音楽と景観
英語では、町並のことも、「アンサンプル(Ensemble)」と言います。
美しい町並景観は、統一感の中にそれぞれの個性が表現されています。
同じ設計で一斉に建てられたアパート群や、それぞればらばらに建てられた
団地には見られない、アンサンブルがあります。 音楽も同じ事。
一人の音楽家が楽器を持ち替えて多重録音しても決して理想のアンサンブルはできません。
個性のある演奏家が、リズム、音程を合わせながら、出るべき所では表現し、
裏に回る時にはよく聞き役に回ることで、すばらしい合奏が実現します。
西洋の都市では、都市を計画する、指揮者のような建築家(マスター・アーキテクト)が、
個々の建物の設計に専門的判断から様々な要求を行い、調整します。
これに対して、日本では、建築主事はいますが、細かく定められた建築法規に従って、
マニュアル的に建築確認事務を行っています。
歴史的には、日本の役所は、周囲の建物の水準に照らして、分相応(人並み)
という観点から判断していました。この意味では、指揮者のいない合奏に似ています。
よく聞き合って、お互いに合わせなければ、良いアンサンブルにはなりません。
しかし、遠慮ばかりしていて自信のない音を出していても、精気のない音楽になってしまいます。
本番の前に、何回も練習して、その中では少し出過ぎる位に色々な音を出した上で、
互いに調整することで、次第に音楽ができあがっていきます。
それでは、バロック音楽からアコギの創作、インドネシア民謡まで、
色々な音楽をお楽しみ下さい(小林記)。