連続流三小説 〜〜流三はつらいよ〜〜
気が付いたら三井(仮)と流川(仮)は電車に乗っていた。
どうしようもなく電車に乗っていた。しかも鈍行で、2両編成。
この電車がどこに向かっているのかということも2人にはどうでもよかった。
今、お互いが隣りにいさえすれば、本当に他の何もかもが無意味だった。
バスケも、今日の阪神の勝敗も、新ドラマのビデオ予約も、三瓶は何故あんなに
売れているのかということも・・・(要素その1:逃避行)
「先輩・・・でも行き先は大事だと思う・・・俺たち無一文だしテキトーな駅
で降りないと、切符の閲覧があるとヤバイ」
学校指定のイモジャージも美しく着こなしている流川が無表情で呟く。
「わかってるさ流川・・・心配すんな。俺に任しておけ」
無駄に自信過剰な三井は薄い唇をにやりと歪め、恋人である流川を安心させるように告げた。
任しておけとは言ったものの実は1ピコグラムほどの案も無いとは悟らせないために
滅多に見せない優しい笑みで。
「でも電車を降りても俺たちは逃げないとダメなんすよね・・・先輩」
「ああ・・・降りたところでバイクでも盗むか。盗んだバイクで走り出し自由になれた気がした
15の夜作戦だ・・・」
「・・・尾崎豊を地で行くんすね・・・」
そうこうしているうちに、車掌が「切符を拝見しま〜す」と妙な調子で登場しまばらな乗客の
間を回り始めた。流川と三井の頬に嫌な汗が流れる。
流川はどうやって先輩を守ろうか・・・と思案し、三井はパンピー(車掌)にも俺の色仕掛けは通用
するのだろうか・・・と見当はずれのことを考えていた。
「お客様、切符を見せて頂けますか?」
ついに車掌・・・いや、恋人同士の2人にとっては親の仇にも等しい存在が迫ってきた。
冷静にアッパーカットを極めようとした流川(※ちっとも冷静じゃない)を右手で制し、三井はバスケ
で鍛えられた声を精一杯張り上げた。
「ぎゃー!!痴漢ーー!!!!」 (要素その2:発狂)
その声量に隣りの流川の鼻ちょうちんが弾け(寝ようとしてたんかい)乗客の視線が一斉に三井に集中する。
「な、何を言っているんですか!?き、切符を・・・」
「ふざけんな!俺のケツを撫でくり回したあげく、ベロチュー(ディープキスの意)まで
かまそうとした変態に見せる切符はねぇ!」
しごくまっとうな車掌の動揺に付け入り、持ち前の無茶な主張で濡れ衣を着せにかかる三井の姿は、
不動明王に見えたという・・・(車掌:越野正明(45)後日談)
更にホモの痴漢に仕立て上げられた車掌にとって災難だったのはそれを信じる輩が出てきたことだ。
「公務員(?)め・・・殺す・・・」
一人は言わずもがな三井信者である流川だった。
車掌は心の中でお前はずっと見てただろうが!グルめ!!とツッコんだ。
「ちょお!いたいけなボンに何してんのこのエロ車掌!!」
そしてもう一人は三井たちの2列前に座っていた中年の主婦だった。
とれたて感抜群のゴボウを勇ましく構えている。
「ご、誤解だ!!私はこの青年をさわったり撫でまわしたり舐めまわしたりなどしていない!!」
「うう・・・ひでぇ・・・車掌の権力にモノを言わせ、俺を力づくで手篭めにしようとしたくせに・・・」
「先輩カワイソウ。お前アヤマレ」
焦りのためもはや自分でも何を言っているのかわからない車掌にとどめを刺すように、三井は
ジャージの前をかき合せ涙に暮れ、流川は三井を労わるように痩せた肩に腕を回した。
脚本:三井寿、演出:流川楓。悲劇の舞台は完璧すぎた。
「ほら見てみぃ!!泣いてるやないの!!車掌の風上にもおけんわ!次の駅で降りてもらおか!?」
剛毅な主婦はゴボウで車掌を牽制し始め、その隙に三井は電車の窓を勢いよく開けた。
外気が車内に流れ込む。
「飛び降りるぞ流川!!」
そう叫んで三井はまず有無を言わせず流川を外界に突き落とし、その流川をクッションにするように
自分も飛び降りた。ローカル電車のこのスピードなら死にはしないと見越して。
声もなく流川は失神し、声もなく車掌と主婦他は電車の流れに身を任せ、そして過ぎていった。
(要素その3:自殺(未遂))
見渡す限り田園風景だった。切なくなるほど田園風景だった。
「ちっ・・・こんなとこじゃバイクも拾えねーじゃねぇか・・・」
舌打ちする三井に、テーピングだらけの流川の視線は結構冷たかった。
「だいたいなんで俺たち逃げてんだ!?ちょっと追いコンの時酔った赤木のケツに割り箸
突っ込んで、ポーズとらせて撮った写真(実行犯三井:撮影流川)を青田のヤロウに売り
つけただけなのに、あんなに活火山みたく怒ることねーじゃん。なぁ流川?」
「・・・その写真が何故か「丸秘・素人投稿!!モロ出しスペシャル」に載ってたのがマズかったん
じゃねーすか・・・」
「モザイク入りで匿名だったしんなことねーよ!ケツの穴の小せぇやつだぜ・・・」
ぼやく三井を尻目に、流川は帰りたくなって来ていた。
夜の8時ごろ急に三井がやってきて「赤木にバレたつきあえ」といわれたときには、その後の逃避行の
果てのイケナイ展開への期待に心が躍ったものだが(表情にはむろん出なかったが)、何故日付も変わった
0時過ぎ、群馬県の田園地帯にいるのか。世の中には不思議なことが多すぎて解せない。
「先輩・・・帰りましょう・・・俺、明日・・・いや今日も練習ある」
「あぁ!?お前俺の身の安全よりバスケの方が大事ていうのかよ!?」
冒頭のモノローグはなんだったのかととにかく怒る三井に焦れて、流川はテーピングをパチった際
立ち寄った地元農協に文句を並べ立てる三井を引きずって行った。
「離せよ!!なんだって言うんだ!?」
「先輩が帰る気ないみたいだから、帰りたくなるように監禁」(要素その4:監禁)
「あ?」
流川は低い声音でボソッと呟き、深夜の農協でお目当てのモノを探し出し心の中でほくそえんだ。
お目当てのもの―――男性2人くらいが収まりそうな巨大なダンボール箱を抱え三井の眼前に翳す。
「これに俺たちを、監禁・・・帰る金ねーから、コレに入って朝一で送り飛ばしてもらったら
神奈川へ帰れる・・・」
「な、なんだとっ!?」
流川は言うやいなや三井に足払いを掛けダンボールの中へ落とす。
続いて自分の長身を折り曲げ、三井の抵抗を封じながらその身をすっぽり箱の中に納めた。
「けっこう快適」
「アホか!!俺は苦しい!!こんなことしなくてもヒッチハイクでもすりゃいいだろーがボケー!!」
「ヒッチハイクで鳥取にでも飛ばされたら大変」
「それはどこ行くんですかゲームじゃねーかよ!!」
流川は三井には応えず、さらさらと湘北高校の住所を荷札に書き終えると、外面にベタっと貼り付ける。
そしてダンボールを探す途中に見つけたガムテープで箱の補強をし始めた。
「ぬ・・・内側から封印ができねー・・・」
「あたりまえだこのバカヤロウ!!何よりこんなん送り飛ばす前に気付かれるに決まってるだろうが!!」
145キロもあるダンボールをどこの農夫が運べるというのか・・・
流川もようやくそれに気付きガムテープをはる動きを止めると・・・目をギラつかせた。
「る、流川・・・?」
雰囲気を一変させた流川に、さすがに異変を感じた三井が箱の底でうめく。
「郵送に使えないなら、他のことに使うまで・・・」
「ま、待てーーー!!流川!!俺が悪かった!!帰ろう!!赤木にも謝るから!!
速攻帰ろう!!何とかして帰ろう!!」
「帰らねー・・・いや、帰さねー・・・」
三井の悲鳴も虚しく、農協の薄暗い倉庫にはガムテープを剥がす音、衣服か何かが破れる音、
くぐもった男性の声、裏庭の鶏の驚き暴れる鳴き声などがその日夜が明けるまで蔓延したという・・・
(要素その5:共倒れ)
その後―――群馬県で彼らの姿を見たものはいない・・・(あたり前だ)
(要素その6:痛い系の終わり方) 〜完〜
とある尊敬するお方に押し付けた駄文です(汗)
このSSを境に私の流三はどんどんギャグと化して行きます・・・
シチュエーションからキャラに至るまでぶっ壊れているのでご注意(汗)
シリアスな流三書きたい・・・いやむしろ読みたい・・・誰か〜・・・ 02.0524UP