同値関係と同値類

まず、聞いた事があるかもしれませんが次のような関係があります。
(一度は定義と名づけて書きましたが、堅いのでお約束にしました。)

お約束 01
まず、m という自然数を固定する。また a , b を整数とする。
この時、a − b が m で割り切れたら、a と b は m を法として合同と言い、
a ≡ b (mod m) と書く。


例 02
m = 5 としておく。
このとき 14 ≡ 4 (mod 5)

例 02の解説
14−4 = 10 であり、10 は 5 で割り切れるから、合同になる。


ここで、≡に関しての性質を見てみる。

性質 03
m は上のお約束同様、固定する。a , b , c を整数とする。
このとき次の三つが成立する。

  1. a ≡ a (mod m)
  2. a ≡ b (mod m) ならば b ≡ a (mod m)
  3. a ≡ b (mod m) , b ≡ c (mod m) ならば a ≡ c (mod m)

この性質は、「ふ〜ん、そうなんだ。」で終わるのではなく、
「間違っていないか?」、「ちゃんと成立するのか?」を確認しないといけません。
よって、証明をします。

性質 03の証明

  1. a ≡ a (mod m) について

    お約束に戻って考えてみる。
    すると a−a = 0 なので、これは m で割り切れる。
    よって a ≡ a (mod m)

  2. a ≡ b (mod m) ならば b ≡ a (mod m) について

    a ≡ b (mod m) をお約束に戻って日本語で言い直してみる。
    つまり「a−b が m で割り切れている」という事である。
    ここで、この条件の下、今示したい事は b ≡ a (mod m) であるので
    b−a を考え少し細工をすると、b−a = −(a−b) となり
    a−b が m で割り切れる事から、それにマイナスが付いても割り切れ、結果 b−a も割り切れる。
    これは b ≡ a (mod m) を意味する。
    よって a ≡ b (mod m) ならば b ≡ a (mod m)

  3. a ≡ b (mod m) , b ≡ c (mod m) ならば a ≡ c (mod m) について

    上の2の証明と同じように、条件をお約束に従って日本語で書くと、
    「a−b が m で割り切れている」と「b−c が m で割り切れている」である。
    ここで、この条件の下、今示したい事は a ≡ c (mod m) であるので
    a−c を考え少し細工をすると、a−c = (a−b) + (b−c) となり
    a−b と b−c は共に m で割り切れるので、結果 a−c も割り切れる。
    これは a ≡ c (mod m) を意味する。
    よって a ≡ b (mod m) , b ≡ c (mod m) ならば a ≡ c (mod m)

証明終

さて、この証明が出来た事で、“≡”という謎の記号にも意味が出てきました。
上で証明した3つの性質を持つものを数学用語(?)で同値関係と言います。
何やら難しそうな響きですが、そうでもないです。
皆さんが慣れ親しんでいるものだと、普段使っている等号“=”は同値関係です。
このように ≡ が = と同じようなものであると考える事が出来るようになったのです。


先ほど述べたように、≡ が = と同じようなものであると考える事で、次の事が出来ます。
同値関係で結ばれるもの達を一つに集めるのです。(今の場合、≡ で結ばれるもの達)
それを数学用語で同値類と言います。

例 04
お約束の記号の下、m = 7 と固定しておく。
ここで、考える数字を 1〜31 までとすると、次のような関係が出てきます。

これに関しても特に難しくは無いです。
お約束に戻って確認するのも良しですが、種を明かすと「7で割った余り」で分けられてます。
例えば一行目は 7 で割って 1 余る数字達となっています。

少し話を戻して同値類について。
上で述べたように、≡ で結ばれるものを集めると良いので実際に集めてみると…

これらの集まりが同値類です。
例えば、一行目は「1 の同値類」と言います。
別に「8 の同値類」と言っても、「15 の同値類」と言っても問題はありません。

で、そろそろ最後の話題です。この同値類に名前を付けます。
どう付けるかと言いますと、手元に2006年5月のカレンダーがある人は注目して考えてみましょう。
答えを言いますと「1 の同値類」は「月曜日」と名付けます。
「2 の同値類」は「火曜日」と、順々に「7 の同値類」は「日曜日」と名付けます。
こうする事でカレンダーはある種の分類をされているのです。
普通に 1 と 8 を見ても違う数字ですが、今までやってきた話から 1 と 8 は同じものと見れるのです。
実際に皆さんは同じ月曜日として認識しているはずです。


と、まあ長々と語りましたが、こんな所に数学が潜んでいるわけでして
少しは楽しんで頂けたでしょうか。では、このへんで。