自画像

 中学校3年の授業でよく自画像に取り組ませている。これは人生で最初の進路選択を控えた生徒たちに、「自分らしさとは何か」を絵を描くことをとおして見つめてほしいからだ。
 多感な年頃の生徒たちが、友達の目を気にしながら自分をかくなんて、照れくさいに決まっている。

 でも、多くの人は中学校を卒業したら、自画像をかく機会などあるだろうか。
 私だって、現在美術教師という仕事に就いているから、何枚か自画像を描いているが、学生時代の自画像は、やはり自発的に描いたのではなく、学校で「描かされた」ものばかりだ。

 にもかかわらず、残された自画像を見ていると、描いたときの自分が、不思議と愛おしく思える。
 小学3年のまっすぐ正面を見つめた元気な表現など、今の私には絶対描けない。中学3年のシャイでちょっとオタクっぽい感じも、我ながらよく表現できている。そして今の自分は?

 自分では意識してなかったが、自画像を見ていると、自分という人間も、やはり長い年月の中で少しずつ変化しているのだと気付く。
 そう考えると、人生の節目で自画像を描くことは、そのときの自分を見つめると同時に、自分の心の成長を記録できるという点で、記念写真以上に意義のあることのようにも思える。

 9年間の義務教育の集大成として描く自画像を、生徒達が自信をもって表現できるようにするのが、私たち図工・美術教師の責務であるはずなのだが、まだまだ力不足の自分を痛感する今日この頃である。


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