剱岳(2999m)早月尾根
H21年8月12日〜14日
参加 8名
映画「点の記」に触発された訳ではないけれど前回剱沢から登頂した時は曇天で殆ど展望がなかったので、山岳会でこの計画が出た時はかなり悩みました。
早月尾根? 北ア三大急登? 標高差2239m? テント装備?
でもやっぱりもう一度剱の山頂に立ちたい!出来れば青空の下!ラストチャンスかも知れない!不安と期待が日々交錯していました。
でもこの誘惑に勝てず私なりに最大の気合を入れて準備万端、装備万全、それでいてザックは限りなく軽量に努めてgo!!!
救いは早月小屋で水が購入出来ることでした。(どんなに高くても買うー!!! 2L 800円でした)
(山頂付近から見た早月尾根)
13日 馬場島〜早月小屋テント場
馬場島登山口には「試練と憧れ」の大きな石碑がありました。今改めて思うととても重みのある言葉です。
馬場島キャンプ場は標高760m、キャンプ場奥から入りますが、1歩足を踏み入れて、ここから2239mを上がらねばと思うといつになく気が引き締まります。(もう引返せない〜)
登山口からいきなり急登とぬかるみでウォーミングアップなしの上りですが、しばらく行くと松尾平(1000mあたり)はベンチもある平坦地です。
ここからです!恐るべし早月尾根の本格的な上りは。
ポツポツ小雨になり傘をさしての急登は大変バランスが悪く、恨めしく空を見上げるばかりです。
木の根階段も岩も、ぬかるみも滑り、足を置くのに気を使いますが唯一安心して足を置けるのは所々にあるドンゴロスの土嚢です。滑らないし足にも優しくこれがあるとほっとします。
上から何人かが雨だから諦めて帰ります、と下って行かれます。ちょっとくじけそう〜でしたが。
何しろ約8kの登山道の殆どが上り坂、アップばかりでダウンがありません。ひたすら、ひたすら、傘をさして急登を上ります。登山道は200m毎に標高を示すプレートがあり、良い目安になり何となくそこで休憩してしまいます。
1800mあたりではかなり疲れて次のプレートになかなか着きません。2000mあたりで下ってくる方がいて小屋まであとどの位ですか?と聞くと10分ほどです、とのこと。
やった〜、あと10分の辛抱だ〜、ところがこれがエライ誤算というか彼の足はいったいどうなっている〜それとも我々の足が基準外なのか?
かなりペースダウンしているとは思うけど…、小屋の姿もカケラも見えません。結局そこからザレ岩の地獄の岩場(?)をロープを使って上り切ったところにヘリポートがありそこから少し下って小屋に着くのです。多分40分はかかったと思います。
ロープを使って最後のふんばりと頑張っていると、小屋の方が岩の上から「お疲れさん、ここは黒戸尾根(甲斐駒)よりキツイよ」と励ましだか慰めだか…。
テント設営して皆でカンパ〜イ!お疲れ〜!美味しい〜!
もう歩かなくていい〜!うれしい〜!明日は剱だぁ〜!
輪になって楽しくワイワイ言っているとまた雨がポツポツ、テントに入りますが、それからずっと降り続いてこれがまたとんでもないことになりました。
雨は明方まで降り続き、テントに水が入り、私のザックを置いた位置が運悪く低い位置だったのでデジカメが完全に水没してしまいました。とりあえず何もいじらないでそのままテントに吊るして乾かしますが、何と一晩中ランプが勝手に点いたり、消えたり、電源が勝手にonになったり、愛用のカメラが迷走して完全に壊れてしまいました。同じテントの方一晩中ランプが点滅するので大変迷惑だったと思います。ごめんなさい。
14日 テント場〜山頂〜テント場〜馬場島登山口〜奈良
朝、テントから顔を出すと、白いガスと霧雨、昨夜あんなに降ったのに〜とちょっとがっかりですが、今日はこれから岩場、鎖場の連続なので傘と言う訳には行かず雨具着用で出発します。
しばらく行くと霧雨は止みガスもどんどん流れて雲海に浮かぶ峰々が見えて来ます。そして見る見る拡がる青空!
雨具を脱ぎ捨てどんなにうれしかったか・・・思わず歓声が上ります。
雲海、アルプスの朝、一番の光が立ちはだかる岩峰から私達に届きます。
「おはよう、早くここまでいらっしゃい!」と。
立山が、大日岳が、室堂が、剣沢が、北アルプスが、後立山が、アルプスの真っ只中にいる実感、ひしひしです。
(後方 後立山連峰)
道は険しくなり、鎖、ロープの連続と浮石、落石も怖いです。
最大の難所カニのハサミは(今はハサミの一つが崩壊している)鎖と岩に打ち込まれた1本のボルトです。鎖を使いボルトに足をかければ難なく通過出来ます。
いくつも鎖があり下を見るとヒェーーと言う感じですが、基本的に高所はあまり恐くないので三点支持さへ守れば平気です。
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(岩場 鎖の連続)
厳しい岩場でもたくさんのお花に出合います。クルマユリ、トリカブト、オダマキ、シオガマ、チングルマ、こんな厳しいところで短い夏を謳歌している姿に元気をもらいます。
ありがとう!可愛い、可愛いお花たち。
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(マツムシソウ・・・トリカブト)
(トウヤクリンドウ・・・前方剱岳)
山頂手前の標識が小さく見えて来ました。もう少しだ!
下から見ると十字に見えた標識は早月尾根と別山尾根の分岐点です。岩と祠があるだけの山頂ですからガスの時、雪の時はこの標識が非常に貴重なのだそうです。それを過ぎると山頂の祠が見えます。
ヤッター!快晴の剱岳!バンザ〜イ!
(山頂の祠)
日本中の山が全部見えるぅ〜!(嘘を言ってはいけません)
山頂に立ったらもうここまでの長い道のり、疲れ、全て忘れてただただ万感胸に迫るものがあります。
時間を忘れて、アルプスの真っ只中にいる幸せにぼ〜んやり、いつまでも浸っていたいです。
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(山頂から剱沢と立山三山 後方北アルプス)
山頂は混雑です。
祠の前で順番を待って記念撮影の後は三角点にタッチ、タッチ、ツルツルになっていました。
映画「点の記」はこれを設置するためにあらゆる困難を乗り越えて未踏の剱岳に登頂する様子を克明に描いていましたね。
山頂から途中テントを撤収して馬場島までの下りは2239m、超ロングコース、その後奈良まで帰るのであまりゆっくりはしていられません。
名残惜しく、去り難く、心残して山頂を去ります。あとは長い長い下りが待っています。
岩場の下りはいろんな意味で緊張します。下り始めてしばらくしたところで上方から大きな声?叫び?が聞こえました。何かあったのかな?と耳を澄ましますがその後何の音沙汰もないので誰か落石でも起こしたのだろうとそのまま下ります。しばらくするとヘリが飛んで来ていかにも荷を上げるヘリではなく低空飛行で谷を旋回しています。
さっきの大声は事故だったんだ!どんな事故かその時は分かりませんでしたが、より慎重になったのは言うまでもありません。
(※帰ってからニュースでロッククライミングの男性2人の滑落事故があり、50m滑落して1人は亡くなられていました。)
たった1歩の不注意で滑落も当然起こりうるし、スリップしたら多分ダメだろうと思える地点はいくらでもあります。
テント撤収しての下りはまたまた霧雨、樹林に入ると下りと言えど暑いので雨具はもう着たくないし、またしぶしぶ傘を使います。岩も木の根も濡れて滑り、傘歩行は大変不安定でしたが。
テント場から山頂ピストン、馬場島まで約11時間30分、山中を徘徊し全員靴もズボンもタオルも手袋も全てドロドロです。
雑巾でもこれよりキレイだろうと言うくらいでした。
兵どもが、夢の跡・・・。
馬場島登山口の「試練と憧れ」が正にその通りだったと思えて、山頂もバンザ〜イ!下山口でもバンザ〜イ!の思いでした。
この夏は雨が多く計画倒れや不発の山行ばかりでしたが、私のこの夏一番、bigな剱岳にバンザ〜イ!!! \(*^^*)/
コースタイム
馬場島登山口 6:23→早月小屋テント場 12:48
テント場 4:50→剱山頂 8:15〜8:40→テント場 11:40〜12:30→馬場島登山口 16:30
初日雨で画像なく、以後はカメラがなくて今回の画像は参加の方にいただきました。
軟弱さま・ha-minさま・サンキューさま貴重な画像ありがとうございました。