庚申さんと身代り猿

 元興寺界隈を歩いていると、家々の軒下に三日月型のぬいぐるみが吊るされている風景によ
く出会う。これが庚申信仰の 「身代り猿」。庚申信仰というのは中国で誕生した信仰で、道教
に由来する。庚申の日に、日ごろ体の中にいる悪玉の 「三尸の虫」が、眠っている間に爪先か
ら抜け出し、天を支配する玉皇大帝(北極星)にその人の悪行をつげ口すると信じられていた。
 玉皇大帝はそれを開いてその人の寿命を縮めるといわれ、男女の交わりもこの夜ばかりは絶
対に禁じられていた。人々は庚申の夜、虫が抜け出すのを防ぐため「庚申待ち」といって三尸
の虫の嫌がるこんにゃくを北のほうを向いて無言で食べたり、みんなで集まって世間話に花を
咲かせ一晩眠らないようにする。中には歌合わせや、落語、芝居などに興じる人も多く、現在
の大衆芸能の起こりのひとつにもなっている。
「身代り猿」は、もし悪事を知られた時、自分の代わりに玉皇大帝の怒りを受けてくれるお守
りだ。


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