+距離+

                          睡貨様 -8 Jul 2002 (Mon) 11:31:38-


 暗闇に街灯の灯りがぼんやりと浮かびあがっている。
その僅かな光を受けて、噴水がキラキラと輝くさまは、この公園を訪れた恋人達の気分を
盛り上げるかのようだった。


 その風景に、およそ似つかわしくない男が二人、噴水の正面に当たるベンチに腰掛けている。
どこか気まずそうな雰囲気と、不機嫌に見える面持ち。
運悪く二人に気付いてしまったアベックは、一様に「喧嘩ならよそでやってくれよ。」
などと囁き合いながら、その場から、そそくさと離れていく。
(な〜んで、こんなことになってるんだかな・・・。)
男の一方、宮城リョータは、もう一方の男、三井寿に目をやった。

今日は部活が無かったため、バスケットリングの設置されているこの公園に、
三井と遊びに来ていた。
一汗かいた後、ベンチに座り込み自販で買ったジュースで喉を潤した。
そのまま、すぐに帰っても良かったのだが、ついつい話しが弾んでしまい、
気が付けば、あたりはすっかり暗くなっていた。
さっきまで、そこいらで遊んでいた子供達の代わりに、カップルがちらほらと現れ、
公園は昼とは全く違う顔を見せている。
いつもだったら、どちらからか「バカバカしい、とっとと帰ろう」言い出したであろう。
けれど、その言葉はどちらからも出てこない。

 ふと、視線を上げた宮城は内心で「うわ」と声を上げた。
街灯の下で、カップル激しく口付けを交わしている。
心拍数が嫌でも上がってしまう。
チラリと隣を見ると、三井と目が合った。三井はその大きな瞳を一瞬見開くと、
慌てて逸らす。
頬が紅く見えるのは、今の光景を三井も目にしたからであろうか。
(いや、そんなわけ無えよな・・・。)
三井はあの程度でオタつくほどウブではないだろう。
だったら何故。
答えには、すぐ行き付く。
その想いは、宮城の抱えるのと同じものだったから。

 自身の、そして相手の気持ちは、互いに既に気付いていた。
自分も同じ想いなのに、どちらも、あえて何も言わない。男同士だからとか、
そんな理由からの躊躇いではない。確かに、それが全く無いと言ったら嘘になる。
だが、それ以上に。
この関係が心地よくて。
互いの気持ちをハッキリ認めることで、壊したくなかった。
けれど、今のままで満足しきれなくなってるのも事実。
崩したくて崩せない距離。
(崩しちまおうかな・・・。)
ふと思いついた考えに、心が大きく揺れる。
それを、互いに望んでいるはずだ。
だから、この甘い空気の中から立ち去ろうと出来ないのだ。
自分に言い聞かせ、気持ちを奮い立たせる。
宮城はそっと、片手を三井に伸ばした。
気配を感じて、三井がこちらを向く。
心臓が煩い。
三井の目が僅かに潤んでいる。
やはり想いは同じなのだと再確認して、少しの安堵感。
「三井さん・・・。」


 「やっだ〜〜〜〜!!マジで!??」
「マジマジ!本当だって!」
けたたましい声に、慌てて宮城は手を引っ込め、三井は顔を背けた。
いかにも、今時の高校生といった風のカップルが通り過ぎていく。
「もう、調子のいいことばっか言って〜!」
「本当だよ!信じてくれよな〜!」
彼らの声がしだいに遠のき、静寂が訪れる。
「帰るか・・・。」
しばらくの気まずい沈黙の後、三井がポツリと言って立ち上がった。
「ええ。」
宮城も後に続く。少しの距離を持って、三井の横に並ぶ。
(また明日はいつもの俺らなんだろうな・・・。)
 一世一大の決心が不発に終わり、失望と同時に安心している自分がいる。
三井の方でも落胆してるような、ホッとしているような顔をしている。

自分らは、この距離を壊したいのか、壊したくないのか。

答えは、未だ出ない。

Fin





睡貨様コメント(BBSSより)
SS・OKというお言葉に甘え、昨日頂いたカキコのレスに浮かれ(馬鹿)
ついつい書いてしまいました〜。
初リョ三です。・・・・いざ書いてみたらダラダラしただけのよく分からない話に
なってしまいました。ぎゃっふん!
友達以上恋人未満って、ドキドキvなどと考えて書いたのですが。撃沈・・・。
嫌がらせだと思われても仕方ないかもしれませんね・・・。ふふふ(笑い事か!)
文章のおかしいとことかあるのでしょうね〜(遠い目←死)


藤原さんの勝手にコメント
くそッ…なんで三井受作家サンは皆さん文章がこんなに達者なんだ!?(汗)
私のイモ!私の大根!でもやっぱりそれがいい・・・vv
こんな感情描写の明確な、それゆえに素敵にもどかしい小説を書き込んで下さって
ありがとうございました。あのBBSのログ保存が何件までなのか不明なので(汗)
こちらに勝手に移動させていただいた事をどうかお許しください。
なんてったって周りのカップりゃーずに触発されちゃう2人が可愛い!!
互いの気持ちに気づいていながらも前に進めない、そんな言い表せない感情の
機微を書くのが巧いです睡貨様。それにもう惹かれまくって私はリョ三でよかったと
つくづく・・・(以下略)実は私以外で睡貨様が初めて小説を書き込んで下さったのですよね。
そのときの喜びが睡貨様にわかるかー!?(何故にけんか腰)いやもうリョ三SSは
Rゲインより効きます。特効薬です。私もこのウブな2人の恋の特効薬になりた〜い(バカ)
本当に有難うございました。これからもよろしくなのですvv


INDEX TREASURE