉 単純酸性泉 単純酸性泉
放射能泉 放射能泉 単純弱放射能泉
単純放射能泉
含弱放射能−○−○泉
含放射能−○−○泉
温泉の分類
T.泉質

U
泉温


温泉湧出口での泉温による分類。

分類 冷鉱泉 低温泉 温泉 高温泉

泉温
〜25℃未満 〜34℃未満 〜42℃未満 42℃〜

*冷鉱泉・低温泉は加温する必要があるが、温泉施設によって、主浴槽とは別の小さめの湯舟に冷鉱泉あるいは低温泉を加熱しないでそのまま流している「源泉風呂」を見かける。
*高温泉は逆に温泉を冷ますか、水を加える必要がある。源泉100%の湯をこだわる温泉地・施設は、高温泉に加水せず、なんらかの方法で泉温をさましている。
*循環湯の場合、泉温は大きなポイントではない。
V.水素イオン濃度


pH(ペーハー)による分類。
分類 強酸性泉 酸性泉 弱酸性泉 中性泉 弱アルカリ
性泉
アルカリ性泉 強アルカリ性泉

pH値
〜2未満 〜3未満 〜6未満 〜7.5未満 〜8・5未満 〜10未満 10〜

肌にピリピリ感→                → 肌にサラサラ感             →肌にヌルヌル感
W.浸透圧

人間の細胞液と等しい浸透圧を等張性というが、、これの上下による分類。

分 類 低張性泉 等張性泉 高張性泉
1kgあたりの
溶存物質総量
〜8gm未満 8〜10gm未満 10gm以上

風呂に長湯すると、手の指ががしわしわになるが、これは低張性泉により体の水分が温泉に流れ出る状態。逆に高張泉だと、温泉成分が皮膚に吸収されやすい状態になる。
温泉旅館や日帰り温泉施設の脱衣室や浴室に、泉質の名称、含有成分、効能等が書かれた掲示板が掛けられています。温泉法第14条に基づいて、これを入浴客の目の届くところに掲示する必要があるからです。
これらの記載項目以外に、掲示板やパンフレットには、「弱アルカリ性・低張性・高温泉」といった文字も見かけます。
こういった温泉の分類について簡単に説明いたします。
療養泉
特に、治療の目的に供しうる特殊成分を一定値以上含有している源泉は「療養泉」として分類されている。療養泉として分類されれば、環境省通知により、都道府県知事の判断で、「適応症」について掲示しても差し支えない。