日本のドラマ 海外へ売り込め
2007年10月23日 読売新聞
■国際ドラマフェスティバル初開催
国産テレビドラマの海外市場開拓を狙った「第1回国際ドラマフェスティバル」が12、13の両日、東京都内で開催された。国際映画祭のように各国のテレビドラマ関係者を一堂に集め、日本の番組を世界に売り込もうという試みだ。一方、複雑な権利処理や海外ニーズに沿ったドラマ制作手法など、多くの課題もあぶり出された。(森重達裕)
シンポジウムでは、中国、韓国のテレビ関係者も招かれ、ドラマの海外販売への課題が話し合われた。
フェスティバルでは、北大路欣也(後列左から2人目)をはじめ、日本や韓国などの人気ドラマに出演した俳優たちが招待された。
■複雑な権利処理など課題
総務省によると、日本の放送番組は年間2兆円を超える制作費が投入されているが、海外に番組販売されるのは約100億円程度。テレビドラマはそのうち約30億円に過ぎず、まさに「宝の持ち腐れ」状態だ。
同フェスの実行委員会は、テレビ局、制作会社、映画会社などの映像関係団体で結成。実行委員長の重村一・ニッポン放送会長は「今、衛星放送では韓国、中国のドラマが花盛り。日本はドラマ王国と言われながら、現実には輸入超過が著しい」と認める。
たとえば、韓国では国策としてドラマの海外販売に力を入れ、それを想定して放送局が著作権を一本化している。ところが日本では、放送済みのドラマを販売するためには、出演者や脚本家をはじめ、使用する音楽についても1曲単位ですべての権利者から許可を取り直す必要がある。特に海外の曲を使っている場合、交渉はさらに困難で、あるキー局幹部は「放送時に大好評だった作品でも、ほんの一瞬、海外アーティストの曲が入っていただけで、DVD化をあきらめたことがある」と打ち明ける。
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これまで、テレビ局はドラマ販売をしなくても、CM収入で十分、利益が上がっていた。しかしこの数年来、広告費の落ち込みが回復せず、各局が放送外収入にも重点を置き始めた。「まずはアジア各国の映像バイヤーが集まり、番組販売の商談ができる環境づくりを始めよう」という機運が広がり、同フェスの開催につながった。
12日の記念式典では、総務省と経済産業省の各副大臣が来賓に招かれたほか、中国、韓国、タイの人気ドラマの出演者、プロデューサーが来日。「ハゲタカ」「華麗なる一族」など日本の人気作に出演した俳優たちとともに壇上にのぼり、国際フェスティバルらしい華やかな雰囲気に包まれた。
13日には招待作品の上映会に加え、韓国や中国の放送関係者も交えたシンポジウムを開催。「『おしん』は70か国で放送され、いまだに再放送で利益を上げている」「台湾を筆頭に、香港やタイなどアジアで日本のドラマの人気が高い」という成功例のほか、「映像そのものより、リメーク権の需要が高い」「米国の地上波では、アジア人だけが出てくるドラマを売るのは難しい」という厳しい現状も報告された。
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シンポジウムに参加したフジテレビの大多亮(おおたとおる)・ドラマ制作担当局長は、海外番組販売の課題として、〈1〉著作権の処理〈2〉関係者の意欲の低さ〈3〉日本のドラマと海外ドラマの仕組みの違い――の3点を挙げた。特に〈3〉については「海外のドラマは数十回の長期間の放送が一般的。日本の連続ドラマは大河ドラマを除き、1クールの十数回で終わってしまい、販売しにくい面がある」などと指摘した。
重村委員長は「今年は第一歩。来年からはドラマコンクールも開き、商談の場も作るなど、規模を拡大する。また、著作権管理団体にも実行委員に入ってもらい、スムーズに権利処理ができるよう、お互いにメリットがある構図を作りたい」と話している。