Quartet Contrivance











「・・・愛羅・・・」
次の日・・・
「昨日は、ごめんね」
昼食を済ませるとすぐに、奏美は、私の部屋にやってきて、頭を下げた。
「奏美・・・・」
結局、あのあと、奏美が泣いてるところへ、タイミングよく、他のネイビー
メンバーがやってきたのよね・・・。
で、私があわててると、いきなり奏美が、
“次のドラマの練習に、つきあってもらってただけなんだ!”
なんて、ぴたっと泣きやんで言うから・・・。
あやふやになったまま、終わっちゃったんだっけ・・・。
どこまでが演技で、どこまでが本気かわからない・・・そう思う時だって、ある。
でも、昨日、泣いてたことは、演技じゃないって・・・それはわかるんだ。
「ほんとに、ごめんなさい・・・」
「奏美、頭上げて」
私が言うと、奏美は、ゆっくり頭を上げた。
「私、勝手だからさ、1年前と、なにも変わってないよね・・・」
「奏美・・・」
「ほ〜んと、ばかみたい・・・」
私には、その意味がわからなかった・・・。
なに言ってるんだろ、奏美は・・・。
「あんたたち、みんなを裏切ったのにね。今さら、なに言ったって・・・」
「昔みたいに、戻りたくないの!?」
「え!?」
思わず、口をついて、出てしまった言葉。
「・・・確かに、奏美は、私たちを裏切ったかもしれない・・・でもね、柊くんも、
私も、そうは思ってないよ。誰だって、自分のやりたいこと、精一杯やれば
それでいいんだもん!だから・・・」
「時間は、戻せないんだよ?」
私の言葉をさえぎり、奏美は、続けた。
「私、じゅうぶん、わがまま通させてもらった。拳一くんが怒るの、わかってて
裏切った。・・・最低の人間よ。柊ちゃんや愛羅が、私のこと、いろいろ
心配してくれたの、うれしかったけど・・・私たち、もう、どーにもなんない。
あきらめるしかないよ」
「奏美・・・」
「昨日、一晩考えて決めたの・・・。私、もう拳一くんにも、柊ちゃんにも会わない。
・・・そんな資格ないし・・・第一、昔の状態に『戻る』なんて無理だもん。
・・・今までのことは、全部忘れて、また・・・新しいこと見つけるよ!!」
にこっと、奏美はほほえみ、決意と見えるセリフを、私に言った。
それが、本音なのか、そうでないのか・・・ほんとの願いはなんなのか、
私には、わかるようで・・・でも、実際、わかるわけがなかった。
私と奏美の願いは、似てるようで、実は、実際違うのかもしれないから・・・。
その時の私が、確信的に感じたのは・・・奏美のその時の笑顔は、
『笑顔』ではなく、昨日のような『泣き顔』に見えたこと・・・これだけだった・・・。
「ねぇ、そんなことより、泳ぎに行かない?あとで、みんなで、スイカ割りとか
やるらしいよ!!早く行ってみよ!」
「・・・うん・・・」
「じゃあ、私、先に着がえてくるね!」
くるっ
無理した感じの笑顔で、私に言うと、奏美は向きを変えて、部屋に戻ろうと
歩きかけた。
「待って!奏美」
ピタッ
「忘れちゃう前に、最後に1回・・・・拳一くんに、会いに来なよ・・・」
もしかしたら、拳一くんは・・・
「・・・気が・・・向いたらね・・・」
パタパタパタパタ・・・・
振り向きもせずに、一言だけ言って、早足で立ち去ってしまった・・・。
「奏美・・・・」


「・・・で、なに?あいつ、自分で、そんなこと言ったわけ?」
「うん・・・そうなの・・・」
アメリカから帰ってきた私は、さっそく柊くんの家におじゃまし、すべて話した。
「ねぇ、どーすればいいと思う?」
あれから奏美に、拳一くんや柊くん、そして、あの事件についての話題を出す
ことはなかった。
あれ以上出すのは、私自身気がひけたし、なにより、奏美のつらそうな表情を
見るのが嫌だったから・・・。
あまりにも、かわいそうで、私は・・・。
「オレたちに会いに来ねーってのは、ともかく・・・忘れちまうってのは、
納得できねぇ。だいたい・・・無理だろ、んなの」
「だよねー・・・」
柊くんも私も、腕を組んで、黙りこんでしまった。
「・・・その“忘れる”ってのも、日常で使う意味じゃねーよな?」
「うん、たぶん・・・『想い出』として、取っておくって意味でもなさそう」
「最初の出会いから、なかったことにするってことか・・・」
ビクッ
身体が、硬直した・・・それは、決して、否定できる意味ではない。
私も・・・うすうす、そう感じていたから・・・。
「そんな、さみしいことって・・・ないよ・・・」
「わかってる・・・オレだって、納得できねーよ」
「“昔に戻る”って・・・そんなこと、できるのかなぁ・・・」
私にとっては、それが1番の心配であり、疑問だった。
「いや、無理・・・だろ?それは、奏美の言うことの方が合ってると思うぜ」
「そっか・・・」
再び、無言がおとずれる・・・。
数秒後、柊くんが、落ち着いた口調で言った。
「戻らなくても・・・」
「え?」
「戻らなくても、今の奏美・・・すっげー、輝いてると思うんだけどなー。
1年前とは、別の意味でさ・・・」
「別の意味?」
「ああ、自分の夢がかなったわけで、それを実行してるわけじゃん?
やりたいことを、精一杯やってる・・・オレには、それが、うらやましい
くらい輝いて見えるけど」
・・・なるほど、そうだよね。
「それって、いいこと・・・になるよね?」
「まぁな、オレはそう思うけど・・・拳一には、そう思えねーんだろうな」
なんでなんだろ・・・奏美がタレントになったからって、奏美そのものが
変わるわけじゃないのに・・・。
私には、拳一くんの気持ちは、理解できなかった。
「奏美は、拳一に謝る必要もねーけど、謝らない必要もねーな」
は?
「・・・どーゆー意味?」
「・・・・・・・」
「ねぇ、どーゆー意味?」
「・・・わかんねぇ」
ズデッ
・・・なんなのよ・・・それ・・・。
「よけいに、惑わすようなこと言わないでよね・・・」
「いや、なんかさ、直感的にそう思ったんだよ。オレ自身、言葉にしにくい
んだけどさ・・・なんか、そう思った」
「よく、わかんない・・・」
「オレも・・・」
ず〜〜〜ん、と、2人して、落ちこんでしまう。
今までのことも含めて、さらに暗い気分になっただけのような気がした。
「・・・けど」
一息おいてから、柊くんは続けた。
「拳一は、1度、奏美に会った方がいいんじゃねーかな?そしたら、なんか、
変わるかもしれねーし・・・どうなるかわからないってのが、現状だけど」
「結局、柊くん、どっちの味方なの?」
昔から知ってる幼なじみとはいえ、なんか、わかんなくなってきちゃった、
柊くんの性格・・・。
「オレ?オレは、どっちの味方でもねーよ。拳一も奏美も、今、自分を
見失っちまってるんだ。特に、拳一の方は、奏美がいなくなって、思いっきり
性格変わっちまってるし・・・。オレはさ、“昔に戻る”っていうのは、絶対
無理だと思ってる」
「それじゃ、結局、意味ないことになるんじゃ・・・」
「いや、“昔に戻る”んじゃなくてさ、“昔みたいに戻る”っていうことなら、
できるんじゃないかなって・・・そう、思うんだ」
“昔みたいに”・・・か。
そっと、目をつぶって、考えてみる・・・。


昔みたいに・・・。
ふっと、私の頭の中に、幼い日の想い出がよみがえった。
昔は、楽しかったな・・・くだらないことで、笑ったり、怒ったり、
泣いたりして・・・毎日が、そんなだった。
怒っても、次の日には、すぐ仲直りして、また遊んで・・・。
4人で、いっつも、一緒にいたよね・・・。

「楽しかったよね・・・」
「ああ・・・」
「『想い出』として、終わらせたくないよ・・・私」
そんなの、絶対、嫌だ・・・。
「オレだって、同じだよ・・・だからこそ・・・だよな」
「え?」
ポンッ
「だからこそ、オレたちが、なんとかしなきゃ。これから、どうなるかも
わかんねーし、拳一と奏美が仲直りできるかも、わかんねーけど。
オレたちが、やれるだけのことをさ」
柊くんは、私の頭に手を乗せて、笑った。
「・・・人間、すること、ひとつひとつに意味があるんだよ」
「神様が与えた『試練』みたいなものかなぁ?」
「ん?そうだな・・・そうかもしれねーな」
そっか・・・
「だとしたら、かなりひどい『試練』に思えるんだけど・・・」
「でも、オレは思うぜ。“神様は、乗り越えられない壁はつくらない”ってな」
相変わらずの笑顔で、柊くんは、ほほえんだ。
この問題で、私と同じように、つらい立場に立ってて・・・でも、柊くんは、
すごく、プラスに考えようとしている・・・。
“神様は、乗り越えられない壁はつくらない”・・・その言葉で、すごく、安心できた。

・・・そうだよね、こんなふうになっちゃった以上、どーにかしなきゃ!
過去からは、考えられないほど、壊れてしまった・・・4人の関係・・・。
柊くんの言うとおり、私たちが、やれるだけのことをやればいいよね・・・。
自分を、見つめなおすために・・・
おたがいを、見つめなおすために・・・
そして・・・友達2人の・・・大切な『もの』を取り戻すために・・・。


(Quartet Contrivance あとがき)

こんにちはぁ〜!(ぱずりんぐわーど)再びです!
「Quartet Contrivance」読んでいただき、ありがとうございました。
もとの「Quartet Contrivance」 は、「Broken Myself」
の数ヶ月後に、書きました。
そこから、HP用に手直しすること、約1ヶ月・・・。
そして、今回、また管理人 汨羅の協力を得て、HPに載せることができたわけです。

今回、前作、「Broken Myself」の、番外編ということで
・・・この作品を載せることになったわけでございます。
が!大変でした。やっぱし、前と同じように、読みやすくするための
リメイクがねぇ・・・苦労しましたよ。
今回、舞台的には、8月なんですね・・・この作品の2ヶ月後、「Broken
Myself」の舞台が登場するわけです。
今回のと両方合わせて、どーゆーことが起こり、どうなってるのか、ご理解
いただけたんじゃないでしょうか?

とにかく、柊平と愛羅は、苦労してるんですよ。
4人の壊れた関係を、必死で支えてるんですね。
でも、私からすると、実際、柊平と愛羅も、自分を見失ってるような気が
してならない・・・わかるんですけどねぇ・・・しんどいのは・・・。
友情関係は、難しいですよ、ほんとに。
友達は、つくろうと思って、でも、簡単にできるものじゃないです。
私は、そう思ってる・・・というか、思わずには、いられないんです。
実感する、毎日なんですから・・・。

拳一と奏美、柊平と愛羅・・・今回は、愛羅が主人公です。
拳一が、前作でいろいろ思ってた裏側には、こーゆー愛羅たちの気持ちが
あったわけですね。でも、それを拳一は知らない。
だから、気持ちのずれが生じてくるのかなぁ・・・・。
お互い、はっきりした気持ちを言わなかったんですよね。
そのため、柊平と愛羅が、どれだけ2人のフォローにまわっても、意味がない。
本人たちが、自分を見失ってたら、まわりがなにを言っても意味がないんですよ。
これも、私自身、経験したことです。
確か、このストーリーを書いた直後・・・2年くらい前に経験しました。
話すと長くなるので、あえて書きませんが・・・大変だったのは、ほんとです。
実際、そのため、この4人の関係は、壊れてしまったんですから。
今さら、元に戻るとは、思いません。断言して、無理です。
でも、「Broken Myself」のあと、拳一は、成長しましたよね?
誰でも、あせって、自分を見失ってるときは、自分の意見ばっかり通そうと
してしまう・・・拳一も、その状態だったんですよ。
この作品は、見事、読者の意見が分かれてしまう作品です。
拳一同意者になるか、奏美同意者になるか・・・みなさんは、どっちの意見ですか?
前作を読んだ、ある友達からは、「誰も悪くない」とのアドバイスをいただきました。
でも、やっぱり、言葉には、しにくかったようです・・・。
だって、それは、4人が得た物は・・・言葉では表せないけど、それぞれは
理解している・・・そんな物だから・・・。カタチではないのです。
いろいろ、考える作品・・・そう思って、我ながら、何度も読み返したりしてます。

さてさて・・・次載せる予定の予告!
わからない・・・んですよね・・・次、何を載せるのか・・・。
すでに、書き終えて、載せることができるようなもの、探してるんですが・・・
見つからないのです!わけわからないの多いし、かなり長いし・・・。
今回の以上、長編になっても、みなさんに、許していただけるのでしょうか・・・。
「Broken Myself」でも「長い〜!!」って言われたのに。
許してもらえなくても、載せることになると思いますが・・・。
「こーゆーの書いてほしい〜」とかあれば、どんどん意見下さい。
ぜひぜひ、参考にさせていただきます!
書けるかどうかは、別ということで、ご了承いただきたいのですが・・・。
次の、新しい「読物」載せるのは、かなり時間がかかると思いますが、みなさま、
末永くお待ち下さい。っていっても、「読物」、読まれる方少ないとは思いますが。
こんなへぼい作品でよければ、どんどん載せていきたいと思います。
小説が載せれなければ、自分で作った詩など、そーゆーのを代わりとして
載せようかなぁ?

毎度のごとく、管理人の汨羅さま、ご迷惑おかけいたしました。
それから、ここまで読んでいただいた、みなさま、本当にありがとうございました。

(2002年3月20日 ぱずりんぐわーど)











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