十三鐘と石子詰


 奈良公園にいる春日の鹿は春日大社のお使い者といわれて神聖視されているが、その昔は
『鹿を殺せば石子詰」 の刑といって、鹿を殺した者は、殺した鹿と一緒に生さ埋めにされ、そ
の上から石をたくさんのせられるという、考えただけで恐ろしい刑罰があった。
 三条通りの東の方にある菩提院大御堂の境内に、その石子詰の跡がある。
 昔、三作という子供がこのお堂の横の寺子屋で習字をしていると、春日の鹿がやって来て、
廊下にあった草子を食べた。そこで三作はこらっとばかりにけさん (文鎮) を投げると、当
たり所が悪くて鹿は死んでしまった。それで三作は大御堂の東側の庭に鹿と一緒に石子詰に処
せられたのである。この時刻が夕方の七つと六つの間だったので、菩提院大御堂は以後十三鐘
と俗称されるようになった三作の母が、永年供養の花として植えたモミジの木がこのそばにある。
『鹿にもみじ』 の取り合わせはこれに由来している。


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