カレシカノジョの事情


 何もすることがなくてヒマなので、考えてみることにした。
 …いや、もちろん牧場いって働かなきゃいけないってのは…あるんだけれど。…行きたくねーし。あんなのに駆り出されるくらいなら、頭使っている方がいいかなっと思って。

 昨日の夜、アルター使って疲れていたから本当はさっさと寝たかったんだけれど、君島が真剣な顔して「やらせろ」なんて言うから、…じたばた暴れたけど、結局はさせてやった。ていうか、ほとんど、ムリヤリに近かったけど。
 ゴーカンプレイもなかなかイイナ、なんてアホみたいな顔でにやけられたから、嫌がるフリすればするほど君島の思うツボだと思って、抵抗するのやめた。
嫌がるプレイ(?)が好きっていうから、君島の好きなコトなんかしてやらねーって思って、自分から脱いでやった。
 カズマ君の服を脱がせるのが、また快感なんだよなーっていうから、その楽しみを奪ってやるって思ったから。
 自分から、裸になってみせて、ぽかんっとしてる君島に、えっへんと威張ってやった。ざまーみろって。
 そしたら。
『据え膳、サイコー!』
 なんてゆって、今日は奉仕プレイに転換だ!と君島はますますに元気になって。
 で、その言葉の通り。
『カズマくん、大きくお口あけてねー』
 結局は。
 いつもと同じ……だったりした。

 なんでなんだぁぁぁーーー!!





 仕返しにセナカに爪立ててみても、「ヤッテるって感じ?」って君島は喜ぶし。

 君島を思いっきり、困らせたい!!って思った。
 嫌がるコトして、参った!とか言わせる。
 ははーっって、ちっちゃいときテレビで見たジダイゲキに出てくるショウグンサマのカシンみたいに、オレに向かって頭下げる、君島。

 ふふふふっっと自然に笑いが溢れてくる。
 カズマは必死で考えて、「いつもむりやりエッチする君島に、復讐するために、君島の嫌なことをしてやろう計画」を立てたのだった。


 そして、牧場の仕事を休んで考えることにしたわけである。
 真実を牧場の女将に知られるととてつもなくヤバイだろうけれど、知られる情報源のかなみは既に牧場に行っているし、ジャマをするものはいないわけで。

「ぜーってー、君島をギャフンっていわせてやるんだかんなぁぁぁ!!」

 空に向かって元気良く叫ぶカズマだった。





 まずは、この計画を実行するためには、「カズマにされて、君島が嫌がること」を調べるしかないわけだ。それが分からないことには、全然前に進まない。しかもそれを知り得る為には、直接君島に聞くしかないわけで。
 で、だからといってそんなことを真っ正面から聞いても不審がられるだけで、そのことは鳥頭のカズマにも分かっていることだった。
 自分で調べるしかないかと思い、カズマは君島の部屋に行ってみることにした。昨日の夜に、君島が今日は一日情報屋の集会があるとかで大変だとグチを漏らしていたことを思い出す。

 低い廃墟のビル地下に降りる。埃っぽいけれど、人が出入りしているのが分かる程度に砂埃は舞っていなかった。薄暗いけれど、明らかに慣れた足で、カズマは一番奥まったところにあるドアの前に立つ。
 生活しているとはあまり感じないむき出しのドアノブの小さな鍵穴に合い鍵を差し込む。

 君島の部屋に行くときには歩いて行くけれど、帰りは絶対負ぶわれて車に乗せられる…というのが定番で。つまりは、ココは気兼ねなくエッチする場所…、みたいになっていて。ぼぼぼっっとムダに頬が紅くなってしまう。
 おいおいおいー、カズマくんってば乙女チャンじゃねー?なんて、きっとクーガー辺りにからかわれちゃうんだろうけど、幸か不幸かここには誰もいなくて、心おきなくじたばたじたばた出来ちゃったり。
「こ、こんなに恥ずかしい思いさせられるのは、君島のせいだかんな!!」
 訳の分からない新たな難癖を、ココにはいないコトをいいことに君島のせいにしてしまう。なんだか、じぶんにとってすべてのヤナことの原因が君島のせいなきがしてきた。

「あの、むかつくホーリーヤロウに負けたのもきっと、君島のせーだぁぁ!!」
 ちょっとまて、と誰も突っ込んでやれない一人きりの状況がカズマのココロを盛り上げてしまう。

 絶対、イヤがるコトしてやるかんな!

 新たに決意して、君島の「嫌がること」を探索することにせいをだそうと心に決めたのだった。



 というわけで、部屋に上がったのはいいものの。

「…どーしたらいーんだろ…」

 部屋に来たら弱みなんてすぐ見つかるさ!と思っていたわけでもないけれど。
でも、よく考えたら。

―キライなもんを自分の部屋においとくバカ、いるか?

「……」

 見慣れた、結構片づいている君島の部屋をぐるっと見渡す。机と、イス。ちょっと汚れたソファーに、ベッド。それから、クローゼットらしき収納庫。
 小さなキッチンには、必要最低限の台所用品。冷蔵庫が暗い中で白さを放っていた。
 なんの変哲もない、君島の部屋。
 ベッドにちらっと視線をやって。
 少し乱れたりなんかしてて。

 いつもココでしちゃってるコトが一瞬頭に浮かんでしまう。うわっと恥ずかしく思ってぎゅっと目を閉じてから。天井に視線を移す。
 そうしたら君島のベッドから見上げる天井が。
 微かに入るお日様に、少し明るさを色づけられてなんだか見慣れないもののように思えてしまう。
 夜と、昼とでは表情の違うのは。
 人間だけじゃなくて、命がない物体も、なんだなぁと。
 思ってしまった。


「…って感心してるバアイじゃないじゃん」

 慌てて視線を部屋の内部に戻して、思考を現在の問題に向け直す。
すると部屋の隅を陣取った机の上には「ぱそこん」なる箱がでんっとおいてあるのが視界の中にとんっと入ってきた。
 仕事に使うらしいけれど、カズマにはよくわからない物体だ。

『かじゅまくん、これだけはさわんないでね。オレの大切なもんだから♪』

 えらく真剣な瞳で言われてしまったので、ちょっと拗ねてしまったけれど。
 でも、コレで君島が仕事をしているのを知っていたし。
 大切にしていたのも知っていたから。
 
 でも、なんか楽しくないなぁっとカズマはそのパソコンをほんの軽く、ぴんっと指先で弾いた。そのさいにひらっと一枚の紙が机の上から落ちたのに気付いて、カズマは小さく小首を傾げた。


「なんだろ、コレ?」

 小さな字が並んでいるけれど、5歳児カズマには読めない。
 しかし、中央に写真が載っていて、それをじっと見つめた。
 短髪の少女が、少しきっちりとした服を着て澄まし顔でたっている、そんな写真・・いや、絵で。
 何処かでみたことがあるなぁっと、少ないカズマメモリーバンクの中から必死で取り出そうと頑張ってみる。
 たしか、たしか…たしか……

「そーだ、人形だ!!」
 だだだっとカズマは少し駆け足で壁際に置かれた棚の方に走ると、その中央にガラスケースの中で鎮座ましている一つの人形、いわゆるフィギュアを見つけだす。それは、ショートカットの少女で。

『大隆起現象が起こる何十年か前に、めちゃはやってたアニメのヒロインだぜ』

 君島はそのアニメにめちゃくちゃオタってたらしく、このまえなんかソレの画集が手に入るかもといって、一ヶ月分の稼ぎをほとんどソレに費やしていた。
「…こんなンの何処がいーんだろ…?」
 だって、人形じゃん…アニメじゃん?
 オレより、コッチの方がイイのかな??

 
『ああ、かわいいじゃん、すっげー好み★健気なんだよなー、主人公のオトコノコのためにさ、自分の命を捨てようとするわけ』

 それがいいわけ?
 そんなの、健気なんかじゃ、ないと思う。

『わっかんねーかなぁ、かじゅまくんには?守りたいって思う女の子が、逆にオレのことを守ってあげたいからって、言ってくれるんだぜ?オトコのロマンですよ、ロマン』

 しまりのない顔で、へにょへにょになって笑ってる君島になんだかムカツいて。ぶぅっと頬を膨らませたら、君島に。

『ばカズマ』

 そう言われて、キスされた。
 なんかそのあと、君島がゆっていたけど。
 思い出せなかった。


 トトンっと窓のガラスをつつく音がして意識をはっと、現実に戻す。窓の外に茶色と白の羽根をした小さなトリがガラスをつついて。また空へと帰っていった。
 再び棚に顔を向けて。
 目の前の人形の儚げな笑顔が、なんだか痛くなってきてカズマは小さく息を吐いた。そのときに、がさっとビニールで包まれたモノが視線に入って、カズマは不審そうにそれを見下ろした。柔らかい何かが入っているようで、小さくなっていたけれど詰まっている、というような感じだった。何かを購入してきたのだろうか。
 少し考えたものの、当初の目的遂行のためにもそれが何かを突き止めることにして。カズマはその紙袋から中身を取り出した。



「……なんだよ、コレ……」


 がさがさっとあけると。中からは何か布の塊が出てきて。
 それは、さっきまで自分がなんだかムカツキながら見ていた人形が着ていた、君島曰く「萌える制服」だった…
 あまりの展開にカズマは一瞬膠着してしまう。何なんだ、一体…ていうか、コレ、なんで、こんなとこにあるんだ?だって。だって、コレって「アニメ」なんだろ?なのに、実物の制服??
 「コスプレ」なんてモノを知るはずもないカズマにとっては頭の中が?で埋め尽くされても仕方のないことだろう。
 しかし、そんなカズマにも君島の「おたく」がなんだかかなりヤバイところまでイっちゃってるような気がしないでもなくて…ずずずっと心がひきそうになってしまうけれど。

 でも、しかし。

 再び視線の中に入る、ガラスケース中の人形の「儚げな笑顔」が。
 すごく、挑戦的に見えて。


『この制服が似合うのは、私だからよ?』


 なんて聞こえてくるような、そんな表情に見えて。


『君島くんは、私が一番可愛いって言ってくれたのよ?』


 なんて自慢しているように、見えて。



 君島の、顔が浮かぶ。そんなめちゃくちゃ男前、なんてわけじゃねーし。
むしろ、3枚目って言うんだと思う。クーガーの方が体だってがっちりしてるし、カッコイイし。劉鳳だって、あのタマ男だって、カッコイイ、て言うんだと思う。君島なんかより。
 でも、でも。

 スキだって囁いてくる声が。
 すごくカッコイイと思った。
 真剣な瞳で、時折見つめてくる顔が。何より、カッコイイなって思った。
 ばかみたいに、好きだなって思えてしまって。
 ま、いっか、ってエッチして。
 いろんなこと、させられても、好きって思えたからいいかなって感じて。

 しんっとした、この部屋の空間がとても冷たく感じ始めてしまった。
 涙が出そうになったけれど、オトコノコは泣いちゃダメだぞっていうクーガーの言葉を思い出してぐっとガマンした。

 そのかわり。
 その制服をぐっと握りしめて。
 人形を見返して。

「お前なんかに、まけねーかんな!!!」

 オトコノコは負けず嫌いだから。
 すくっと、立ち上がってカズマはぐっと両手を握りしめた。

「シェルブリッドのカズマに、負けはねーんだよ!」

 完全に、当初の目的を忘れてしまっているようだった。
 指を自分の着ている服にかけて。
 ひとつずつ脱いでいった。






「……こーだよな…?」
 可愛く絞られた制服の袖に腕を通して。
 セーラーテラーのブラウスのボタンを留めていく。

「??あれ、おへそがみえちゃうぞ、これじゃ…」

 ばんざいっと手を挙げると、ちらっとおへそが見えてしまうのに気が付いたけれど、まぁいっかと襟を正して。
 それから次はズボンを脱いで、短いフレアタイプの淡いピンク色がかったスカートをはく。
 ミニスカートなのか、膝上20pといったところか。

「ううう…なんだかすーすーするぅ…」

 ウエストの方もお尻の方も測ったかのようにぴったりで。
 考えれば不思議だったが、そこまで考えるほどの余裕はモチロンカズマにもなかったわけだった。
 白い長いものが出てきて、靴下だということに気付く。人形を見ると彼女は短いソックスをはいていたのだが、きっとなかったのかなと思ったくらいで、その長いだらんっとした靴下を履く。

「これって、るーずそっくすってやつだよな…」

 かなみが確か、こーやってはいていたよーな…と適度にのばしてたるませてはく。
 悪戦苦闘しつつもなんとかはいて。

「なんだ、こりゃ・・?」

 大きなリボンのカチューシャが出てくる。赤いソレを、なんとか頭につけて、おちないようにピンで止めてみる。

「よっし、かんせーーー!!」

 がばっと立とうとして紙袋から、細い赤いモノが見えて再び中をのぞき込んだ。

「…リボン……」
 ちらっと人形を見るとやはり彼女の制服にもその赤いリボンが可愛らしく付けられていた。
 それを取り出して、カズマは最後にもう一度だけ紙袋の中をのぞき込んだ。もう、なにも入っていないことを確認してから、カズマはそのリボンをセーラーテラーのところに付ける。
「これを、むすべば…終わりだよな」
 その赤いリボンをもって、カズマは立てかけられた壁鏡のトコロにトテトテっと駆け寄った。ふわふわっとスカートが揺れて、細い白い足がとても綺麗だった。


「我ながら可愛いぜ、にんぎょーなんかより!!」


 にょほほっと、カズマは少し優越感を感じながら鏡に向かって笑いかけて。

 完全に、その頃には。
 何のためにこの部屋に来たのか?とか。
 それって、めちゃくちゃ君島を喜ばせることじゃないのか?とか。
 っていうか、そんな女子高生制服が似合ってどうよ?とか。
 可愛くていいのか?とか。
 劉鳳が見たら、多分ハナジ噴くぞとか。

 きれいさっぱり頭の中から消えていたカズマで。


「りぼん、りぼん」


 最後の難関をカズマは必死で戦っていたのだった。







 好きな人には自分が一番って思って欲しくて。
 がんばってみるけど。
 でも、自分だって、好きな人が一番だって思いたいんだから。
 思えるように、オレのこと、スキになってくれる?
 べたべたに、好きになりたいもの。

 いつも一緒にいることだけが、愛じゃないけど。
 言葉で表すだけが、愛じゃないけど。

 でもでも。
 それぞれの、心の事情。

 複雑だね。










「…で、何やってンだ?カズマァ…」
「……ぅぅ……」

 なかなかにハードな仕事交渉が今日は立て続けにあって。
 ウチの、カズマがどれだけ強いかを、必死でアピールして。
 手に入れた大きな仕事があって。

 で。
 その、「強い、アルター使い」が。


 可愛い白いセーラーブラウスとピンクのスカートをはいて。
 白くて華奢な太股見せて。
 赤いリボンがうまく結べなくて、ふにゃあっと泣きそうになってる…なんて。

 それって、なんですと?
 みたいな。

「きみしまぁ…」
 大きな仔猫の瞳が涙に潤んで自分を見上げてくるのが、それはちょっとそのカッコウで…はヤバイでしょう?分かってる、カズマ君、君がどんだけ今可愛く鳴いちゃってるのか?
 しゅるるっと襟から赤いリボンを抜くと、そのしわしわになったそれを手の平に載せて、見下ろしている自分に向かって差し出す。
 腕が上がって、ブラウスの裾がそれとともに少し上がる。その下からカズマの白い素肌が見えて、細い腰が顕わになる。

 うわ、コレって、めっちゃオレってすっげーじゃん?

 君島は自分はやっぱ天才かもなんて思ってしまったり。
 自分の好きな、アニメ。
 出てくるヒロインの制服がとても可愛くて好きで。
 特注してつくって貰ったモノ。
 もちろん、サイズはカズマに合わせて。

 測る必要なんかないわけで。
 だって、毎晩、夜はその体を思う存分抱いてるワケなんだからさ。目測でオッケーみたいな?
 ルーズソックスなのは、もちろんオレのシュミ。
 赤いカチューシャはコレもオレが好きなアイテムで。
 逆にコイツに似合うかもって思ったからで。

 一つ一つに愛情たっぷりってか?

「きみしまぁ!!何ぼーっとしてんだよ!?結べっつってんだろ!!」
「……は?・・っあ、ああ。分かりましたよ、かじゅまちゃん♪」
「バカ君島のくせに、かじゅまっていうな!」

 ぶぅっと膨れるカズマの手をとってぎゅっと引き上げる。
 おお!スカートの長さもカンペキジャン!?
 …っていうか、なんでココにカズマがいるわけ?
 ついでに、なんでコレ着てるわけ?

「…カズマ、お前さ…なんで…」
「ムダ口叩く前に、ちゃんと結べよな!」

 ふんっと、ふんぞり返って胸をきゅっと反らして自分の方を向いているカズマのワガママ姫ぶりに心の中で溜息をつきつつも、とにかくリボンを結ぶことに集中する。リボンの結び方にも色々あるが、自分が一番気に入っている結び方にする。柔らかく大きめに結んで、ふわっとさせるのである。
 うーん、可愛いなぁ…。

「すっげーな、君島。きよーだな!」
「はいはい、お褒めに与り光栄ですヨ」

 こんなところで感心されてもあまり嬉しくないが、とにかくその制服美少女っぷりが激プリ激ストライクなので、全然よしとしよう。

 リボンを結び終えると、カズマはそのまま再び壁鏡のトコロに駆け寄ってくるんっと一回りしている。ほんわりと空気を含んでカズマの髪が揺れて、それからスカートも同様に揺れる。

 可愛すぎる…。
 さっきまでの君島の疲労はぶっとんでしまう。
 今日は家に帰ってから、昨日届いたこのコス衣装をいかにしてカズマに着せるかということを考えようと思っていたのだが。
 まさか扉を開けるとそこに、その制服を着て可愛く泣きそうになってるカズマが目に飛び込んでくるとは思っても見なかったわけで。何がなんだか分からないが、奇跡に近い現状だ。

「君島!」
 突然強く呼ばれて。はっと顔を上げる。
「・・な、なんだ?」
 座り込んだ自分をきゅっと、腰を曲げてのぞき込むようにして見下ろすカズマの不思議そうな顔を見つけ、君島はどきんっと、大きく心臓が飛び跳ねる。
 化粧する必要もないくらいに、滑らかな肌と、唇の赤さが犯罪だ。
 そのまま押し倒すか?と思ったトキ、にこぉっっとカズマは笑ってから、ふふふっと不審な笑い声を漏らす。

「…カズマ…くん?」

 微妙に不気味で君島はひくっと頬を引きつかせてしまう。
 美少女微笑はたやさないまま、カズマはすたすたとその制服のまま壁際に移動して、それから棚にあるモノにちらりと視線を移したように見えた。
「…?」
 それから。
 すっと右手が伸びたかと思うと、かしゃんっと何かが割れる音がした。
 そしてカズマの手に握られたモノ。

「あああああああ!!!!!!!!!」

 …それは、そう。
 自分が大切に飾っていた、某アニメヒロインの、フィギュアだった。
 
(まさか!?ばれたのか!?)
 自分がカズマ用に特注し、あまつさえその制服を着せてコスプレえっちを敢行しようと企んでいたことを!?

 右手にその人形をもって少しずつ近づいてくるカズマが。
 可愛くて、可愛くて。もー、理想通りで。
 でも、こわっ!!


「きみしまぁ?」
 にゃん?っと甘えんぼ声で、大きな瞳をきゅるんっとさせつつ自分を見下ろしてくる天使なカズマに。スカートの中から黒い尻尾がぴょこぴょこっと見えているような気が・・した。

「はい、カズマくん!!」
 とりあえずイイコの返事をした君島に、カズマはにっこりっと再び笑顔を見せてそれから。アルター常備装備中の右手をくわぁっっと…

「うわぁぁぁ!!!…って…え?」

 ファーストブリッドで玉砕!?と覚悟を決めたが一向にその衝撃がくることもなく君島はおそるおそる目を開いたら。
 ででんっっと、のーてんきに笑っている少女の人形が…突きつけられていた。

「……か、カズマ?」
「よーくみろよ、君島!!」
「……」
「前に、コイツが可愛いっつったよな!理想だとか、一番大切だとか!!」
「は?!」

 コイツ…って、この人形のことですか?
 確かに、言ったような……だが、それとこれと…

ぼへっときっと多分まさにアホヅラをかましていただろう自分に向かって、人形をつきつけたまま、カズマは可愛く問いかけてきた。


「オレと、コイツと、どっちが可愛い?」



「は…?」


 時間が止まったような、一瞬。
 ひゅぅぅぅっっと冷風が自分の周りを駆けめぐっていった錯覚を憶える。

「…オレと、コイツと。どっちが大切?」

「…は!?」

 現実に帰ってこい、自分。
 そう励まして、それからカズマの今までの行動と今の言葉と、自分が昔言った(らしい)言葉を総合して考えてみる。
 
 目の前にある、人形。
 それと同じ制服を着て、ちょっと縋るように見てる(妄想)カズマ君。
 まさか。まさか。
 あまりにも、可愛いカズマの考えにブチ当たって。必死でこみ上げる笑いを押しとどめて、それから答えてみた。

「…ソイツ…っていったらどーする?」
「…!!」

 じっと見つめていたカズマの瞳にぶわぁっっと涙が浮かんできて。
 びっくりして君島は大きく、首を振った。

「ちげぇよ!!お前だよ!お前に決まってンだろ!?」
 そう言って君島は慌ててカズマのもとへ駆け寄って、その体を抱き寄せようとしたけれど、その手からするりと身を翻してカズマは壁際に逃げる。
「カズマ!」
「…君島の、バカやろー!!オレのこと、すきじゃねーの?オレより、人形の方が可愛いのか?…おんなじカッコウしても?可愛くねーの?」
 ひくっと涙が溢れてしまったのかカズマは、乱暴に目尻を手の甲で何度も拭う。その姿に、あちゃーと君島は自分の考えがほぼ正解だということに気付いた。
 強いアルター使い、のハズの少年が。
 こんなに繊細で可愛くて。
 困ってしまいますよ、本当に。

 でも、ホント、スキなんだよ、お前のことがさ。

 君島はゆっくり壁際に近寄って、その両腕でカズマを囲ってしまう。もちろん本気を出して抵抗したらカズマに勝てるわけないけれど。そんなことはしないだろうと分かっていた。

「ごめんな、カズマぁ」
「…っぅ」
 泣き声を押し殺して、きゅっと目を閉じて泣いているカズマがひどく繊細で大切で、本当に、守ってやりたくて。
 こんなカッコウしてくれるくらい自分を好きでいてくれるカズマが本当に愛しくて。
「一番、アイシテルヨ」
 そう、柔らかい髪に口づけて、告白、なんてしてみた。



「君島・・?」
 ぎゅっと抱き締めてくる君島の力にカズマは少し顔を上げて、コイビトの表情を確認する。
 あったかい君島の手が、カズマの頬に添えられて。
 カズマの唇に温かいものを降らせた。
 薄いブラウス越しにカズマの華奢な躰のラインを感じながら、それをたどるように君島は腕を回した。
「ん…」
 口づけられて、力の抜けたカズマの右手から、ごとんっと音を立てて人形が床に落ちた。
 あ、と思ったけれど。君島の腕が自分を離さないでいてくれて、嬉しくてカズマは、そのごつごつした彼の背に。
 自分の腕をゆっくり回した。


 ベッドにそのまま押し倒されて。
 天井を、やっぱり今回も見ることになってしまって。
 カズマは一体何のためにココに来たンだっけ??と考えてみた。
 しかも、なんだかしらないけれど、こんなカッコウまでしてるし…

 そう、確か…最初は……


 思い出そうとした瞬間、君島の手がスカートの中に緩慢な動きで入ってくる。むき出しの太股を悪戯するように何度も撫で上げる君島の指に、カズマの体が小さく震える。


「やだ・・」
「スカートだから、触りやすいな、やっぱり♪」
「・・!!」

 にやっと笑ってくる君島の胸に手をやってカズマは抵抗しようとしたけれど。手を挙げた瞬間、ブラウスの下に今度は手を入れられて、胸を弄ばれてしまう。もっと感じるところを攻められて、カズマの視界が潤んでしまう。

「ひぁ…っ!」
「カズマ君、敏感ですねぇ」
「ば・・かぁ…ん!!」

 ブラウスをくいっとたくし上げられて腕の自由がままならなくて、カズマは君島にその胸の飾りを晒しだしてしまう。可愛らしく立ち上がったソレを、君島は指で挟み、軽く先端を舐めあげる。
「やぁ!!!」
「いつもながらに、甘くてホント、イイ感じの赤い果物じゃん♪」
「き、みしまぁ…ん・・っぁ、ふぁ…」

 半開きになったカズマの唇に再び自分のソレを押し当てて。それからふと疑問に思っていたコトを口にした。
「そーいやさ、カズマ。お前、なんでココにいたわけ?」
「…!!」
 あきらかに、びくんっっと体を震わせたカズマの反応が興味深くて、君島は耳元で低く囁いてやる。
「カズマ?」
「…別に、なんでも…ねぇ…っっ!やぁ!ん!!」
 潤んだ瞳でもって睨み付けてくるカズマの果実をかりっと甘噛みして、そのまま、手で少年の中心を爪で刺激してやる。
 根本を握って、さらにせめてやると、カズマは可愛い声で鳴き始める。
「ぁぁ…ひぁ・・やぁだ…もぉ…」
「じゃあ、さ、なんでココにいたのか言って見ろよ?」
 意地悪く言う自分の声が届いていないのか、カズマは何度も首を振りながら、君島の舌と指に翻弄されて喘ぐ。
「こーら、カズマ君。ちゃんっと尋ねたことには答えなきゃねぇ」
「…!?いや・・だ!!やぁ!!」
 ぐいっとスカートから伸びたカズマの足を持ち上げて、その中に割り込むように君島は体を入れる。くぃっと二つ折りにされて、カズマの細い腰がひくっと震える。
 秘められた紅い園が、君島を誘惑するように、小さくその入り口を見せていた。

 くちゅんっと、湿った音共に軽い衝撃がカズマの躰の中に巻きおこって、より高い嬌声を唇から生み出す。
「はぁ…ぁぁ!!!やだぁ、いた・・いぃ!!」
「一本しかいれてねーよ、カズマ?」
 挿入した指を曲げて、内壁をくぃっと刺激する。
「ひっ・・んぁ!」
「なぁ、カズマ?なんでココに来た、ワケ?」

 オレに食べられに来たの?
 あんな可愛いカッコウして。
 オレに、選択を迫って?

 そんなに、オレのこと好き?
 そんなに、オレとのこと、不安?


 カズマは小さく目を見張って、最後の言葉に大きく首を振る。

「そ、じゃ…ない…だって。オレ…っ」
 ぐちゅっ。
 腰にかかる負担が増える。
 小さな入り口が、どんどん開かれていく痛みと、衝撃と。快感。
 
 君島の指が、自分の体をかき混ぜる。指を伝わる血液の流れが、自分の体の中に伝わってくるような、何も考えられなくなるくらいの、強さと痛み。
 安心して。
 ココに、いるんだって。
 オレと同じくらいに、君もオレのこと、好きでいてくれてるって。

 バカみたいに、寂しくて。
 怖くて。


「ずっと、君島に…そばに…いて、欲しかったから……」
 一生懸命、必死で、意識を保って。
 カズマは瞳を開いた。
 君島の、顔を見て言いたかったから。

「だから…」
 君島の嫌がること、して。
 参ったって言わせて。
 もっと、もっと…

「スキになって欲しかったから…」

 ぎゅぅっと抱きついてきたカズマに君島は少し唖然として。
 そんな言葉が出てくるとは思わなくて。
 可愛いなと思って。
 愛しいなぁと思って。
 君島は、指を引き抜いて、自分の高ぶりをソコに押し当てた。
 どくんどくんっと脈打つ膨れ上がった欲望を、カズマの躰の中にいつまでも存在させておけたらいいのに。
 大きくのけぞる、華奢な躰を、君島は押さえつけて、何度もその欲望を、キモチを少年の体の中に刻み続けた。

「…もっ、と…きみし・・ぁっ」
 熱にうかされるように何度も鳴く掠れたカズマの声が、耳に気持ちよくて。
 君島は、おもいっきり最奥まで自分を突き入れ、柔らかくて熱いカズマの内側に思いの丈を解き放った。
 同時に君島はカズマの高ぶりを手の平に受け止めて、急激に力が抜けていく腕の中の少年の唇に、もう一度口づけた。


「ばか、カズマ。好きにきまってんだろ?」

 この存在だけ。
 自分が、傍にいたいと思える存在は。
 そして、傍にいて欲しいと思える存在は。
 気高くて、純粋で。

 不安なのは、自分だけだと。
 そうおもっていたけれど。







「君島…?」
とろんっとした瞳で自分の名を呼ぶカズマの頬を軽く摘んでぷにっと引っ張ってみる。突然の行為に、大きく目が見開かれる。
「いひゃい、はにゃせぇ」
 じたばた暴れるカズマにくくっと笑いがこぼれる。そのお返しにカズマからぱしっと猫パンチを食らう。
「いきなりいたいだろー君島!!」
「だって、きもちいーんだし」
 このぷにぷにがさ!そういって再び触れようとしたけれど、直前でガードされ、ちっと君島は舌打ちする。
 べぇっと舌を出すカズマに、こちらも反撃をくわえる。
「だぁぁ!どけろ、君島!!」
 カズマの躰の上にでーんっとのっかる。まぁ、さっきまで載ってたんだけどさ。しかも動いてたし。
 ぺし!
 カズマから頭に一撃食らう。
「何やらしい笑いしてやがる!」
 あら、気付かれてしまったらしい。
 にやけた顔は生まれつきだって言いたいけどな。
 君島はそう心で思いつつ、それでもどけようとは思えなくて。

「重い!!!」

 そう叫ぶカズマを無視。
 身長は自分の方が低いけれど。体重は多分オレの方が上だろうな、とカズマの華奢な躰を見て思う。
 ブツブツ言いつつも、諦めたのか文句も消え失せているカズマをぐっと自分の腕の中に抱き締めて。

「なんだよ、君島?」
 まじまじと腕の中の少年を見つめる。
 制服が微妙に乱れてる。スカートからのぞく足に、少し白いモノが見えて。アレってやっぱ、オレのアレ?
 うわ、マジ、もっかいしたくなるじゃん?

 カズマの濡れた唇が赤くて、君島の喉がなるのを感じる。


 はぁ・・と溜息をついて、君島は体を起こした。
 そんな君島をカズマはベッドに寝そべったまま瞳だけで追いかける。

「どした?」
「いや、さ。ま、オトコノコだなオレって思ってさ」
「…?」

 ぎしっとベッドが軋む音がして。それ以外は何も音がしなくて。
 二人の微かな息づかいだけが部屋に響く。
 あまりに静かで、カズマは寝てしまってるのかも知れないなと思って君島はちらっと視線を向けると。
 カズマは目を閉じないで、じっと天井を見つめていた。
 なんか、マジで、可愛くて、好みで。
 ホント、理想のタイプの、カノジョ。(つーか、オトコノコだけどさ)

 アレは、ホントオレのモンなのかなって思うコトが多々あって。
 バカみたいだけど。

「なぁ、カズマ。オレの一番の嫌なコト、教えてやろーか?」
「…?」

 ベッドから降りて、君島は床に跪いて。
 カズマは、ゆっくり体を起こして。
 下から見上げるように、君島はカズマを見つめる。

「お前に、悲しそうに泣かれるのが、一番イヤだよ」

 だから、泣かせねぇよ。

「お前が泣くのは見たくねーからさ、お前をオレが守ってやるよ」
「…ばか」
「だからさ、オレの…」

―傍から、離れンなよ

 ちゅっと、君島はカズマの手にキスをして。
 カズマはすとんっと、ベッドから落ちた。

 視線が、並ぶ。


 目の前に、恋する人。
 目の前に、愛する人。

 目の前に、大好きな人。

 3枚目で、いつもおちゃらけてて、カッコイイなんてタイプじゃくて、カレシとして自慢できるタイプじゃないけれど。
 やっぱり、カノジョにとってはカッコイイ人で。

 バカで、短気で、ワガママで、だけど可愛くて健気で、純粋で。なんだか自分にはもったいないくらいけれど。
 やぱりカレシにとっては守ってやりたい人で。

 一緒にいたい人で。


 カズマは君島の唇にちゅっとキスして。
 いたずらっぽく、上目遣いで笑いかけて。



「傍にいてほしかったら、オレをもっと、もっとお前に惚れさせて見ろよ?」



 ぎゅっと抱きついて。
 君島は小さく答えた。

― 分かりました、オヒメ様。

 そう言って、もう一回二人で笑い合った。


それぞれ事情はありますが。
やっぱ、結局好きなんですよ、コイビトだから。


 END
COMMENT:・・むだに長い話になってしまいました(涙)しかも、なんだかコスプレですよ!!カズくん、ついに禁断のコスですよ!!ああ、もう、シュミにはしった話を書いてしまいました・・・しかも、久しぶりのえっちあり!小説。しかもぬるい。おいおいおいー。ていうか、今回はとにかく、最後のセリフをカズくんに言わせたかったから書きました♪いや、もちろん、スカート姿のカズ君も・・・ていうか、制服のイメージは、TO HEARTのマルチなイメージで(死)ああ、どんどん、イロモノ小説サイトになっていく・・・・・・。ていうか君カズ待ってる人っているんでしょうかね(笑)いや、最近あまりに劉カズしかないので・・・。