リバースランド/エンド>


  この物語は最後から始まる。


  どうやら三井サンは俺のことが嫌いらしい。半端じゃなく。
  その長い指でリボルバー式の拳銃を握り締め、油断なくこちらを伺っている。
  マイッタネ。
  そして俺もこいつのことが嫌いだった。殺してやりてぇくらい。
  手の中のグリップが興奮の汗でじわりと湿った。この護身用ベレッタなら
  きっとアンタくらい余裕で撃ち抜ける。
  バイバイ。
  
  1,2,3で同時に飛び出す。腕を相手に向かって掲げるのも同時。
  銃声は2つ。館内に木霊した。
  
  けどおかしいな。ちょっとオカシイゼ。
  ついさっきまで抱き合って数え切れない程キスして俺をアンタの中に埋めて
  注ぎ込んでまた抱き合ってアンタの紅潮した顔を可愛いとか思ってたのに。
  
  ウゲ。ナンテキモチワリィユメ。
  
  ―――あぁ?
  憎む理由?そんなもんイラネー。三井は俺が嫌いで俺は三井が嫌い。OK?
  
  千切れた脳味噌で俺は世界が朱に染まるまで笑った。

  
  イカレタセカイダ。ハヤクホンモノノアンタニアイタイ―――

  
  どんなコエも届かない。ここは最前線。
  褐色の球が自由に跳ねる。四角い狭い。それは一つのコロシアム。
  三井寿をこき使うのは気持ちよくてさ。どれだけ疲れていても休ませてなんかやらない。
  馬車馬のように駆けるがいい。果てるまで戦えよ。
  走って走って、俺の為に働け。
  アライコキュウノイッペンマデアンタハオレノモノ。
  目の前の別の敵を見据えつつ、手中の球体を右サイドに放った。その質量が床を
  振動させ軽い音が聴こえた。

  入れねぇと殺す。
  わかってんよヘボポイントガード。
  
  殺伐としたこの空気を周りの誰も気付やしねぇ。だって俺らはパートナー。
  にやりと冷酷に唇を歪め俺は崩れた前髪をかきあげ相手選手の接触に倒れる
  三井になんか見向きもせずまた走り出した。最初から最後までヒヨワだこと・・・
  4Pプレイだって?そんな偶然アンタには勿体無いね。アンタの得点で勝つようじゃ
  俺はまだ2桁差で負けた方がマシだ。ダンナ、流川、花道。見惚れてんじゃねーよ。  

  電光得点版の数字が変わる。相手の王者の表情も。
  はぁバカバカしいね。
  こんな死にぞこないの活躍で救われるゲームもチームも敵サンも。

  そしてブザービーター。勝利の音に俺は彼とは視線も交わさず救世主の下級生に
  駆け寄った。神奈川でトップじゃねぇ俺達が王者に勝てたのはコイツのおかげ。


  そう神奈川が俺の故郷。ここから旅立つ為にコレに勝たねばならないのに。
  肝心な時にぶっ倒れやがってこのヤロウ。役立たずにも程がある。流川を見習えよ。
  アイツの相手は高校バスケ界屈指のトップランカーだぜ?
  何もねぇとこでぶっ倒れてナサけねぇと思わねぇ?
  射殺されそうな視線だが、ホントのことじゃん?戻ってこなくていーぜ。邪魔。
  アンタなんかいなくても切符は手に入れることが出来る。
  おとなしく見ていろよ。その綺麗なツラ歪めてさ。
  三井サンのマイナスが全て俺の糧になる。プラスのエネルギーに。

  センターサークル付近でこちらに首を傾げるツンツン頭のエースを視界の端に入れ
  俺は身を翻した。


  振り向いたそこは見慣れた体育館。そぐわぬ容貌の男達が土足で佇み
  俺達は声もなく突っ立っていた。世界は多分白い髪のキリストを中心に回っている。
  ダッテナンダソリャー。
  彼はバスケがしたいらしい。
  やればいい。好きなようにやれよ。人を傷つけたその腕でサ。
  俺の憎しみに焼かれつつ、続けられるもんならやればいい。

  この目で、人が殺せる気がしたよ。

  つまさきを汚す泥と砂と汗と血痕―――濁ったその目に焼き付けろ。
  

  
  濁ったその目を静かに見据えた。ちょうど一年前の俺。変わらず背の低い。
  バカは高いところが大好きだ。ココから飛んだらもっと高いところイケるぜ?
  とりあえず楽しいかい?こんなことして。
  天に吹き上げる風が男の長い髪を弄び彼はそれを抑え唇だけで冷淡に笑った。
  それを合図にしたように俺を囲む5,6人の屈強な男達が
  ヒビの入ったコンクリートに足を滑らす。

  中でも一番背の高いゴツイ男がアンタに話し掛けそして俺を睨んだ。
  へぇ―――堀田のオッサンがボスかと思っていたぜ。

  片眉を跳ね上げ標的を背のひょろ長いロンゲの男に絞った。
  
  アンタがボスだ。

  先手必勝で俺は殴りかかる。
  素晴らしい瞬発力。


  これが―――俺達の邂逅。
  

  
  この感覚。忘れたいくらい覚えてるぜ・・・
  狂いそうな憎悪の淵。この拳がアンタにめり込む寸前も瞬間も。

  


  風に水滴が攫われるくらい。



  俺は泣いていた。

  
  泣いていた。

  
  タトエユメノナカデモコンナノハイヤダ―――
  

  ナイテイタ?
  マイッタナ。『シナリオ』ニネェゾコレハ。
    


  ソレデハグッバイ。ワールド。


  
  ―――目が覚める。
  愛しいアンタが隣りで眠る世界に、還る。

  
  アンタが、三井サンが目覚めたら、まず最初に「愛してる」と言おうか。
  それで、全て忘れられる。 




  ???・・??(汗)なかなか謎なサイコワールドが出来てしまいました(汗)
  ちょっと変わった文章を書きたかったのですが、玉砕。
  過去に遡る話って難しいですね・・・私には無理だ・・・
  こんな痛いリョ三でごめんなさい!あれですよ!現実でラブ過ぎるから、虚構でバランス取らないと
       
 ヤベーんすよ!(情けない言い訳)02.0530UP