×最奥から皆殺し×



金のガチョウの話を知っているか。

どこぞの国の木こりの３人兄弟の末っ子ハンスは、森で小人に金色のガチョウをもらう。
ハンスは誰より正直者で、件の小人も困っているところを良心で助けられたお礼にと彼にガチョウをプレゼンツした…のだが、このガチョウが恩に仇か前世の恨みつらみかと見まごうような代物で、手にくっついたら取れなくなったのだ。持とうとした、金色の鳥類が。困ったハンスは親族に通りすがりにと救助を求めるが、引き剥がそうとハンスに手を掛けた人物も次々と背後に接着。かくして１０名以上の行列がガチョウを持ったハンスの後ろに連なっていく。人間ホイホイと化したある意味人的災害ハンスの明日はどっちだ！？そしてその頃とあるお城では笑わない王妃様が…

と以降も続くのだがその部分はあまり関係がないので省略させて頂く。
まぁ早い話が「つっこんだら抜けなくなった」それだけのことなのである。
しかしこの場合の“それだけ”には、ありとあらゆるどないすんねんこれ的な絶望が含まれる。
当人達にとっては“それだけ”ではないのにこう言わざるをえない人生の悲哀、少しはご理解を頂けるだろうか。

「てめぇのザーメンはア○ンアルファなのか？アロンア○ファなんだな！？出身の星体系と地球にきた目的を言えこの人外！」
「先輩。待って下さい。確かにつっこんでいるのは俺ですが、この場合アンタの腸液がアロンアル○ァだという可能性も否定できません」
「否定するわ！なにお前その態度！むかつく！」

三井は流川を文字通り蹴たぐり倒したかったが、それは無理な相談だった。なぜなら文字通り三井と流川の下半身は交接されていたのだから。

ことの始まりはつい２時間前に遡る。
いつものように（？）不毛なラブゲームを繰り広げていた三井と流川は、ひょんなことから流川の家に寄る事となった。２人は紆余曲折を経て恋人同士と言えば恋人同士になったのだが、いまだ三井の男のプライドやらなんやらは完全に麻痺してしまったわけではない。今日もセックスに持ち込むまで流川がどれほど苦労したか、それは人形のような左右対称な美貌に刻まれた無数の引っかき傷を見てもらえれば容易に想像がつくだろう。
とりあえずたまりにたまった欲望を三井の中に失礼させてもらって、流川は満足だった。北風と太陽の童話に出てくる旅人もかくやという風情で纏う、分厚い無愛想オーラもこのときだけは拡散され、三井は他の誰も見たことがない流川の表情を見るのが一種の特技だった。資格だった。しかしそれを誰かに自慢するわけにもいかない。赤木剛憲の妹に罪悪感はあったし、何より流川の無表情以外の表情は純粋に怖かった。シュールレアリズムの世界にも引けをとらない違和感が。
いざ事が終わって、男性の象徴を流川が抜こうとしたとき、流川は珍しく秀麗な眉を潜めて結合部を見遣った。乱れた息を整えるのに忙しい三井は潤んだ目で、未だのっかかる男の仕草を追う。
「ど、どうしたんだよ…はぁっ、」
「…ぬけん」
「ぬけんって…俺締めてねーぞ。もっともそんな余力もねぇがな。ふふん」
さんざご無体を働かれた三井は多分伝わらない嫌味を告げて自嘲した。笑えないギャグをやる余裕があるならとっとと解放して欲しい。足を開いたままのだれーんと弛緩した身体で、三井はその時を待った。待った。待った。待った。待った。待っ（略）
「…おい。流川。いい加減怒るぞ」
三井のドスの効いた声に流川は素でうろたえた。いつも怒っている彼が本気で怒るといったいどんな面妖なことが起こってしまうのか。流川のキャラの都合上「ちょっとタンマ！」などと言えるはずもなく、流川は先ほども告げたことを仕方なく繰り返す。
「すんません。本当に、抜けないんすよ。にっちもさっちも」
ある意味もっとも敏感な部分は三井の肉壁に飲み込まれていたが、すでにそれが伝える感覚もなかった。数十分前には確かに絶頂を迎えるほどの快楽をそこは伝えていたのに。
シーツがぐちゃぐちゃになったベッドの上で身じろぎしながら、三井は色っぽさの余韻もなく流川にガンをつけた。そのまま両足で流川のわき腹を締め付け始める。大阪名物豊玉直伝カニバサミ！どやこれがほんまのエースキラー！…などとやっている場合でははない。
「さ、さっきまであんだけ動いといて…」
「痛い。先輩、痛い」
「オラオラ抜け。とっとと抜け」
しばらく立場を逆にした暴力的なやり取りが交わされ、それでも流川が微動だにしないのを三井は認識すると、世界新記録かと思われる程の長いため息を吐いた。
「はぁ…何やってんだよ。しょうがねぇ、俺が動くから力抜いてろよ」
こんな場合でなければ絶好の萌えシチュエーションだったはずだが、流川は身の危険を感じたのでこくこく頷くだけに留めた。三井の薄く筋肉のついた背中を引き起こすと、騎上位の体勢で三井の行動を促す。三井は流川の肩口に両手を置くと引き締まった腰を揺らした。三井の方には刺激がくるのか三井は流川に顔を伏せて唇をかみ締める。
「―――っ、」
そんな場合では本当にないのに、流川はほんわ〜とした。



「ぜぇっ、ぜぇっ…なんでだ！？」
ほんわぁとしたストロベリータイムも今となっては何もかもが懐かしい…三井が能動的な活動を始めてから十分後、事態は未だ悪化の一途を辿っていた。流川はもはや自分が犯されたかのごとくぐったりとベッドに沈み、三井は流川の胸にに手をついたままスタミナ切れを起こしている。
部屋の空気もこもるばかりで、出来たら換気を試みたいがこの合体ダンクーガ状態でどうやってベッドから離れた出窓まで移動しろと言うのか。
「おい、流川、くたばってんじゃねーよ！起きろっ」
原因の一人のくせに思うがまま睡魔に攫われそうになっていた流川の頬をひっぱたくと、三井は流川を含んだまま彼の上に胡坐をかく。
「どういうことだ…てめぇ俺の中でイった時、なんか変だと思わなかったのかよ」
「別に。収縮はした気がするけどそのときはまだ動けたし」
「くっ…こんなセクハラまがいのこと話し合いたくねぇ…」
早くも三井はくじけそうになって悔恨の涙を流したが、流川がひょうひょうとしているのが悔しくて、三井は彼に立ち向かった。
「じゃ、じゃあどうしていきなり抜けなくなってんだよ。いきなり息子が成長でもしたのか？」
「息子…？」
「っ、○○○のことだよっ！○★○！」
「ああ、じゃあそう言ってくれねぇとわかんねぇ」
貴族のような傲慢さでのたまう流川に三井は唇を噛んで唸ったが、年上の冷静さで平常を保つと再度会話の体制に入る。
「ともかくっ、なんとか原因つきとめてなんとかしねぇと、俺のあそこが大変なことに…」
「あそこ？どこっすか。新潟県ですか」
「かぁちゃんこいつセクハラです！もういやぁ〜！！」
なぜ新潟県なのかつっこむ間もあらず、三井は隠語（？）の通じない流川に辟易して頭を抱えた。これら大幅なジェスチャーを２人とも行為中の全裸でやっているのだから、傍目に滑稽なことこの上ない。落ち着くと三井は着てきたままのカッターシャツを羽織ると（ベッドサイドに脱ぎ散らしていたので、手を伸ばしたら届いた）へこたれそうになりつつ流川に向き直った。
「病院行きは確かに聞いたことはあるが、ごめん被るぞ俺は…俺の出世になんとなく立ちはだかりそうだからな…」
「先輩は俺がムコにもらうと言っているのに」
「シャラップ！そんな日本の常識を覆すような文法は聞きたくない！オラ！こうなったら２人で同時に引っこ抜くぞ！気合いれろ！」
野菜の収穫に励む農夫のような威風堂々さで叫ぶ三井だったが、その詳細はそれに申し訳ないほどはばかられるものだった。こうしてまた無駄に時は過ぎ、冒頭に至る。

「と、とりあえず電話だ。ヘルプだ。サポートセンターに電話だ」

苦痛も快楽もモロにくる三井がもちろん先に音を上げた。再び絶頂に追い詰められきった紅潮した顔で、ひぃひぃ呻きつつ受話器を取る。辛いのは流川も同じでこれだけ官能的な先輩の姿を見ても、それに反応して拡散レーザーを放つ自分の武器が故障中なのが口惜しかった。
「サポートセンターてどこですか？」
「知るか！とりあえずホットドックとかサブの編集部にでもかけとけばなんとかなるだろ！」
恐慌状態に陥っている三井は、わけのわからないことを口走りつつ、ウハウハと狂気じみた笑いと共にダイヤルを回した。流石に外部に漏れてはなんとなく人生が終わりそうだと、流川は多少無理な姿勢を三井に強いて、彼から電話を取り上げた。
「ぎゃー！なにすんだー！動くな動くな！刺さる！」
「もう、刺さってます。落ち着いて」
そう言われて落ち着ければ三井も大人なのだが、流川の口から申すのも少々効果の程は知れない。案の定三井は、流川の下で頬をあからさまに引きつらせると、何事かを不満げにぶつぶつと呟くスタイルにシフトチェンジした。
その間に流川は、三井の腰を持ち上げて押し倒したままの角度で受話器を取る。かける先は親族でも顧問でもなく自分達の関係を知る数少ない理解者の一人だった。

「もしもし、彩子先輩いますか」
「ああ〜流川くん。いつも娘がお世話になってるわね。ちょっと待っててね」
その娘と同じくらい気さくで柔らかな声が流川の耳に吸い込まれ、数秒置いて同じく朗らかな幾分聞きなれた女性の声が異様な空間のほうに伝達された。
「はぁーい。彩子です。何？流川なの？」
「うす。先輩突然ですが教えてもらえませんか」
「え、何を？」
「ツバメ返しです」
「ん？ツバメ返し？柔道の技よね？」
「いえ、４８手です。体位の。どうやるのか調べてくれませんか」
「…死ねセクハラ」
がちゃ。
「物凄い勢いで切られました」
「…あたりめぇだろ…いっぺん黄泉の国みて来るか？もちろん帰ってこなくていいぞ」
あまりにも欲望に忠実な質問をしたため、三井に首を絞められながら流川はことの経緯を思い出していた。ああこんな絶好のポジションだから忘れていたが、普段楽しめない体位よりも先に、これをどうにかして抜くのが先決だったなぁと。その方法を彩子には尋ねるはずだったのに。渦中なのに忘れる方がどうかしているが、それが流川の流川たるゆえんだった。

「痛い。先輩。すんません。痛い」
「オレは弱い人間なんだよ！あぁんっ」

涙ながらに訴える三井だったが、この状況では弱くなるのも致し方ないだろう。流川は何とかして何とかしないとと、猛ったまま思考を巡らした。
「先輩、発想の逆転です」
「逆転〜？」
「そうです。俺達はいままで交接を解く為に万策尽くしてきましたが、逆です。このまま生活することに慣れてしまえば全て問題はありません」
「…お前、バカだろ」

三井の絶対零度の眼光にさらされながらも、流川は自身の説を証明するため先輩を説き伏せにかかった。流川の一生懸命さは好ましかったが、方向が方向である。上から降ってくる流川の声を嫌でも受け止めながら三井は深く嘆息した。
「とにかく先輩。何事もチャレンジです。まずはあそこの窓を開けることを２人の最初の共同作業としましょう」
「なんだそれ！？なんかゾクッとしたぞ一瞬その台詞！」
三井の葛藤など知る由もなく、流川はよいしょとベッドの上に正座すると、同時に三井の身体も引き起こした。言い忘れていたがもちろん正常位でコトを営んでいたため、自然向かい合って抱き合っているような体制になる。
「てめぇも服着ろよ…べたべたして気持ち悪い」
「このまま立ち上がってしゃがんで服取れます？」
「…いきなり難易度Ｃだな…」
とほほと首を振って三井は、呼吸を合わせてベッドの上にまず立ち上がろうとする。
「せーので同時にだぞ。タイミングが合わなかったらえらいことになるぞ」
「切れるんすね。俺か先輩かのどちらかが」
「まぁ十中八九切れるのはお前の方で、俺はそれでもいいんだけどな」
「…」
残酷なことをさらりと言った先輩に、流川は無表情をほんの少し青ざめさせると彼に従った。せーのっで膝立ちを思い切って伸ばす。この明るい共同作業計画の甘いところは、２人ともが自分の平均よりも高い身長を全く考慮に入れていないことだった。
「あだっ！！」
「うっ！？」
勢いをつけすぎて小ぶりの頭二つは天井と併せて残酷なまでにいい音を響かせた。同時に崩れてベッドに沈み込む際にもまたひと波乱が。
「ぎえぇぇぇ！！いだいっ、痛ぇ！るかっ！その姿勢で倒れんな」
「…！？お、俺もいてぇんすが…」
「てめぇのことなんて知ったことかっ、っは、早く抜けよぉっ！」
もつれ込んで倒れたらもう阿鼻叫喚の地獄絵図である。窓を開ける作業すらも出来ないとは、やはりこの状態では生活に支障が出ることこの上無しだった。もちろん考えたらわかることなのだが。

そのとき玄関から高らかにチャイムの音が鳴り響いた。玄関は１階に位置しここは２階である。そして当然のことながら流川の親族は誰もおらず、自分達は異様な膠着状態に陥っていて、仮にも現役バスケ選手が一歩も動けないという情けない事態に陥っていた。
「居留守だ居留守！動くんじゃねーぞ」
「うす」
肩で息する三井に従順に頷いてから、訪問者が行き過ぎるのを二人は待っていたのだが、今度は驚くべきことにそれを追随する声が彼らの部屋にも届いた。まだ若い女の声だ。そして聞き覚えの確かに有る―――
「こんにちはー。流川。三井さん。いないの？入っちゃうよー」
「げっ、彩子！！」

三井が呻いて慌てて口元を抑えた名前の通り、彼女はバスケ部のマネージャーであり先ほど流川が情け容赦のない電話をかけた相手でもある彩子だった。
勝手知ったるなんとやらで、彩子は普通に鍵のかかっていないドアを開けると、見当のつく流川の部屋に容易に近づいてくる。２人の男たちが身を隠す暇もなく、簡単に彼らの部屋は探し当てられ、そのドアもまた簡単に開け放たれた。

「流川が変なこと言うから気になって来ちゃった。男くさい部屋ねぇ〜。窓、開けるよ」

彩子は薄暗い部屋に顔を顰めると、先ほど流川と三井が開けようとして清々しく失敗した窓を開放した。差し込む光にまだ昼なのだと彼らは気づき、そしてまた先刻の三井と同じくらい冷ややかな視線にもベッドの上の男たちは気づいた。

「…なにやってんの？」
「に、二人羽織だよ。な？流川」
「うす」
「いや、なんか向かい合ってるし、カッターシャツは羽織じゃないし」

彩子の冷静な指摘に三井はふっと冷笑すると、すぐに端正な顔のパーツを崩しさめざめと嘆き始めた。
「彩子〜助けてくれぇ。こいつがくっついて取れないんだぁ」
「い、いきなり難解なことをいうわね三井さん。くっついて取れないってどういうこと？トリモチプレイでも試したの？」
そんなエキセントリックなプレイがあるのかはいざ知らず、三井は律儀に否定する。
「ちげーよ！えぇと、セクハラ扱いすんなよ？流川のアレがだなぁ、俺の…に入ったまま抜けなくなったと申しますか」
「…それじゃわかんないよ三井さん」
「ぐっ、てめぇら…！」

微妙に三井の羞恥心を煽るのが巧い元富が丘中コンビに、唯一の武石中出身は殺気を覚えた。チームメイトがメロメロの美貌を無邪気な疑問で染めながら、彩子は流川の文章にするには不適切な発言で説明を受けて、ようやくコトの始終を理解したようだった。
「それは災難ね〜お二人さん。まさか入れたら取れなくなっただなんて…ブフッ」
「あー！てめぇ彩子！今笑ったろうこの人でなし！」
「三井さんはろくでなしさんだけどね〜♪で、どうするわけ？」
「助けてくださいお願いします」
三井の手のひらの返しっぷりに滑りながら、彩子は助けてって言われてもなと唸った。だってあたしがブツをどうこうするわけにもいかないしねぇ？

「だいたい今までちゃんと出来てたんでしょう？初体験で抜けなくなったならまだしも、えーと普通ならだんだん開発されてやりやすくなるんじゃないかしら？」
「自分の身体の具合を他人に語られるのも嫌だがこんなことを話す彩子も嫌だな…」
「言わないでそういうことは」
あいもかわらず流川に挿入されたままで三井はげんなりした。流川だけじゃなく自分も感覚がなくなっているような気がする。彩子が介入するならそれの方が好都合なのだが、そろそろ抜かれた後のことも三井は心配になってきた。
「いいんすよ彩子先輩。三井先輩のことは一生この部屋で面倒見るから」
「俺はよくねーんだよ！それになんだか猟奇的だし！」
「バスケ部的にも超困るわよそれは」
たまに会話に混じったかと思えば的外れなことしか言わない流川に、２人の先輩はダブルチョップを見舞った。

「ねーこんなアニマル大変でしょ？あたしがもらおーか？」
呆れた彩子の、流川を指差しながらの提案に三井は流川に乗っかったまま三つ指をついて頭を下げた。
「うっうっ不束者ですがよろしくお願いしますだーりん」
「こちらこそよろしくねハニー」
「ちょっとマテ！」
今度は流川が蒼白で叫ぶ番だった。思わず立ち上がろうとしたその拍子に、身体の中心の肉が引き連れる感覚が脳に伝播する。
「へ？」
三井がさっと頬に朱を散らせ素っ頓狂な声を上げた。彩子も思わず息を詰めたか呑んだかして目を白黒させる。２人の反応は流川と三井の交接が数時間ぶりに解けたからに他ならなかった。
内部に残ったままの流川の残滓が太ももに伝う感覚に、三井は再度悲鳴を上げると慌ててシーツを引っ被って風呂場へ消えていった。
「か、かわいそうに…」
彩子もそういわざるをえない。そんな彼女も流川のブツをモロに視界に入れてしまって、なんだか人生に負けた気分を味わっていた。流川はベッドの上にまっぱで男らしく仁王立ちしたままだ。
「でも何でいきなり抜けたのかしら。中で吸盤状態にでもなってたのかしら」
困惑してあらぬことを口走る彩子に、おもむろに流川は指を突きつけた。悪い奴では決してないのだが、とことん失礼な男である。
「彩子先輩のおかげです」
「え？あたし？」
というものの、人助けを賞賛されて悪い気のしない人間はいない。てれちゃうな〜と彩子は謙遜して頭を掻いたが、それも流川が言葉を続けるまでだった。

「そうです。俺は三井先輩が好きで仕方がねー。だからあの人を見るとどんどん膨張して止まらなくなっちまう。それがあの人の○○★の許容量を超えちまったんだろう…しかし彩子先輩が来てくれたおかげで俺の★□○も萎えてそれでやっと取れたんだ。感謝します」
「……そう、あたしで、萎えたのね…」

自分の女の部分を邪気なく否定された彩子は、三井用外付け自家発電装置に向き直って笑みを深めた。

「そうす。三井先輩いろっぺーから歯止めが…その点彩子先輩はそれを相殺してくれて頼りになるっす」
「………」

両手両足で転がせるくらい女が寄ってくるほどの美男子なのに、どうして女心の機微がわからないのだろうかこのケダモノは。
家に帰って一杯呑んで、大声で泣いた後とっとと寝ようと彩子は決意して、彼女は両手の優雅な指をばきぼきと鳴らした。ごめんね、三井さん。あんたの恋人つぶしちゃって。
「流川のばかー！！」
「！？センパイ！？」
三井に心の中で一言謝罪すると、彩子の格闘技好きの血がここぞとばかりに光って唸った。



「ふーっ、死ぬかと思った。ひでぇめにあった…」
何度も使用履歴のある流川家の風呂で思う存分さっぱりしたあと、三井はほてった身体に勝手に拝借した流川のシャツを着込むと流川たちの様子を見に階段を上る。彩子に顔を見せるのは気まずかったが、もうとっくにばれてるからいいかと、いつもどおりのポジティブ思考で三井はドアを開け放った。
「待たせたな…って、うわーっ！！マジで死んでるー！！」
三井は本日何度目かの、もはや名物となりつつある悲鳴を上げて、慌てて流川の救出に取り掛かった。





３人のファンの方につくづく申し訳ない…私もファンです。
ファンなのにこんなんです。
なんなんだコレは。勢いで書くと変なものしか作れんな（笑）