室町時代の清酒造り(菩提もと仕込み)体験 2005年1月
 
                                    
   
日本清酒の起源は、500年ほど前に開発された「菩提もと」と呼ばれる
酒母にあるとされています。
つくられたのは、奈良市東部山間にある正暦寺(しょうりゃくじ)。
  
それまでは、酒といえば、「どぶろく」。
「菩提もと」によって初めて澄み酒の誕生となりました。
「天下一の酒」として人気沸騰、
信長や秀吉、家康らにも愛飲されたと言います。

「菩提もと」は全国的に普及した優れた酒母でしたが、
大正時代に消滅したようです。

奈良県の藏元13社からなる
「奈良県菩提もとによる清酒製造研究会(山本長兵衛会長)」と、
奈良県工業技術センターが共同研究を続けた結果、
1999年(平成11年)、「菩提もと」の再現復活に成功しました。
                   
  正暦寺には酒母製造免許が交付されました。
  お寺が酒造免許をもつのは全国初ということです。

  その後毎年1月、正暦寺で「菩提もと」の仕込みを行っています。
  今年(2005年)は7回目。初めて一般にも参加を呼びかけました。

「奈良県菩提もとによる清酒製造研究会」所属の会社と銘柄は下記の通り

今西酒造(株)   三諸杉(ミムロスギ)
上田酒造(株)   嬉長(キチョウ)
葛城酒造(株)   百楽門(ヒャクラクモン)
菊司醸造(株)   菊司(キクツカサ)
(株)北岡本店   やたがらす
錦生醸造(名)   春の坂道(ハルノサカミチ)
倉本酒造(株)   つげひむろ
西田酒造(株)   両白(モロハク)
宮崎酒造(株)   白堤(ハクテイ)
(合)御芳野商店  花巴(ハナトモエ)
八木酒造(株)   升平(ショウヘイ)
安川酒造(株)   雪園(ユキソノ)
油長酒造(株)   鷹長(タカチョウ)


       ■体験第一日(1月6日)(写真はクリックすると大きくなります)
         菩提もとのそやし工程

  
         現在の清酒づくりでは蒸し米を使いますが、菩提もとづくりでは生米を用います。
            この日は、米を洗って、タンクに入れ、水に浸漬するという作業をしました。
           寺領米、境内に湧き出る岩清水での仕込みです。 

本来は茶店・売店だが、仕込み中は中央がタンク置き場、台所が分析室。前庭に大きな蒸し釜 お寺の駐車場で、洗米準備にかかる。
寺領米286s
精米歩合60%。
洗米時間は3分
洗われた米と、洗米後のたらい。
洗米中の写真がないのは、当サイト管理人も作業に加わっていたため。
水は数秒で手の感覚がなくなるほどの冷たさ。まずは右手で、次は左手、それから袋のチャックを閉めて振り洗い、を繰り返す。
なが〜い3分間だった

 

洗った米をタンクに入れ
水に浸漬
櫂棒(かいぼう)でかき混ぜる。
コツが要る作業だ
正暦寺乳酸菌を加える

           こうして、三日間、タンクの温度をを30℃に保ち、乳酸酸性の溶液(そやし水)をつくります。
           関係者の皆さんは、温度管理や成分分析で、寝ずの番だったようです。


         ■体験第二日(1月9日)
             菩提もとの酒母仕込み

             浸漬しておいた米を取り出し、蒸す。蒸した米を冷却。
             そやし水に麹を入れ、そこに、冷却した蒸し米を投入するという作業をしました。
 

浸漬しておいた米を
タンクから取り出す
タンクから取り出した米を、前庭に据えられた
大きな蒸し釜に運ぶ。
櫂棒で平らにする
ボイラーに火が入り、蒸しの始まり。酸っぱさの混じった甘い香りがただよう蒸し時間は45分 束の間、青空が広がり雲が浮かんだ。
黒いコートのカメラマンは読売新聞の記者サン。新聞に載ったのはこの時の写真カナ
蒸し上がった米は、麻布に入れ、二人で運ぶ 米を広げ、冷ます 透明感があって美しい!
冷やされた蒸米は、麹が入ったそやし水に投入された
祈祷


           米を蒸している間の45分は、「きゅうけ〜い」。プラスアルファの楽しみがありました。


「菩提もとづくり」の様子が紹介された新聞
(1月13日読売新聞)


    





       ■体験第三日(1月16日)

          菩提もともろみの経過観察
           分析室を見せていただき、もろみを味わいました。


分析室では毎日定期的に、日本酒度、アルコール度数、酸度、アミノ酸度などのデータをとって管理。
今ではお寺のご住職が担当されている。工業技術センターの方も期間中は毎日顔を出されていたようだ。
500年前の酒造りは、高い技術力があってこそのタマモノ
順調に発酵するもろみ。耳をすますと、シュワシュワという音が聞こえた。
もろみの味見。甘酸っぱい、ヨーグルトのような…
漉したお酒も利かせていただく。フルーティーで透き通った味。これはうまいッ!

        ■体験第四日(1月20日)
 
          菩提もとの配布
 
           各蔵が酒母を持ち帰る用意をしていました。
タンクの酒母は13の蔵が分配して持ち帰る
やや黄色みを帯び、落ち着いた菩提もと。
酸味が増しているように感じられた
酒母はこんな容器に入れられて各蔵へ。
1立方センチメートルほどの中に2億の酵母が生きているとか

            この酒母をもとに、各蔵で酒造りが始まります。
            同じ酒母を使いながら、蔵独自の個性をもつ菩提もと清酒。
            3月中旬の試飲会が楽しみ(*^_^*)


集合写真

    記念撮影(2005年1月20日)

     ◆体験を終えて

       不思議な、奧の深い世界を垣間見ることができました。
       日本酒の豊かな味わいは、風土、季節、先人の知恵、技術、思い…

       いろいろなものの集積なのだと実感しました。
       一献のお酒が、これからますます味わい深くなるような気がします。
       ありがとうございました。
       (17/01/22記)

     ■試飲会

       3月21日(月)試飲会が行われました。