お水取りと若狭井


 東大寺二月堂の修二会は、別名「お水取り」としてよく知られている。これは修二会の最中
の3月12日、二月堂下にある若狭井戸から、お香水のお水を汲み取る行法があるから、それが
全体の名前となっているのだ。この井戸が若狭井戸と呼ばれるのは、次のような由来である。
 昔、実忠和尚が、修二会の行法中、神名帳読み上げといって、全国の神々の名を読み上げ
て、奈良に集まってもらう行法を行っている時、他の神々は自分の名を呼ばれると、すぐに
集まって来たのに、若狭の国の遠敷明神だけが、魚釣りに出かけていて遅刻した。遅刻をと
がめられた遠敷明神は、申しわけに、と二月堂の下の大岩を二つに割り、そこから若狭の水を
香水として湧き出させた。それが若狭井戸であ一る。
 神ならではの話ではあるが、修二会には、実忠和尚の地元若狭から香水を奈良まで持って来
させたという説もあり、現在でも、水送りの儀式がとり行われている。


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