いつも都合のいいように使われて。それでも仕方ねーなって、頭掻いて。
一つ年下の、ワガママアルター使い。
可愛い顔してるクセに、性格は凶暴で。
オレのこと、何だと思ってるんだろうと怒鳴りつけたくなりつつ。
何でこんなに頭が上がらないんだろうなって考えることもあったりして。

でも、結局一つの解答にたどり着いては大きく溜息をつく。
小振りだけれど、柔らかそうな唇。
何度も、キス・ ・ ・ ・ ・ ・させて頂いた、紅いソレ。


「こんなに、アイシテんだぜ?」


 分かってるのかい?ジャジャ馬お姫様?


 最近つとに、ワガママで。
 ちょっとオイタも過ぎるから。

―オシオキ、してみようか?

 自分の傍らで裸体をシーツにくるまれて、すやすやと眠る愛しい姫を横目に。
 仕事用の携帯電話を取り出し、プッシュする。

「あ、もしもし…オレですけど。……」

 微かな、空気の動きを…その背中に感じながら、君島は静かに用件を、伝えた。



「あのさー、オレだってヒマじゃないんだよ?」

 ガタゴトガタゴトと地面の悪さだけとは言い切れないくらいの揺れが乗車する二人にも襲いかかる車内。
 呆れたような男の声が疲れたように息と一緒に吐き出される。
 全面の窓ガラスから広がる景色は荒涼とした荒れ地。以前は水田にも使われていたのかも知れない、地面には不自然なくらいの凹凸が認められた。そんな、道とは言えない場所を古びた乗用車が走り抜けていく。いつもジープ中心の君島にしては今回は珍しい乗用車タイプだった。

「だって、暇じゃん?」

 きょとんとしたような、無邪気な声が隣から聞こえてきて、運転手…いや、アッシーくんとでもいったほうがいいのかもしれない…にさせられた君島は頭が痛くなるのを感じてしまう。
 そんな文句も聞く耳持たずで、頭の後ろで軽く手を組んで、助手席にちょんと座っているのは少し生意気そうな少年、カズマだった。かなりご満悦の様子で、ふんぞり返って座っている。一体この車の持ち主は誰なんだ?と言わんばかりの態度だった。


「仕方ねーじゃん?オレ、アイツがどうしてるのかって気になっちまったんだから」


 以前、君島からの依頼で関わった小さな少女の様子が見たいと言い出したのはいきなり、今日の朝。かなみと同じ年頃の少女で、自分たち同様親や身よりのない少女だった。君島の口利きで、小さな農場の仕事につかせてもらったようだったが、その後特に連絡は取っていない。

『かなみが熱だしちまって…ちょっと気になったんだ』

 そう理由付けするカズマの少し拗ねた口調を読みとって、そして本当の理由を理解する。意地悪い思いを心の中に抱くけれど、君島はいつものように、しゃーねーな…と頭を掻いて、カズマのワガママを笑って受け入れた。
 くしゃっとカズマの少し赤みがかった柔らかい髪に指を絡ませると、君島はいつものように、かなみに声をかけた。
「ちょっとコイツ、借りて行くから」
 いくつもの含みを忍ばせながら、君島は無邪気に手を振る少女に笑いかけた。





「お前が気になったんなら、お前1人で行けよ。なんでオレまで」

 君島は1人でブツブツ言いながら、アクセルを踏む。地面がでこぼこしているためか、アクセルを思いっきり踏んでも大したスピードは出ない。むしろガタピシとどこかで不穏な音が聞こえてきて、こちらの不安をムダに煽ってくれるだけだ。
 カズマが君島の発言に少し首を傾げている様子をミラーで確認する。きょんっとした瞳に邪悪なモノは何も感じられず、ただ可愛いだけだ。
 けれど発言内容はそれを完全に否定したモノだった。

「だって、あそこの農場までどれくらいあると思ってんだよ?歩いて行けるわけねーじゃん。それに、オレが行きたいっつってんだし、じゃあ君島もいけばいいじゃん?」

「……」

 わけのわからないカズマ理論に君島はがくぅっと肩が下がる。

「あのなあ…カズマ……」

 何か言おうとして口を開きかけるけれど、結局何か言う言葉も用意できず盛大な溜息をつくだけが関の山だった。そんな君島に、カズマは罪のない表情で運転するマイアッシーくんを見つめた。

「…?何だ?オレ、なんか変なこと言ったか?」

 もういいです…小さく呟くと、君島はアクセルを目一杯踏み込んだ。





 突然無言になって、ひたすらアクセルを踏み続ける君島にさすがのカズマもおかしいと思ったようで、ちょんちょんっと運転する年上の男の服を小さく引っ張る。

「…んだよ…」

 そっけない言葉にカズマはちょっとビックリしてしまうけれど、でも何となく反抗されたみたいな気がして、むむっと上目遣いで君島を見遣る。

「何怒ってンだよ?どーせ、オレが誘わなくったって、後でついてくるだろ!?いっつも、そーじゃん!!」

 だからって、今回もそーとは限らねーだろ?と、やる気なさげに吐き捨てる君島の言葉に、カズマの表情は少しずつ複雑なものになっていく。
 それを横目で確認しつつ、君島は小さく唇に笑みを浮かべる。傍目には分からないくらいに小さく。
 確実に、この単純でワガママな可愛いお姫様を追い込んでいることは確かだったから。

 一日がかりで農場へ行って戻ってきた帰り道。既に周りは薄暗くなっている。荒野は人が通るはずもなく、また車自体が珍しいこのロストグラウンド市外で誰かに会う確立はほとんど皆無。大きな岩の影を車が走り去ろうとした瞬間に、低い声で計画通りの言葉を発する。



―いつも、お前の思うとおりになんて、ならねーよ?



 ばんっとハンドルを握る君島の腕がキツク掴まれた。

「な、何すんっ…だ!!おわぁぁ!!」

黒い手袋がはまった、カズマの指がその両腕に絡められ、その衝撃でちいさく車は跳ね上がるけれど、その指は腕から離れない。

「君島のクセにぃ!口答えすんなよなっ!!!」

「カ、カズマ…!!…チ!!大人しくしろ!」

じたばた暴れる華奢なカズマの体を左手で自分の胸元に閉じこめ、君島は大きくバランスを崩しつつも、アクセルからブレーキに踏み変える。
 ふがふがともがくカズマを無視して右手でしっかりハンドルを握りしめ、衝撃に備えた。

 キキキーっというヒステリックな女の金切り声のような音を辺りに響かせながら岩壁にぶつかる寸前で車はなんとか乱暴に止まった。激しくバウンドした車の動きでカズマの体がそのまま君島の腕の中で小さく跳ね上がる。
 甲高いブレーキ音がひとしきり静寂な空気に浸透すると、辺りは再び静寂に包まれる。

 なんとか暴走した車を止めて、君島は右手で額の汗を腕で拭いた。それから胸元に抱きかかえた柔らかいモノに気付いて、表情をキツクする。

「カズマ!てめぇ、何考えてんだ!?」

 日頃そうそう怒鳴りつけたりしない君島の、大きな声に君島の胸に顔を埋めていたカズマはびくんっと小さく体を震わせた後、顔を上げた。けれど、なんとなくまともに君島の顔を見ることができなくて、ふいっと視線をそらせる。

「…君島が悪いんだからな……」

 そう拗ねた口調のカズマを君島は冷ややかに見つめると、両腕をカズマの肩に移動させ、がっちりと掴んだ。
 それから上から圧力をかけるように押さえ込みながらコトバを発する。

「自分にヤマシイことがないなら、人の顔見て言えよ、カズマくん?」

 意地悪い声でそう、カズマを挑発する。内心、自分でもなかなかやれるもんだと心の中で苦笑していたのだが。

 その挑発にカズマはキっと、上目遣いで君島を睨み付ける。きゅっと上がった瞳に妖しいくらいの色気を感じて君島は背中がゾクリとする。

「君島が悪いんだよ!!口答えなんか、するから!」

 双方の瞳に、一瞬頼りなげな光が浮かんだかと思うと、カズマは腕を振り上げて君島の手から逃れようとする。が、その手首を逆に乱暴に掴まれる。
 その掴む力が、カズマの知ってる君島のとは違っていて、体が一瞬逃げてしまう。それを逃さず君島はカズマの体を拘束した。
 狭い車内では抵抗もできず、暴れようとしても窓ガラスがジャマをしてうまくいかない。そんなカズマに自分の顔を近づけて、君島は自分の唇をカズマのそれに重ねるように囁いた。


「お前さ、オレのこと、何だと思ってるわけ?」
「きみ・・んんっ!ぁ…」


 言葉と共に吐き出そうとした吐息を君島の唇が乱暴に塞ぐ。性急すぎる舌の動きが、突然のことに硬直してしまっているカズマの口腔を征服していった。絡められる舌から、くちゅくちゅと湿った音が車内を包み込む。
 君島は素早く後ろへ引いてシートをたおすと、押さえつけたカズマの体を組み敷く。

「ぅぅ…ふぁ……きみ…しまっ」

 抵抗する力が抜けきったのを確認して君島は最後にカズマの唇を舌で舐めあげたようとした後、もう一度深いキスを施そうと唇を重ねた時、カズマはガリっと最後の抵抗をする。

「っ!!」

 君島の唇の端から、一本の紅い筋が重力に従って流れ落ちた。その血が、一滴、ぽとりとカズマの唇の中に吸い込まれていく。
 ぺろっと舐め取り、染まるカズマの舌が艶やかに動く。そのくせ、自分を潤んだように見つめてくる瞳は透明なくらいに透き通っていて。そのギャップが君島の心を捕らえて離さない。

 すべてを、手にしたいと思ったから。
 自分たちの、不平等なままに均衡の保たれた関係。
 絶対に屈することのない目の前の少年の魂を自分は閉じこめたくて、手放したくなくて、自分だけが見ていたくて。



「あのさ、カズマ。オレが何でもお前の言うこと聞くって思ってるわけ?」

 顔に薄い笑みを浮かべて、君島の唇がカズマに残酷な言葉を吐き付ける。
先ほどの行為でうっすらと紅く染まった目尻に煌めく涙が溢れそうになって、カズマはぐっと力を入れる。自分を組み敷く男を、静かに見つめる。


「…思ってるよ、当たり前じゃん」


 ふんわりと、柔らかに。可愛らしく微笑むお姫様に、君島は満足そうに笑いかけた。


「ワガママだな、相変わらず」





 周りは既に、日も落ちて東の空からはまだ輝くには早い月が顔をのぞかせていた。
 太陽が沈むまでは、輝くことのできない月。
 すべての生命を支える輝ける光は、身を隠す。
 そして。
 闇が、訪れる。




「なぁ、カズマ。オレ、結構欲張り、なんだぜ?」

 従順だけじゃ、手に入らない。
 だから、少し。
 手を加えてみようと思った。
 カズマの意外に細い手首を、脱がせた服で縛り上げる。
 イタイから、ヤダと大きく抵抗するけれど、それはただのカズマの演技。
本気でイヤならアルターで攻撃してしまえばいいのだから。

 カズマのなめらかな素肌に、君島の体が重なる。ゆっくりとなで上げる指の動きが緩慢で、じれったいくらいに緻密な速さでカズマを苛む。
 愛撫という優しい養分を与えられたカズマの体は、どんどん実が熟していくようにキレイに紅く染まっていく。


「や…めっ…きみしま…」
「どこがイヤだって?相変わらずやらしー体してんじゃん、カズマくん」


 君島の手の平がカズマの胸元まで到達する。紅く色づいた2つの果実が、ぴくんっと可愛らしく立ち上がっていて、君島の手の中に収まる。ぐりぐりと円を描くように撫でつけられるその動きが、果実を確実に潰していき、カズマの唇から泣き声のような嬌声が漏れる。

「ぁぁ…ん!!やめ…っ…ぁ」

 苛め続けた胸の飾りを舌で攻めながら、指をカズマの下肢へと伸ばす。さっきまでの胸へのイジメと口づけで、既に敏感になっていたそれは、カズマの中心で小さく震えるように主張し始めていた。
 折れそうなくらいに細い腰を掴み、君島はカズマの足を大きく開かせる。
じらすかのように、その指は中心のサイドを指の平でくりくりさせてカズマを追い立てる。一向に中心には触れてくれない君島に、カズマはきゅっと閉じていた瞳を開けて懇願する。そこに意地悪な微笑を浮かべる君島を見つけてびくんと小さく息を飲む。

「あのね、コレ、わがままなカズマクンへのオシオキなんだよ?」
「はぁ…ん!…!!ヤメ!!もぉ…」

 縋り付くように自分を見つめてくるカズマに嗜虐心が煽られて、カズマのソレを乱暴に握りしめる。くちゅっと先走りが君島の指を少し汚した。

「イタ…い…放し……んん!」

 君島は縛り上げていたカズマの腕の戒めを解いて、力の抜けた片方の腕を開いた手で捕まえる。

「…なに・・?…っぁ!!」

 君島の手の中に捕らえられたカズマの中心を爪で器用に愛撫する。

「もぉ…イキ…たい」
「まだ、ダメだよ、カズマ。だって、お前ばっかり気持ちよくなっても意味ねーじゃん?だってさ…」

 途中で言葉を切った君島を、涙で揺らめくカズマの黒い瞳が捉える。映っているのが自分だけだということに、密やかな快感を感じながら、君島はゆっくりと続ける。

「今日の約束は、アヤセさんと…だったんだ、それを反故してお前につき合ってやったんだからさ」

 そう面白そうに話す君島から、すっとカズマは視線をそらせる。
 ぎしっとシートが軋む音がする。



「それなりに、ご褒美、くれるよな、カズマ?」



 いくつもの紅い跡が刻まれた、愛しのオヒメサマの体をゆっくりと自分の胸の中に抱きしめる。
 それから耳元で、低く囁いた。



―でなきゃ、もう言うこと聞いてやんないよ?



 固くなった君島のソレと自分のが擦れ合って、カズマの背中にびくんっと快感が走る。けれどそれをもっと求めるようにカズマは君島の体に自分の肌を押しつける。背中に回された君島の腕が自分の体を包み込む感覚にうっとりとカズマは呟いた。


「…いいぜ?君島…何でもやるよ」


 カズマはすべてを委ねるように、君島の首に自分の腕を回した。 


 荒野の夜は、冷え込むから。窓の外には露が少しついていて。
 まるで、涙を流しているかのように、ガラスの上を滑らかに放物線を描いて落ちていった。





 昨日の夜、カズマを抱いた朝に。電話をした。
 背中に微かな、視線を感じながら。
 すべて、アイツを手に入れたいと思ったから。
 アイツにオレを手放したくないと思わせたかったから。


 揺るぎない、不等号の愛の関係。
 不等号の向きは、変わらないのですか?
 不等号は、等号にすらならないのですか?


 一つの賭け。
 携帯のプッシュを押す。
 でたらめに。そして。


「もしもし、オレですけど…アヤセさん、明日夜会いませんか?」

 ツーツーという音が耳元で響いていた。






「……ふぁ!んっ!!もぉ…くっ」

 あえやかなカズマの嬌声が、君島の理性を吹き飛ばして本能を猛らせる。
カズマの拙い指の動きが、意外にもヨくて、君島の中心をどくんどくんっと大きくさせていく。

「いいぜ、カズマ。ちゃんと出来るじゃねーか」

 ぬるっとした先走りの白い液が、カズマの滑らかな指を汚していく。

「これくら…い……オレだって……ぁぁ!!やっ!」

 カズマは自分の上で艶やかに体を震わせた。つぷっと、濡れたような音がカズマの後ろから淫らに響く。

「まだだ、カズマ。しっかり馴らせとかないとな」

 そういって君島の指がカズマの秘所をかき回した。絡みついてくるような柔らかいカズマの内に差し入れる指を増やす。大きな熱い塊が、カズマの体を駆けめぐるようなそんな衝動を覚えるけれど、でももっと苦しいのに熱くて、狂おしいくらいに求めるあの衝動にはほど遠い快感。
 ずっと経験を積まされてきたカズマには、指だけでは到底足りなくて、もっと熱いモノが欲しいと心が、体が叫ぶ。

「もぉ…きみしまぁ……」

  自分の指で、大きくした君島を愛しそうに撫でた後、甘えるようにカズマは君島の体に自分の肌を重ねた。


「甘えても、ムダだぜ?」


 そういって柔らかな体を自分から引き剥がし、泣きそうになって自分を欲しがっているカズマに優しく、しかし酷薄に言葉を紡いでみせる。

「オレを気持ちよくさせてみろよ?そしたら、ずっとお前の言うこと、聞いてやるよ」

 ぐちゅりとわざと音をたてて、指を引き抜く。

「お前の、ココ。ヒクヒクしてんじゃん、早くいれねーと、入り口が戻っちまうぜ?」

 イタイのはいやだろう?と優しげにカズマの腰を両腕で掴みあげる。両手で掴めるんじゃないかと思えるような細腰が、誘っているように微かに揺れる。

「君島……」

 君島の表情を静かに見ていたカズマは諦めたように瞼を閉じると、両手を君島の胸につき、自分の手で大きくした男の凶器を自分の秘所に恐る恐るあてがった。先端が入り口に触れただけで、その猛々しいくらいの熱さにカズマの体が恐れるように震える。そのときのカズマの表情の艶めかしさに君島はのどがコクリとなるのが分かった。


「早く、しろよ?カズマ」


 躊躇っていたカズマの腰を、ムリヤリ自分の上にすとんと落とす。
 ずぶずぶっと君島のが自分の中に入っていく熱さと痛みに、背中をびくんと反らせてしまう。押さえようのない、悲鳴にも似たカズマの喘ぎ声が車内をさらに淫猥なものにしていく。


「ふぁ…ァアアアッ!…や、んぁ!!!」
「ほら、自分で動けよ?」


 腰を軽く突き上げるだけの、中途半端な攻めをカズマに与える。
絡みついてくるようなカズマの内部を自分のソレが我が物顔で侵略する行為。
カズマは震える両腕で必死に自分の体を支えて、腰を上げる。すっぽりと包み込んだ君島自身がぎちぎちと音をたてて自分の中から抜かれる。つかの間の開放感と、そして喪失感がカズマを苛む。
 
 完全に抜けない程度まで腰を引き上げた後、カズマは再びその腰を下ろした。再び来るだろう衝撃に耐えるために、ぐっと両腕で自分の体重を支えようとした、その両腕を。君島は、掴みあげた。


「ぁ!…うぁぁぁっっっあぁ」


 バランスを崩して体重がすべてかかり、さっき以上の濡れた音をたてて、カズマの最奥の方まで君島が侵入する。


「…やぁ…奥に…何か…当たって……」


 背中を反らして、快感に耐えるカズマの限界が近いということを君島は読みとり、繋がったまま上下を反転させる。それだけで体内が抉られるように、快感がカズマの体を突き抜けて、必死で君島の体に縋り付く。


「きみ…しまぁぁ…もぉ、オレ、ダメ…」
「もう少し、ガマンしろよ」

 ぐいっと大きく開かせて、カズマの腰を持ち上げる。
 君島は上から自分のすべての体重をかけて、挿入を繰り返す。

「やぁ…ぁ!アッ…くっ」

 熱くなっていく体の体温が二人分、どんどん上昇していく。回されるカズマの腕が、君島の背に微かな痛みを伴わせるけれど。
 もう、麻酔がかかっているかのように、そんな痛みは感じない状態で、ただひたすらにカズマを感じる。途切れる吐息を、空気に溶け込ませたくなくて、君島はその唇を自分のソレで塞ぐ。

 カズマの瞳から涙が何粒も流れて、彼の頬をキレイに濡らす。
 こんな、ほとんど強姦に近い行為を行っても、抱きしめるカズマは穢れることもなくて、そして誰に染まることもなくて。
 嫉妬をあおがせたら、あいつの気持ちがずっと自分に繋ぎ止めておけるとか。
 そんなバカなことまで考えるくらいに。

 ぐいっと何度も何度も、カズマの体を貫いて、縋り付くカズマの腕を、自分だけを求めるカズマの痴態を独占したくて。

 カズマのそそり立つ欲望に手をやる。

「ぁ!んんん!!」

 乱暴にそれを握りしめると、君島は解放を促すように指先で細かく撫で上げつつも、根本をぐっと締め付けてカズマの解放を許すこともしなかった。


「もぉ…、ムリ…きみしま…っ」


掠れたような、甘い響きの。許しを求めるカズマの悲鳴のような喘ぎ声が。
ただ、自分をカズマが認識している唯一の証拠のように思えて。
それが、バカバカしいと思いつつも。手放せなくて。


「君島ぁ……」


 舌足らずに、名前を呼んでくるその声が。


「許して欲しかったら、…オレをアイシテルって言えよ、カズマ」

 なんてブザマなんだろうって。
 バカじゃねーかって、思いつつも。
 カズマのそれに最後の愛撫を加えて。
 このワガママで自由な存在を手に入れたいなんて思った時点で。
 はっきりいって、既に勝敗なんて決まっていて。

 するりと、背中に回されていた柔らかいカズマの腕が離される。
 そして、その指が。

 サイドガラスから降り注ぐ月の光が、キレイにカズマの瞳を、涙を金色に光らせたのを君島は見つめる。
 背中から離れたカズマの指が、震えながら君島の頬に添えられる。

 くいっと君島の顔を引き寄せて。

 カズマは自分の唇を、君島のそれに重ねる。
 触れるだけの、キス。
 体温が、感じられるくらいの。
 幼いキス。


 そして、その後カズマの濡れた唇が言葉を紡ぎだす。


「何言って・・・ンの…君島?」


 その言葉が、さっきの自分の言葉への、カズマからの解答。



 唇が離れようとした瞬間に、君島はそれをムリヤリ続ける。
 舌が絡み合い、苦しく喘ぐカズマ自身に、指で最後の愛撫を加えた。

「ふぁ…アァッ!!」

 感じきった声が、カズマの唇から紡がれる。君島の手に、とろっとしたモノがほとばしる。
 そして、自分を受け入れていたカズマの内部の締め付けが君島の欲望を最高潮まで高まらせて。


 アツイカズマの内部に、その欲をすべて注ぎ込んだ。


 君島の頬に添えられていた、細い指が、静かにシーツに沈んでいく。
 ゆっくりと意識を飛ばしていくカズマを、君島は静かに見つめる。
 その紅い唇が、小さく動いた。


―バーカ


 そう、君島には聞こえた。







ワガママはいつだって聞いてやっていた。
ブツブツ文句いっちまうけれど。車だって何台もぶっ潰され続けていたけれど。最後にはいつも許してやってた。
でも。

突き放したら、アイツはどうするんだろう。

離したいワケないけれど。
すべてを自分は欲しいけれど。

アイツはどうなんだと。

こんなに愛していても、一方的なのかと。

お姫様には、いつまでも高みにいて欲しいと願うのが、従者の気持ちだったりするけれど。
でも、従者だって人間で。


 いっそのこと、完全に突き放してしまえたらいいのかも知れないね。
ウソでもいいから、言ってみれば。


「もう、お前なんて、いらねーよ」
 

 小さく呟いてみる。
自分の胸の中ですやすや眠る、ワガママミダラで純粋なお姫様。


頬をつんと人差し指でつつく。

何者にも屈しない、まっすぐな瞳。
無垢な寝顔。
そして、自分を虜にしてしまう、無邪気で艶やかな笑顔。


 いっそ、マジで言えたらいいのに。
 お前の、お世話はもうごめんだって。


 けれど。


「言えるわけ、ねーよな…」


 自分にすべてを委ねてくる一瞬がある限り、たとえ、なくなったとしても。きっとそれはムリなはなしで。

 何度もキスした唇を小指でなぞる。


「寝てるときは、こんなに可愛いのにな」

―アイシテル、くらい言えよ


 アヤセさんまで勝手に使ってワナかけたのに。
 今回、強引にこんなトコロにオレを連れていったのは、アイツだってこのオレの計画が分かっていたからだろう?
 起きていることを承知の上で、電話をかけたんだから。

 けど。
 結局は自分がどれだけこのワガママお姫様に囚われているか再認識しただけって感じ?


「まあ、だからって。お前を手放したりはしないさ」


 自分がアルター使いではないことは、イタイくらい分かっているから。
 蒼い髪のアルター使い。
 嫌味なくらいに整った男の顔を思い出して、ちっと舌打ちをする。


「可愛いヒメを持つ従者も大変だわな」

 苦笑しながらカズマの体を自分の胸の中に強く引き寄せる。
 結局車上に一泊ということで。
 かなみちゃんには悪いけど、もう少しカズマは借りて置くから。


ふわぁっとあくびをして、君島は瞳を閉じた。









「ばっかじゃねーの?」

 くぁーくぁーといびきを掻いて眠る君島の胸の中で、カズマは小さく呟く。


―罠にかかったのは、お前だよ?


 ね、オレのことこんなコトするくらい、好きなんだ?


 『アイシテル、くらい言えよな』


 そんなこと言うわけないじゃん?
 言ったら終わり。それ以上、進んでいかないよ?

 恋愛は等号と分かっちゃったら、終わっちまうじゃん。
 ずっとずっと、オレからお前への愛より、お前からオレへのアイが大きくないとヤじゃん。
 虜にして、オレだけを見て。


 絶対に手には入らないモノを、欲しがるのが男ってものだよ。


 もっともっとオレをアイして。
 そしたら、何でもあげるよ?
 体だって、ココロだって。


 こんなことを思うのは、お前だけ。


「抱かれていいなんて思うのも、お前だけだよ?」


 抱きたいって言われたら、誰にだって許せるけれど。
 抱かれてもいいかなって思えるのは、君島だけ。

 微妙、あいまい、けれど違う。



 君島の規則正しい鼓動が、カズマの耳を打つ。
自分を幸せそうに抱きしめて眠る男の顔をじっと見つめる。



分かってないのはどっちだよ?



 むぅぅっとむかついてきて、カズマは君島の鼻をぎゅっと握った。
 脳天気に眠り続けていた君島の顔が、少しずつ苦しそうに歪んでくる。
 それでも起きる気配のない男に、カズマははぁっと溜息をついて。

 ま、いっか。
―さんざん、今日は苛めてくれたから……

「明日から、覚悟しろよな。エロ召使い!」

 ちゅっと可愛い音をたてて頬にキスして。

 ワガママお姫様は、結局大好きな従者の胸ですやすやお休みに。



 恋愛の不等号。
 結局終わりなき比べ合い。



 恋のトラップにかかったのは、結局どっち?

                                     〈END?〉
COMMENT:初スクライドSS。お初が、君カズ。しかもエッチ。その上、イマイチ話がまとまらず。
君島とカズマの関係は、アニメを見る限りどうみても、ヒメと下僕。どうよ、コレ?みたいな。
君島君がカズマにZokkonラブっていうのを描きたかったのですが。あと、征服欲を刺激するカズマ君★とかを・・ああ、もう、玉砕しまくりです。くぅぅ・・・。今回は全然エロの神様が降りてきてくれませんでした。めっちゃ、淡々としたはなしになったなあ・・・でも、一応、君島もカズ君もラブラブなんですよ☆
ちなみに、私は劉カズ好き☆だったりするんですけどね。ていうか、緑川x保志クンに・・・(オイオイ)