所在地 : 由布市湯布院町
温泉名 : 由布院温泉
施設名 : ほてい屋 (入浴日:2005.4.4)
宿泊施設のある温泉地は全国で約3、000ヶ所。
この内、各種温泉及び旅館ランキングの順位などから総合判断すると、「行ってみたい温泉地ベスト3」は秋田県・乳頭温泉郷、熊本県・黒川温泉そして大分県・湯布院温泉であることに異論は無いだろう。
因みに2002年9月の日本経済新聞社の日経プラス1温泉大賞では、読者調査の総合2位に加えて、「行ってみたい賞」を付与されている。

データは2013.4.25改定

データは変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。
「湯布院」と「由布院」
「ゆふいん」はもともと布院、江戸時代には一時、布院と書かれていた。
しかし、昭和30年2月に同じ温泉地の湯平村と由院町が合併した際、湯平の「湯」を取って「湯布院町」となった。 現在でも、駅名・温泉名・盆地名などをいうときには「由布院」の字を用いている。 
このことを知ったのはごく最近、愛読書である推理小説作家内田康夫氏の「湯布院殺人事件」を読み直したときだった。


町の北東端には標高1、584mの由布岳(ゆふだけ)(1584m)が聳えている。この山には豊後富士という優美な呼び名がある。しかし、実際に見る由布岳は、八合目から上は赤茶けた岩肌が露出した火山性の荒々しい山塊である。「ゆふいん」というやさしい響きの地名とは対照的に、怪奇な雰囲気を漂わせている。
由布院温泉は,湯煙で作られる朝霧の名所としても知られ、中央部には水田と住居地が広がり、周囲を1,000m級の山々がとり巻いている。
盆地内はどこを掘削しても温泉が湧き、
自噴+動力組み上げの総量は、1位の別府温泉に次いで、奥飛騨温泉郷とともに2位を争うほど豊富である。
別府方面から県道11号線(やまなみハイウェイ)で由布岳の南麓を巻いて進むと、狭霧台展望台に到着する。眼下には、背後に由布岳を控え、周囲を1000m級の山で囲まれた大きな盆地が広がり、低層の家並みがマッチ箱のように見える。日本人なら一度は訪れたい由布院温泉だ。
由布岳の南西麓に広がる東西12km・南北8kmの盆地、標高500mの高地に沸く由布院温泉。秋冬には至る所で吹き出る湯煙が立ち込めてできた朝霧が、町全体を包み幻想的な風景を展開するという。
一方、肝心の温泉は湯量が約40,000リットル/分と豊富なため、約120軒の旅館・ホテルの多くが掛け流しという草津温泉と並ぶ温泉力を誇っている。
しかし、これだけの規模の温泉地なら必ず見かける高層の旅館・ホテル、けばけばしいネオンや歓楽スポットが全く無い。
由布院温泉には、一般的なイメージの温泉街というものは形成されていないのだ。
由布院駅から金鱗湖に伸びる細い道筋の両側に、郷土色豊かな土産物屋・食事処・共同浴場などに混じって、小さな美術館・博物館・洒落たカフェやレストランなどが立ち並ぶ。
これらが渾然一体となってどこの温泉街でも見かけられない文化性が高い街並みを形成している。

この背景には右肩上がりの経済成長を実現してきた昭和40年代から、幾多の困難・反対を乗り越えて「温泉=団体・歓楽」を排除してきた由布院温泉の姿勢・努力が存在する。
また、毎年開催されてきた映画祭や音楽祭などが、日本の大温泉地には無い文化的知名度を高め、これらが特に女性の共感を得た。こうして、バブル崩壊後、全国各地で大型温泉地が衰退し、巨大ホテル・旅館が相次いで倒産する中、団体優先から脱し個人客の集客をいち早く目指してきた由布院温泉は、今日の繁栄を謳歌している。

全国の温泉を周って実感するが、今や、日本中の温泉地・旅館がこの由布院モデルを注目・参考として、後追いしていると言っても過言ではない。
ガイドブックの地図を見ると、ほてい屋はかなり中心街から離れていて散策するのに不便なように思われるが、これは全くの危惧だった。チェックインしてからすぐに散策に出かけたが、店や美術館などが立ち並ぶ通りまで徒歩7〜8分、散歩にぴったりの金鱗湖までも15分程度だった。
この散策中に気がついたのは、浴衣姿の宿泊客をほとんど見かけなかったこと。この点でも由布院は他の温泉地とは異なっていた。
ほてい屋は、私が戦時中に疎開した栃木県の農家で見た懐かしい風景だった。
広い敷地には、鶏が放し飼いにされている庭を囲むようにして、玄関先に囲炉裏小屋を設けた旧家風の本館、茅葺のくぐり門・茶室・離れ、その奥には広さも風情も異なる離れや露天風呂などが点在していた。
広い敷地に、客室は9棟の離れ(内3軒は露天風呂付き)の他に本館に2室、合計してもたったの11室というなんとも贅沢な造りだ。
大分自動車道由布院ICで降り、県道216号線を別府方面に進んで約5km、町に入って間もない左手に現れた目立たないほてい屋の案内板に従って左折し、狭い山道を2分ほど上るとほてい屋に到着した。
数多い由布院温泉の旅館から、ほてい屋に決めたのは次の通りだ。
・普通、旅館を選ぶときには、予算的に「中の上または上の下の大きくない旅館・ホテル」が基準だが、今回の11泊旅行では「二点豪華主義(由布院・黒川)」で行こう。
・一生に一度は「離れ」に泊まってみたい。しかし、いかにも高級旅館でござい、の雰囲気は避けたい。
・温泉が掛け流しであること。
・国道や県道から離れた自然豊かな場所にある旅館がいい。
これをベースに、5冊ほどの温泉・旅館ガイドブックや雑誌、インターネットで調査し、その中で見かけた「さりげない心配りがうれしい田舎風の宿で、四季の素材を盛り込んだ和洋折衷料理を味わう」の記事が決め手だった。
結果は? 結果は左の写真を見ていただければお分かりいただけると思う。旅館・ホテルに泊まって、スタッフの方々とこうした記念写真を撮る、撮りたい、と思うことはまずない。
風呂も料理も部屋もまったく文句無かった。加えて、さり気ない心遣い・スタッフ全員に絶えない微笑(ほほえみ)が醸し出す家庭的な雰囲気とたった一泊だが、時間がゆったりと流れるのどかな旅館の造りと自然、まさに「癒し」とはこのことだろう、と感じさせる上質な湯宿だった。
これらの満足感が、記念写真を撮らせることになったのだろう。

私たちが宿泊したのは、部屋付きの露天風呂がなくトイレのみの「寿」という離れ。普通は個人で申し込むが、今回は定年祝いに娘が贈ってくれた旅行券を利用したのでJTB経由で予約し、料金は@24,300円。離れでは最も小さな建物だったが、玄関・踏み込み・ベランダが付いた田舎風の和室の広さは十分だった食事は夕食が2〜3品ずつ供される部屋食、朝食が本館の広間で頂いた。
夕食は、移ろう季節感を取り入れ、和と洋
組み合わせ調和させた料理で、味だけでなく見た目も鮮やかだった。
(下記をご覧ください)


風呂は男女別の露天風呂と貸切露天風呂の3つがある。
男性用露天風呂の「大黒の湯」は、上の写真の通りかなりの大きさ、一度に20人くらいはゆったりと入浴できるだろう。背後の自然を借景とし、大小の岩石を配置して純和風の落ち着いた雰囲気を醸し出しており、くつろいだ入浴を満喫できる。湯船の近くには細い流れがあって、そこを小さな川魚が泳いでいた。
湯は無色透明のサラリとした単純温泉、温度は浴槽の場所によって変わるので、外気温・好みに応じて適温の場所を探して浸かろう。

ここにはカランも付いていて体を洗えるが、冬はかなり寒いと思われる。
貸切露天風呂は空いていれば、予約なしで自由に利用できる。もちろん無料だ。何せ部屋数が少ないので、混み合う時間帯を少しずらせば空いていることが多い。写真の通り、貸切風呂とはいえかなりの大きさ。4〜5人の家族が一度に入っても余裕があり、贅沢な入浴が楽しめる。
本館の前には囲炉裏が切られた小屋があり、到着時や散策後に葛湯とともにゆで卵やサツマイモが頂ける。
湯上り処の手前には氷に付けられた缶ビールやソフトドリンクが置かれている(有料)。
女将さんが餌を与えると放し飼いの鶏が近づいて来て、子供たちは大喜び。
本館のラウンジでは、午後8時から10時まで焼酎が振舞われ、自分で焼くアラレも食べられる。
住 所 大分県由布市由布院町川上1414
電 話 0977−84−2900
交通機関 大分自動車道由布院ICから約6km
JR久大本線湯布院駅下車タクシー
施設(日帰り用) 売店 駐車場(15台)
宿 泊 14室 〔和室(T2) 離れ(露天風呂付きBT8 内風呂付きBT4])〕
泉 質 単純温泉
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴時間(日帰り) 10時〜14時(要確認)
定休日 不定休
入浴料金 大人570円
入浴施設 露天風呂:男女各1、貸切内風呂1
浴室備品 シャンプー、ボデイソープ、ロッカー、ドライヤー
観光スポット 由布院温泉街散策・金鱗湖・耶馬溪・九重高原・国東半島
お土産・食事 土産は館内で可。昼食は温泉街に多数。
近くの温泉 湯平温泉・塚原温泉・別府温泉郷・壁湯温泉・川底温泉・生竜温泉・宝泉寺温泉・九酔峡温泉・筌の口温泉など多数
由布市HP
観光協会HP
ほてい屋HP
http://www.city.yufu.oita.jp/
http://www.yufuin.gr.jp/
http://www.hoteiya-yado.jp/
雑記帳 推理小説家・内田康夫の作品はわれわれ夫婦の愛読書だ。九州旅行の出発前、同氏の作品「湯布院殺人事件」を再読。ここに登場した旅館・亀の井別荘敷地内の喫茶・天井座敷を訪れた。
由布院温泉・ほてい屋 (大分県)
お献立

・食前酒 ・・・プラム酒
・先付・・・・・うぐいす豆腐 (天)蒸し雲丹・山葵・ラディッシュ
・前菜・・・・・手長海老すだれ揚・子持昆布・千車唐西京漬・寒天大根・
        絹皮と海賊の木の芽和え・利休万十
・吸物・・・・・土瓶蒸し・・・松茸・赤鳥・海老・寒天大根・銀杏・鱧・三ツ葉・カボス
・向付・・・・・旬の物三種・見立物一式・車海老・海賊

・蓋物・・・・・甘鯛の桜二見・鍵わらび・竹の子土佐煮・飯蛸
・凌ぎ・・・・・穴子の押寿司
・洋皿・・・・・白身魚とリンゴのシードル煮パイ包み焼

・台物・・・・・豊後牛朴葉焼
・揚げ物・・・山芋の磯辺揚げ・ふきのとう・蟹としめじの春巻揚げ
・酢物・・・・・ひらき海老・防風・酢取独活・鳥貝・(天)長芋・梅干・タタキ酢
・食事・・・・・山芋の団子汁
・デザート・・蒸しプリン・苺・メロン
風 景
料 理
7合目まで雪を被った孤高・由布岳の姿は美しかった。
女将さん(左から2番目)やスタッフの方々と記念撮影
湯屋の風情、脱衣場、風呂へのアプローチ、風呂の広さと構造、周囲の風景が一体となって趣ある露天風呂になっている。
宿泊した離れ・寿
懐かしい雰囲気の和室
貸切とはいえずいぶん広い無料の露天風呂
先付
前菜
向付
洋皿
酢物
飾らない朝食。アジのすり身を使った手作りちくわ(写真右上の竹の棒)も味わえる。
由布院温泉・山のホテル夢想園 湯布院温泉下ん湯参照